米音楽史Billboardが主催する授賞式ビルボード・ウーマン・イン・ミュージック2016が12月9日に開催され、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー賞」に輝いたシンガーのマドンナが、女性が直面している不平等な現実についてロングスピーチで力説。 

 フロントロウ編集部ではマドンナのメッセージを和訳でお伝えすると共に、「ダブルスタンダード(二重基準)」という問題にスポットライトを当てる。 

Billboard's Women in Music 2016 Woman of the Year Award Madonna マドンナ ビルボード誌ウーマン・オブ・ザ・イヤー賞

ダブルスタンダードとは

 ダブルスタンダード(二重基準)とは、同じ問題に2つの矛盾する基準をもうけて使い分けること。 

男女平等 Gender Equality ダブルスタンダード Double Standard

 例えば、男の子がやんちゃをするのは「男の子だから」と許すのに女の子の場合は「行儀が悪い」と叱る、押しの強い場合に男性ならば「自信がある」と評価するのに女性だと「気が強い」とネガティヴにとらえるなど、対象によって対応を変えることを指す。 

 ダブルスタンダードは男性→男性/女性→女性に使われることも多く、フェミニズム運動では女性が直面する不平等な扱いの原因のひとつとして問題視されている。

マドンナがスピーチでダブルスタンダードに言及

 35年以上のキャリアを持つマドンナがBillboard誌のウーマン・オブ・ザ・イヤー賞に選ばれた際のスピーチは、そんなダブルスタンダードに言及したものだった。

Billboard's Women in Music 2016 Woman of the Year Award Madonna マドンナ ビルボード誌ウーマン・オブ・ザ・イヤー賞

この日はグッチのカスタムスーツを着て登場

 マドンナは音楽界でのダブルスタンダートについてこう触れた。 

女性が科せられているルールについて

 (この業界に)こうしなきゃいけないというルールはないわよ。あなたが男の子ならね。女の子ならルールに従った闘い方をしなくちゃいけない。そのルールとは何だと思う?

 美しく、かわいく、セクシーでいるのは許される。でも頭が良すぎるのはダメ。線からはみ出るような意見を主張するのはダメ。尻軽のような恰好をして男性が楽しむ「物」になってもいいけどその尻軽さを自分で楽しむのは許されない。そして絶対に、絶対に、自分の性的な妄想を世間に明かしてはダメ。男性に求められる女性になりなさい。男性のそばにいても他の女性の脅威にならない女性になりなさい。そして最後に、年をとっちゃダメ。なぜなら年をとることは罪だから。批判され中傷され間違いなくラジオで曲をかけてもらえないでしょう。

 

業界のダブルスタンダードに気付いたきっかけ

 アルバム『エロティカ』とヌード写真集『セックス』をリリースしたの。すべての新聞や雑誌の見出しに自分の名前が登場し、読むもの全てがネガティヴだったわ。あばずれや魔女と呼ばれたの。私を悪魔と比較する見出しもあったわね。

 私は思ったわ、「でもプリンスはフィッシュネットとハイヒールとリップを身に着けてお尻を出してるじゃない?」って。彼は確かにそうしていたわ。でもね、彼は男性だったの。その時初めて気づいたの、女性には男性と同じ自由はないということが。

 

女性が女性に対しておこなうダブルスタンダードについて

 私は自分を応援してくれる女性の仲間を求めていたわ。でも、かの有名な女性ライターであるカミール・パーリアは、私が自分自身を性的に表現することは女性の権利の進化を妨害しているって言ったわ。

 私は思った。「フェミニストなら性的な要素はないっていうわけ?そんなのクソくらえ。だったら私は違うタイプのフェミニストになってやるわ。悪いフェミニストになってやる」ってね。

 

マドンナから世界中の女性へメッセージ

 女性はあまりにも長く不公平な扱いを受けてきたから、男性の言うことを信じちゃうのよ。何かを成し遂げるためには、自分は男性を支えなきゃいけないと思っているの。確かに支えがいのある男性はいるわ。でもそれは彼が男性だからじゃなくて支える価値がある人間だから。

 女性は自分やほかの女性の価値を称えなくてはいけないわ。強い女性と友達になって、彼女たちの仲間になり、彼女たちから学び、協力し、触発し合い、支え合い、悟るのよ!

 マドンナのスピーチは会場で拍手喝采を受け、ツイッター上では一時は不仲だったシンガーのレディー・ガガが、「ビルボード・ミュージック・アワードでのあなたのスピーチは素晴らしかったわ。あなたは本当に勇敢でたくましい。私たち女性が必要とするそういう女性でいてくれてありがとう」とメッセージを送った。

 

他のセレブもダブル・スタンダードに苦言

 これまでもシンガーのテイラー・スウィフトやアリアナ・グランデなど、多くのセレブがダブル・スタンダードの問題に触れている。他セレブの発言は過去のこちらの記事から確認できる。

 

 ダブル・スタンダードは音楽界だけでなく映画界やビジネス界、政治界など多くの場面で見られており、実際、一歩下がって考えてみるとほぼすべての人がダブル・スタンダード的な考え方を少なからず1度は持ったことがあるのではないだろうか?

 ダブル・スタンダードをなくすためには、まずはそれぞれが認識を確かめて、周囲でダブル・スタンダードが起きている時はきちんと声を大にして指摘するという、ひとりひとりのアクションが必要だ。

 

Text & Photo: フロントロウ編集部(FRONTROW)/ Sonia Kim、スプラッシュ/アフロ、シンクストック/ゲッティイメージズ

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