全米ツアーの初日から、これほどまでに明確な意思を示すステージがあっただろうか。ブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンドによる「ランド・オブ・ホープ・アンド・ドリームズ」アメリカ・ツアーは、3月31日のミネアポリス公演をもって幕を開け、その冒頭2曲のライヴ映像が全世界に向けて公開された。生中継されたこの映像は現在もアーカイブで視聴可能となっており、ツアー全体の思想と緊張感を凝縮した内容となっている。
開演直前、スプリングスティーンは静かな祈りとともに、いまのアメリカが直面する危機を真正面から言葉にした。海外で任務に就く兵士たちへの思いから始まり、民主主義、憲法、そして“アメリカの約束”が危機にさらされているという強い問題提起へと踏み込む。その語り口は扇動的ではなく、しかし妥協もない。音楽とロックンロールが果たすべき役割を、彼はこの夜、はっきりと定義してみせた。
そのメッセージを受け止めるように鳴らされたオープニングは、エドウィン・スターの反戦歌「WAR」。2003年以来23年ぶりの演奏となるこの楽曲でツアーの幕を開けたこと自体が、現在の世界情勢への明確な意思表示である。続く「Born in the USA」は、祝祭的なイメージとは裏腹に、国家に裏切られた帰還兵の苦悩を描いた楽曲だ。誤解され続けてきたこの曲を2曲目に据えた構成は、意図的であり、挑戦的でもあった。
セットリストには、金融危機、人種問題、都市の荒廃、9.11後の喪失と再生といったテーマが並ぶ。その中心に据えられたのが、新曲「Streets of Minneapolis」だ。ミネアポリスで起きた実際の事件を背景にしたこの楽曲は、Eストリート・バンドとの演奏としては世界初披露となり、会場には張り詰めた空気と深い共感が広がった。
このツアーは、単なる回顧でも娯楽でもない。ICEの重点監視都市をあえて巡り、最終地をワシントンD.C.に設定した行程そのものが、強い象徴性を帯びている。スプリングスティーンは沈黙しない。希望と抵抗を同時に掲げながら、ロックンロールによって“いまのアメリカ”を問い続ける旅が、ここから始まった。
Bruce Springsteen&The E Street Band Live From Minneapolis
Bruce Springsteen &The E Street Band「Land of Hope and Dreams American Tour」
初日2026年3月31日ミネアポリス公演セットリスト
at Target Center, Minneapolis, MN, USA
1 War(Edwin Starr cover) (with Tom Morello)
2 Born in the U.S.A.(with Tom Morello)
3 Death to My Hometown (with Tom Morello)
4 No Surrender
5 Darkness on the Edge of Town
6 Streets of Minneapolis(first time with The E Street Band)
7 The Promised Land
8 Out in the Street
9 Hungry Heart
10 Youngstown
11 Murder Incorporated
12 American Skin (41 Shots)(with Tom Morello)
13 Long Walk Home(with Tom Morello)
14 House of a Thousand Guitars(solo acoustic)
15 My City of Ruins
16 Because the Night(Patti Smith Group cover)
17 Wrecking Ball
18 The Rising
19 The Ghost of Tom Joad(with Tom Morello)
20 Badlands(with Tom Morello)
21 Land of Hope and Dreams(with Tom Morello)
Encore:
22 Born to Run
23 Bobby Jean
24 Dancing in the Dark
25 Tenth Avenue Freeze-Out(with Tom Morello)
26 Purple Rain(Prince cover) (with Tom Morello)
27 Chimes of Freedom(Bob Dylan cover) (with Tom Morello)
終演後BGM:This Land Is Your Land(Woody Guthrie song)
<ツアー・スケジュール>















