Photos: シンクストック/ゲッティイメージズ
日本でもよく聞く言葉となった「ネット私刑」。海外でのケースを取り上げる。

ネット私刑=Internet Lynching

 英語圏では、「Internet Lynching(インターネット・リンチ)」や「Virtual Mobbing(バーチャル・モブ)」と呼ばれている「ネット死刑」。

 事件・騒動が起きた時に、加害者やその関係者に対して私的に罰を与えようとするこの行為は欧米でも起きており、そのなかで、無関係の人や企業が被害を受けるケースが頻発している。

画像: ネット私刑=Internet Lynching

ツイート1本が殺人予告に発展

 2017年には、インスタグラムだけで750万人以上のフォロワーを誇るアメリカの女性インフルエンサーのツイートが、ネット私刑騒動へと発展。

 クラブで数人の男女に顔が腫れるほどの暴力をふるわれた女性インフルエンサーが、ツイッター上で犯人の情報提供を求めたところ、フォロワーの間で犯人捜しが始り、"犯人かも"とされる人たちの名前やSNSアカウント名がコメント欄に次々と書き込まれていった。

 なかには無関係の人の名前やアカウント名も多く、妹が犯人とされる人物と同姓同名だという女性は、「誤った情報を信じている人たちが妹に殺害予告を送っている。妹は事件現場から950キロも離れた場所に住んでいるのに!」と、悲痛の訴えをしていた。

 さらに事件とは関わりがない別の女性は、自分や愛犬に対する殺害予告、自分へのレイプ予告、容姿に対する誹謗中傷などを受けた結果、「私は世界一可愛くもないし、スリムでもない。"鼻が不細工"で"くちびるが薄すぎる"かもしれない」と、精神的なハラスメントを受けた様子が分かる書き込みをしていた。

画像: 情報提供を呼び掛ける投稿には4,000件以上のコメントが集まった。©Twitter

情報提供を呼び掛ける投稿には4,000件以上のコメントが集まった。©Twitter

情報を訂正しても…

 ネット私刑が起きた時には、間違った情報を正すのが非常に難しい。

 例にあげた女性インフルエンサーの件でも、真犯人の正体が分かったことを本人が発表した後も、無関係な人たちへのハラスメントはやまなかった。

 コメント欄に「みんな、この子を叩くのをやめてあげて。もうすでに(女性インフルエンサーが)この子じゃないって認めてるんだから!」と書き込むファンもいたが、すぐに他者のコメントの中に埋もれてしまった。

 なかには、真犯人の正体に興味を示さない書き込みも見られ、時間が経つにつれて、書き込みの目的が「犯人を探すこと」から「特定の人を集団でたたく荒らし行為」へとすり替わっている様子が見受けられた。

イギリスでは1日に5人が有罪判決

 こういったネット上での荒らしや私刑行為に、厳しい措置を取っているのがイギリス。

画像: イギリスでは1日に5人が有罪判決

 2014年だけでも、相手に苦痛を与えるために不快・脅迫的なメッセージを送ることを禁ずる法律のもと70人の未成年を含む1,501人が起訴されており、そのうち155人に平均2.2ヵ月の実刑判決が下されている。

 2014年には英法務省が、同法の禁固刑を最大6ヵ月から2年へと変える計画を発表。2016年には、個人情報のさらし行為やハラスメントをあおる行為への厳罰化も発表された。

 取り締まりを指揮している英公訴局のアリソン・サンダース長官は、英BBC Radio 4に対し、「オンラインで他人をひどく侮辱した場合や、イジメやハラスメントを行った場合は、オフラインでそれを行った時と同じように起訴されます」と説明。

 現実世界でしてはいけないことは、ネット世界でもしてはいけない。ネットハラスメント対策先進国のイギリスでは、そんなモラルづくりがハイスピードで進んでいる。

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