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マイリー・サイラスがグラミー初受賞後に発表した『Something Beautiful』のデラックス版がサプライズ・リリース!“進化”が止まらない最新アルバムを徹底解説!

FRONTROW Editorial Dept.
BY FRONTROW Editorial Dept.
マイリー・サイラスがグラミー初受賞後に発表した『Something Beautiful』のデラックス版がサプライズ・リリース!“進化”が止まらない最新アルバムを徹底解説!

これまでジャンルを縦横無尽に駆け抜けてきた世界的ポップ・アイコン、マイリー・サイラス。芸術的な進化を遂げ、アーティストとしてさらにステージを上げたマイリーの最新アルバム『Something Beautiful|サムシング・ビューティフル』に、2曲が新たに追加されたデラックス版がリリースされた。オリジナル版に収録された楽曲の内インタールードを除く11曲と、今回新たに追加された2曲の計13曲の魅力を徹底解説。(フロントロウ編集部)

これまでのマイリーの“進化”

Photo: Glen Luchford

 ディズニー・チャンネル放送のTVドラマ『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』で、主演を務めたマイリーは瞬く間にティーンの憧れの存在となり、世界的なブレイクを果たした。4作目のアルバム『バンガーズ』では清純派アイドルの殻を破り、大胆で挑発的なスタイルへとシフトし世界中を驚かせたが、ポップ・アイコンとして新たなポジションを確立することとなった。

 キャリアの新たな頂点に立ったのが、2023年の大ヒット曲「Flowers」。離婚という自身の経験をもとに自立や内面の強さを歌ったこの曲で、第66回グラミー賞「最優秀ポップ・ソロ・パフォーマンス賞」と「年間最優秀レコード賞」の2部門を受賞。

 数々の試練を乗り越え、常に進化し続けてきたマイリー。そんな彼女が今年5月にリリースしたのが、芸術的進化を遂げ今まで以上に挑戦的な新アルバム『Something Beautiful|サムシング・ビューティフル』。9月19日には、オリジナルアルバムに2曲が新たに追加されたデラックス版がリリースされた。

音楽×映像×ファッションが織りなす『Something Beautiful|サムシング・ビューティフル』を深掘り!

Photo: Jonnie Chambers

 ビヨンセやブリタニー・ハワードを手がけたショーン・エヴェレットとマイリー自身がプロデュースし、音楽・映像・ファッションが一体化したコンセプチュアルなアルバム『Something Beautiful|サムシング・ビューティフル』。すべての楽曲がアート作品として完成されており、息をのむほどの美の世界を一気に体験できる作品となっている。デラックス版で追加された2曲も合わせた、13曲を徹底解説。

1.Prelude | プレリュード

 新しいステージに立ったマイリーが誘う、唯一無二のアートと美の世界への入口となる一曲。後半にかけて次第に高揚していくインストゥルメンタルが、マイリーのスポークン・ワードのパートを際立たせている。

それでも 孤独ゆえに出会える美がある 
誰かと分かち合いたいほどの祈りという美が

 ”美の極み”を思わせる鮮烈なオープニング、そして正面からカメラを見つめるマイリーのまなざしが、この先に広がる壮大な物語を予感させる。

2.Something Beautiful |サムシング・ビューティフル

 アルバムのタイトルトラック「Something Beautiful」は、ソウルとジャズの影響を感じる幻想的なR&Bバラードで、徐々に実験的なロックナンバーへと姿を変えていく。

ねえ 息ができないよ ネックレスに沿って あなたが跡をつける
ねえ 息ができないよ 身も心も裸になれば 私はあなたに夢中

 ミュグレーのクリエイティブ・ディレクター、ケイシー・カドワラダーが手がけたカスタム・デザインの衣装に身を包んだマイリーの姿は、アートそのもの。気高く妖艶なその佇まいに、思わず息をのむ。

3.End of The World | エンド・オブ・ザ・ワールド

 絶望的なテーマ「世界の終わり」を描きながらも、80sディスコ風の軽快なポップ&ラブソングとして展開され、死や現実逃避を歌うほのかな絶望感と軽快さのギャップが胸に残る一曲。

ボトルが空になるまで飲んで 我を忘れよう
私を抱き寄せていて 明日が来るか分からないから
気付かないでいよう 世界の終わりには 
気付かないでいよう 世界の終わりには

 マイクを手にしたマイリーがステージ上で魅せる姿は、2024年グラミー賞でのパフォーマンスを彷彿とさせる。MVのラストで、世界の終わりを眺めるかのような、見る者の心を引きつけるマイリーの表情に注目。

4.More to Lose | モア・トゥー・ルーズ

 マイリー自身が「特別な曲」と語るこの曲は、失恋相手への切ない気持ちを歌った情熱的なバラード。クラシックでゴージャスな衣装を身につけた姿がモノクロの映像に映し出され、まるで映画のワンシーンのような世界観が広がっている。

悦びが姿をくらましても 私はここで またその悦びが訪れるのを祈ってる
そして告げられたあの言葉 それでもまだ「嘘だったら」と願ってる
分かってた いつか選ばなきゃいけないときがくること
失うものは もっと大きいと思ってたな

 完璧さを追い求めるのではなく、美しくエモーショナルなサウンドを目指した、というマイリー。魂のこもった歌声は鳥肌必至。

6.Easy Lover | イージー・ラヴァー

 愛しているのに二人の関係が簡単ではない、そんなもどかしさを歌った、キャッチーなフックが印象的な70年代風ディスコ調ソフトロック。実はこの曲、当初はビヨンセとのコラボのために描かれたもので、歌詞の「Tell ’em, B」はビヨンセのことを指している。

あなたのこと 諦められない あなたのこと 手放したくない
あなたのこと 諦められない あなたのこと 手放したくない
でもあなたといるのは簡単じゃない

 ショーガール風の衣装に身を包んだマイリーが、ハリウッドの映画スタジオを闊歩し、最後にはステージで力強く踊り歌う姿はカリスマそのもの。

8.Golden Burning Sun | ゴールデン・バーニング・サン

 意中の相手をどうしても口説き落としたい、そんな切実な想いを綴ったポップ・バラード。ヴィジュアルフィルムに収録されたMVでは、“黄金色に燃える太陽”を背にタイトなボディスーツに身を包んだマイリーが、バイクにまたがり全身で愛を叫ぶ眩しい姿が映し出されている。

あなたは唯一無二の人
黄金色に燃える太陽が照らすこの世界で 
絶対ガッカリさせないから 私といてくれる?
もう諦めて 降参して 身を委ねて 
絶対ガッカリさせないから 身を任せてよ

 以前からUnreleased songとしてネット上に存在しており、コアファンが「遂に正式リリース!」と歓喜した曲。どこか切なく胸をキュッと締め付ける、ノスタルジックなメロディー。

9.Walk Of Fame (Ft. Brittany Howard) | ウォーク・オブ・フェイム (FEAT. ブリタニー・ハワード)

 「これからも成功者の道を歩き続ける」という自信と確信に満ちた、エレクトロポップ×ロックの力強いナンバー。

Ooh yeah これが成功者の道
涙の向こうに はっきり見えるものがある
ただ立ち去るだけ ただ立ち去るだけ
(Yeah いつだって私は 成功者の道を行く)

 2026年にハリウッドのウォーク・オブ・フェイムにマイリーの名前が刻まれる予定で、マイリーは「まるで夢のような気分」と語っている。MVは実際にネオンがきらめくウォーク・オブ・フェイムで撮影され、膝にひどい感染症を負ったという裏話も明かしている。そんなマイリーの、体当たりのダンスパフォーマンスにも要注目。

10.Pretend You’re God | プリテンド・ユーアー・ゴッド

 “まだ愛している?”と、忘れられない人への狂おしい気持ちが深く響くラブソング。静かに幕を開け、曲が進むにつれて重厚感を増していく展開が心に迫る。

まだ私のこと愛してる? 知りたいの
大丈夫 もう愛してないなら何も言わなくていい
まだ私のこと愛してる? 知りたいの 知りたいの
その腕で抱きしめて 神様みたいなふりをして

 これまでの自信に満ちた姿から一変、自分の愛が報われないかもしれないという、一番弱い部分さえもさらけ出している。風に吹かれ感情の嵐を爆発させるように、ソウルフルな歌声を響かせるマイリーの姿は圧巻。

11.Every Girl You’ve Ever Loved (Ft. Naomi Campbell) | エヴリー・ガール・ユーヴ・エヴァー・ラヴド(FEAT. ナオミ・キャンベル)

 元祖スーパーモデルのナオミ・キャンベルとマイリーの、圧倒的な美の共演が実現!ファッションショーのランウェイを思わせるエレクトロ・ダンスチューンにのせ、「私は過去の誰よりもいい女」と自信を持って歌い上げる、堂々たる女性のためのエンパワーメント・ソング。

こんな美人 夜の遊び相手にはもったいないでしょ?
どうしてまだこだわってるの? 
特別な一人を探しても きっと満足できない
過去の女みんな 私一人で味わえるよ

 リリースに合わせて、ナオミと二人で限定バイナルへのサイン会を共催したことも大きな話題に!

12.Reborn | リボーン

 マイリーが“お気に入りの曲”と語る、文字通り何度も“生まれ変わり”進化してきたという思い入れの深い一曲。

天国があるとしたら それはいつかの私がいた場所
自我を殺して 生まれ変わろう 生まれ変わろう

 “自我を殺して生まれ変わろう”という歌詞と、ヴィンテージ感のあるブラウン管に映し出されたようなダークでディストピアな映像表現が一体となり、強烈に心に残る。 

13.Give Me Love | ギヴ・ミー・ラヴ

 “エデンの園” “現世” “地獄”を描いた、ヒエロニムス・ボスの絵画「快楽の園」をモチーフにした詩的でヘブンリーなナンバー。

愛がほしい 
愛がほしい 愛がほしい
そして私は この世の喜びに別れを告げる 
理想の楽園が破滅していく傍らで
生きたまま怪物に貪られても 
恐れることなく あなたの名を呼んでいる

 これまで自分自身のことを歌い続けてきたマイリーが、敢えて新しい題材に挑戦し“愛”とまっすぐに向き合った意欲作に仕上がっている。

14.Secrets (feat. Lindsey Buckingham & Mick Fleetwood) | シークレッツ (FEAT. リンジー・バッキンガム&ミック・フリートウッド)

 マイリーの父でカントリー歌手のビリー・レイ・サイラスに捧げた、非常にパーソナルな一曲。60年代後期のイギリス・ブルーズ・ブームを牽引したフリートウッド・マックのリンジー・バッキンガムとミック・フリートウッドをフィーチャーしている。

ヒーローに(どこに行こうと)
あなたのヒーローになれる?(どこに行こうと)
攻撃はもうおしまいにして(どこに行こうと)
この戦争に白旗を(どこに行こうと ついていくから)

 マイリーはインスタグラムで「この曲は、しばらく離れ離れになったけれど、ずっと愛していた人への仲直りのしるしとして書いた」と綴っており、長年不和が噂されていた父との和解のきっかけになった曲。

 素顔に近いマイリーの一面を映し出すところから幕を開け、やがて光と闇を象徴するような白と黒のオートクチュールドレスが映えるシーンへと展開。ラストの許しを選び前に進む決意を宿したような表情が印象的。マイリーが2025-2026年の秋冬コレクションのアイコンを務める、メゾン・マルジェラのアイテムに注目。

15. Lockdown (feat. David Byrne) | ロックダウン (FEAT. デヴィッド・バーン)

 元トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンとコラボした、13分におよぶ大作。幻想的かつ実験的なサウンドで、聴く者を異次元へと誘うナンバー。タイトルからは、パンデミック中の暗雲立ち込める空気感も思い起こされる。

昼なのか夜なのかもわからない
外に出る必要はない 内に閉じこもっていたい
おいで 愛しい人 迷っても 見つけ合おう
鍵をかけて しっかり 鍵をかけて 閉じ込めて

※14曲目「Secrets (feat. Lindsey Buckingham & Mick Fleetwood)」と15曲目「Lockdown (feat. David Byrne)」は、デラックス版のみ収録。

美しく圧倒的な世界観を体感できる、ヴィジュアルフィルム

Photo: Glen Luchford

 オリジナルアルバムの映像作品を収めたヴィジュアルフィルム『マイリー・サイラス:Something Beautiful』は、トライベッカ映画祭でプレミア上映され、その後、世界各国の映画館でも限定上映された。“唯一無二のポップ・オペラ”と大きな注目を集めた。

 マイリー本人に加え、ジェイコブ・ビクセンマンとブレンダン・ウォルターが監督を担当。衣装には、ティエリー・ミュグレーのアーカイブ作品やジャン=ポール・ゴルチエの希少なデザイン、アレキサンダー・マックイーンのカスタム作品、アライアなども登場している。

 残念ながら日本での劇場公開は叶わなかったが、現在Disney+で配信中のため、日本からも観ることができる。美しく圧倒的な世界観を、ぜひ体験してほしい。

『マイリー・サイラス:Something Beautiful』Disney+にて配信中

マイリーの音楽的進化を支えた存在とは…?

Photo: GlenLuchford

 最新アルバム制作の陰で、マイリーの創作を力強く支えたのは、恋人のマックス・モランド。

 マイリーの6歳年下でLAを拠点に活動するバンドのメンバーのマックスとは、2021年頃から交際を開始。前作『エンドレス・サマー・バケーション』でも2曲の制作に携わり、今回のアルバムでは全8曲でプロデューサーとして参加している。「End of the World」「Something Beautiful」のMVやライブでドラムを担当するなど、創作の現場に深く関わる姿も見られている。

 マックスは表舞台に出ることをあまり好まないため、二人の姿が一緒に見られることは少ないが、交際約4年を迎えて順調に関係を築いている様子。マックスの存在が、マイリーの音楽的成長や進化を後押ししているようだ。仕事も私生活も支え合う、二人の今後の関係からも目が離せない。

進化を続けるマイリー、新たなステージに期待 

Photo: Jonnie Chambers

 ポップ・スターという枠にとどまらず、常に新境地を切り開き続けるマイリー。音楽・映像・ファッションをテーマにしたアート作品として制作された最新アルバムでは、芸術の極みに到達。そんなマイリーの唯一無二の世界に没頭できる、アルバムのヴィジュアルフィルムはDisney+で配信中で日本からも視聴可能。

 2024年にディズニー・レジェンド賞を受賞したことで、長年禁止されていた『ハンナ・モンタナ』時代の楽曲も公式に解禁され、今後マイリーの“ハンナ・モンタナ”の姿を再び目にすることができるかもしれない。

 サウンドと映像、美の表現が融合した今作のマイリーも圧巻だったが、この枠を軽々と超えて、さらに予想を超える新たな姿を見せてくれるのではないかという期待が高まる。

【作品情報】

Miley Cyrus | マイリー・サイラス
最新アルバム『Something Beautiful (Deluxe)|サムシング・ビューティフル(デラックス)』
2025年09月19日(金)発売

https://MileyCyrusJP.lnk.to/SomethingBeautiful_DX

【全15曲収録】
1.Prelude | プレリュード
2.Something Beautiful |サムシング・ビューティフル
3.End of The World | エンド・オブ・ザ・ワールド
4.More to Lose | モア・トゥー・ルーズ
5.Interlude 1 | インタールード 幕間1
6.Easy Lover | イージー・ラヴァー
7.Interlude 2 | インタールード 幕間2
8.Golden Burning Sun | ゴールデン・バーニング・サン
9.Walk Of Fame (Ft. Brittany Howard) | ウォーク・オブ・フェイム (FEAT. ブリタニー・ハワード) 
10.Pretend You’re God | プリテンド・ユーアー・ゴッド
11.Every Girl You’ve Ever Loved (FEAT. Naomi Campbell) | エヴリー・ガール・ユーヴ・エヴァー・ラヴド (ft. ナオミ・キャンベル)
12.Reborn | リボーン
13.Give Me Love | ギヴ・ミー・ラヴ
14.Secrets (feat. Lindsey Buckingham & Mick Fleetwood) | シークレッツ (FEAT. リンジー・バッキンガム&ミック・フリートウッド)
15.Lockdown (feat. David Byrne) | ロックダウン (FEAT. デヴィッド・バーン)

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