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完成アルバムを白紙に!失恋の想いを率直に描いたザ・キッド・ラロイ最新作『ビフォー・アイ・フォーゲット』を解説&おすすめ曲紹介

FRONTROW Editorial Dept.
BY FRONTROW Editorial Dept.
完成アルバムを白紙に!失恋の想いを率直に描いたザ・キッド・ラロイ最新作『ビフォー・アイ・フォーゲット』を解説&おすすめ曲紹介

 これまでヒット曲を次々と生み出し、グローバルに旋風を巻き起こしてきたオーストラリア出身のザ・キッド・ラロイ。失恋やその葛藤をリアルすぎるほど赤裸々に描き、切なさが胸に突き刺さる最新アルバム『ビフォー・アイ・フォーゲット』が今年1月にリリースされた。

 一度完成していたアルバムを白紙に戻し、約4か月で作り直された本作は、音楽性の幅がさらに広がったラロイの新たな一面が垣間見える15曲を収録。今回は、その中から特に注目したいハイライト曲をプライベートな恋愛事情も交えながら徹底解説。(フロントロウ編集部)

現在22歳、数々の記録を打ち破ってきたザ・キッド・ラロイの軌跡

 2003年生まれ、オーストラリア出身のザ・キッド・ラロイ(The Kid LAROI)。幼い頃からラップの作詞を始め、フリースタイル動画をオンラインに投稿するなど、早くから音楽活動を行ってきた。2018年、ラジオ番組出演をきっかけにその才能が注目され、故ジュース・ワールドのオーストラリア・ツアーでの公演に抜擢されると、一気に注目の存在に。

 2021年には、シングル「WITHOUT YOU」にマイリー・サイラスを迎えたリミックス版が、米ビルボード・チャートで8位にランクイン。同年7月には、ジャスティン・ビーバーを客演に迎えた「STAY」をリリースし、世界的大ヒットを記録した。同曲はビルボード・グローバル・チャートで1位を獲得し、オーストラリア出身アーティストとして初の快挙を達成している。

 さらに8月には、デビュー・ミックス・テープの『F*CK LOVE』が全米アルバム・チャートで1位を獲得。これは2020年代のビルボード史上、最年少記録を更新することとなった。加えて、オーストラリア人男性ソロアーティストとしては40年ぶり、歴代2人目となるBillboard Hot 100での1位獲得という偉業も成し遂げている。

 その勢いは止まらず、同年11月には第64回グラミー賞最優秀新人賞にノミネート。2023年にはデビュー・アルバム『ザ・ファースト・タイム』を発表し、そして2026年1月、待望のセカンド・アルバム『ビフォー・アイ・フォーゲット』をリリースした。

新アルバム『ビフォー・アイ・フォーゲット』

完成アルバムを白紙に。『ビフォー・アイ・フォーゲット』が生まれるまで

 セカンド・アルバム『ビフォー・アイ・フォーゲット』は、ラロイにとって新たな一歩となる、これまで以上に自分自身の内面とまっすぐに向き合った作品。サウンド面でも、R&Bやオルタナティブ、ポップの色合いが感じられ、キャリアの転換点とも言えるような新しい一面ものぞかせている。

 もともとラロイは「WATCH THIS!」というキーワードとともに、新アルバムのリリースを匂わせており、作品はほぼ完成していたという。実際に「SHE DON’T NEED TO KNOW」などのシングルも先行して発表していた。しかしその後、完成していた作品を白紙に戻し、約4か月という短期間でほぼゼロから作り直したのが本作だ。

 この決断は、2025年6月にテイト・マクレーと破局したことが大きな理由とみられている。それを色濃く反映するかのように本作は、別れの痛みや後悔をさらけ出しつつ、未来へ進もうとする、ラロイの“今”の気持ちをそのまま映し出した一枚となっている。

 ラロイ自身も本作について、「自分がこれまで作ってきたものの中で一番気に入っている作品で、同時に一番パーソナルな作品でもある」と語っている。

 さらに、リリースを待ち続けていたファンに向けて、こんなメッセージも残している。「時間がかかってごめん。この作品が、あなたにとって少しでも響くものになればいいな。僕にとっては、本当に特別なものだから。みんなを愛しているし、いつも応援してくれて本当にありがとう」

楽曲を通して交わされた“アンサーソング”の応酬?

 テイトとの破局が報じられた後の動きも、本作を読み解くうえで見逃せないポイントだ。2025年9月5日、ラロイは突如として「A COLD PLAY」をリリース。

Fix you, fix you, fix you, wish I could 
支えられたら 支えられたらいいのに
It’s really hard to accept the fact I can’t fix you now

本当に辛いよ もうムリなんだって認めるのは

 この曲のサビが、「君を支えたかったけれど、それができなかった」という後悔がにじむ内容だったことから、テイトに向けた曲ではないかとファンの間で噂に。

 すると9月26日、今度はテイトが「TIT FOR TAT」を発表。
“仕返し”を意味するタイトルや、歌詞に登場する“Fix your fuckin’ self.”といったフレーズから、「A COLD PLAY」へのアンサーソングではないかと受け取る声も多く上がった。

 互いに名前を出すことはなかったものの、楽曲を通したやり取りはSNS上で大きな話題に。そしてこの一連の流れが、『ビフォー・アイ・フォーゲット』へと向かうラロイの心の揺れを象徴するエピソードとなっている。

『ビフォー・アイ・フォーゲット』のハイライト曲をチェック!

 そんなラロイ本人の心情がこれまで以上にオープンに刻み込まれているアルバム『ビフォー・アイ・フォーゲット』。収録された15曲の中から、特に注目したいハイライト曲をピックアップしてご紹介。

1.「A COLD PLAY|ア・コールド・プレイ」

 テイトとの破局が大きくSNSで話題となるきっかけにもなった、アルバムの先行曲第一弾。切なさともろさをまとったメロディアスなサウンドに、感情をさらけ出すようなラロイのボーカルが心に響く。軽快なフックに乗せて紡がれる、むき出しの言葉が耳に残って離れない。

Flew different states to come see you in between tour / I gave you everything I had and even more /
ツアーの合間に飛行機で会いに行ったし
自分のすべてを、いやそれ以上を、君に捧げた

I think we just probably should’ve stayed friends / I think that we probably could’ve saved tears
たぶん友達のままでいるべきだったんだ
そうしたら涙を流さずにすんだのに

 
ワンテイクで撮影されたMVには、黒いスーツに黒のネクタイ姿のラロイが登場し、冒頭アップで映された瞳から、ほろりと涙がこぼれる。ゆっくりとズームアウトしていく間も、終始悲痛な表情のままレンズを見つめ続け、まるでレンズの奥にいる誰かに訴えかけているかのよう。失恋の痛みがこれでもかというほどダイレクトに伝わり、観る者の心をぎゅっと締めつける。

2.「RATHER BE (feat. Lithe)|ラーザー・ビー(feat.ライス)」

 オーストラリア出身のLitheを迎えた「RATHER BE」は、未練を断ち切れない夜を描いた一曲。無理に忘れようとすればするほど、かえって想いが募ってしまう。そんな、誰もが一度は経験したことのある“叶わない恋”のもどかしさが胸に迫る。

 お酒やクラブに逃げてみたけど、心が求めているのはただ一人。リアルな感情が痛いほど伝わってくる歌詞と心に響くボーカルに、思わず感情移入せずにはいられない。

 都会的でクールな空気感の中に、メロウで繊細なムードが溶け込んだヒップホップとR&Bを融合させたサウンドが印象的。

 ラロイの弟・Auzは、アルバム全体の共同プロデューサー/ソングライターとして制作に関わっており、この曲では作曲にも参加している。兄弟の信頼関係は非常に厚く、ラロイは楽曲を制作するたびに必ずAuzに感想を求めているという。正直な意見をくれる存在だからこそ、弟が気に入った楽曲は特別に信頼していると明かしている。

3.「A PERFECT WORLD|ア・パーフェクト・ワールド」

 “完璧な世界だったら、どんな問題もふたりで乗り越えられたのに” という、叶わなかった想いをエモーショナルなR&Bサウンドにのせて歌った一曲。軽やかで透明感のあるラロイの歌声が、息が詰まるほど心に残る。

 「もしも…」を何度も想像してしまうけど、現実は違うことにも気づき始めている。前に進もうとする気持ちと、過去に引き戻される心の揺らぎが痛々しいほどリアル。

In a perfect world /We’d have it all figured out / Baby, you would be my girl / And if they talk, let ‘em talk, baby
完璧な世界だったら なんだって解決できる

ベイビー 君は僕の恋人だし 噂なんか気にしなくていい

 サビで歌われる「And if they talk, let ‘em talk, baby(周りが何か言っても、気にしなくていい)」というフレーズは、前作『THE FIRST TIME (DELUXE VERSION)』収録の「BABY I’M BACK」の一節を自ら引用しているとみられるのも、コアファン向けのポイント。

4.「I’M SO IN LOVE WITH YOU|アイム・ソー・イン・ラブ・ウィズ・ユー」

 もともと完成していたアルバムの中から、ただ一曲だけ残されたのが「I’M SO IN LOVE WITH YOU」。タイトルの通り、今作の中で唯一幸せを感じさせる直球のラブソングであることが、かえって切なさを際立たせている。一途な恋に溺れる高揚感と、メロウで心地よい浮遊感のあるメロディに心が満たされる。

‘Cause I’m, I’m, I’m / I’m so in love with you / Yeah, it’s true
だって僕は 君をとても愛しているんだ 本当だよ

 ヒップホップ、ポップ、R&Bやなど、さまざまなジャンルに影響を受けてきたラロイらしく、R&B界を代表するシンガー・ソングライター、ベイビーフェイスのような曲にしようというイメージから仕上げられたナンバー。

5.「PRIVATE|プライベート」

 恋人同士のプライベートな関係がSNSで話題になってしまったことで生まれた、戸惑いや苦しさ、すれ違いを描いた楽曲。有名人として恋愛をする大変さや、私生活をオープンにし過ぎててしまったことへの後悔をストレートに伝えている。

 二人の関係が早く進みすぎてしまったせいか、それとも、周りの声や噂に振り回されすぎてしまったせいなのか、とラロイ自身が問いかける胸が締め付けられるような歌詞。

Next time, I’m keepin’ it private / Could have worked it out

次はプライベートにしておくよ
そうすれば、きっとうまくいったはずだから

 物憂げでノスタルジックなバラードから始まるこの曲は、中毒性のあるサビのフックが耳に残り、つい何度もリピートして聴きたくなること間違いなし。

失恋を経て、新たなステージへ。ラロイの“今”を感じる一枚

 ザ・キッド・ラロイの最新アルバム『ビフォー・アイ・フォーゲット』は、誰もが経験する失恋や心の痛みに、これ以上なくリアルに寄り添ってくれる作品。タイトルにあるように、“忘れてしまう前に”ラロイ自身が吐き出した生の感情がぎっしり詰まっている。叶わなかった恋の切なさや、思いっきり泣きたくなる感情もアルバム全体を通して深く共感できるはず。

 自分の内面と真っ直ぐ向き合ったこの作品からは、ラロイが新しい一歩を踏み出したことや、サウンド面でも新しい表情を見せていることが伝わってくる。ひとつの恋を終え、その痛みを音楽へと昇華させたラロイ。次のステージへと歩み出した姿に共感しつつ、アーティストとしてさらなる進化を遂げるであろう今後の活動に期待したい。

【作品情報】

The Kid LAROI | ザ・キッド・ラロイ
「BEFORE I FORGET | ビフォー・アイ・フォーゲット」

配信中(2026年1月9日)
●再生・購入はこちら https://tkljp.lnk.to/BEFOREIFORGET

【トラックリスト】

1.ME + YOU|ミー+ユー

2.JULY|ジュライ

3.PRIVATE|プライベート

4.COME DOWN|カム・ダウン

5.RATHER BE (feat. Lithe)|ラーザー・ビー(feat.ライス)

6.A PERFECT WORLD|ア・パーフェクト・ワールド

7.5:21AM (feat. Andrew Aged)|5:21AM(feat.アンドリュー・エイジド)

8.A COLD PLAY|ア・コールド・プレイ

9.THE MOMENT (feat. Clara La San)|ザ・モーメント(feat.クララ・ラ・サン)

10.NEVER CAME BACK|ネヴァー・ケイム・バック

11.THANK GOD|サンク・ゴッド

12.I’M SO IN LOVE WITH YOU|アイム・ソー・イン・ラブ・ウィズ・ユー

13.MAYBE I’M WRONG|メイビー・アイム・ロング

14.HER INTERLUDE|ハー・インタールード

15.BACK WHEN YOU WERE MINE|バック・ウェン・ユー・ワー・マイン

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