先に日本版の予告編が解禁されたライヴ映画『クイーン:ブダペスト』に、続きがあった。今度は本編から1曲まるごとが先行公開されている。「Tie Your Mother Down」、4Kレストア済み。(フロントロウ編集部)
フレディが立っている、最後のフィルム
収録されているのは1986年7月27日、ハンガリー・ブダペストのネープシュタディオン(人民スタジアム)で行なわれた<Magic Tour>の一夜だ。クイーンのオリジナルメンバー4人がそろって回った最後のツアーであり、この公演はフレディ・マーキュリーが立った最後のライヴからわずか5公演前にあたる。フレディ在籍時としては、最後に映像として記録されたパフォーマンスになった。
先行公開されたのは、その本編から抜き出された「Tie Your Mother Down」。ブライアン・メイが書いた曲で、今年発売50周年を迎えるアルバム『華麗なるレース(A Day At The Races)』のオープニングを飾り、第2弾シングルとしても発売された。以来、この曲がクイーンのセットリストから外れたことはほとんどない。ブライアンとロジャー・テイラーは後年も、フレディの65歳の誕生日を祝うイベントでジェフ・ベックと、ロックの殿堂入り記念セレモニーで、2016年のフー・ファイターズのハイド・パーク公演で、繰り返しこの曲を鳴らしてきた。
ブライアンは、修復された映像についてこう話している。「映像のクオリティは素晴らしく、まるでその場にいるような気分にさせられる。IMAXで観れば、迫力は規格外だ」。ロジャーの言葉はもう少し個人的だ。「結果的に、あれがフレディと行った最後のツアーになった。まさに僕らは絶頂期にいた。素晴らしい思い出にあふれたツアーだ」
17台のカメラ、40kmのフィルム、そして政府の承認
この公演が特別なのは、内容だけではない。東西冷戦のさなか、西側のロック・バンドが社会主義圏でスタジアム公演を行なったのは、クイーンが初めてだった。8万枚のチケットは完売し、スタジアムに入れなかった約4万5,000人が外で音に耳を傾けた。観客のなかには、旧ソ連やポーランドから来たファンの姿もあったという。
撮影はハンガリーを代表するスタッフが担当し、35mmフィルムで行なわれた。17台のカメラ、総延長およそ40km(25マイル)のフィルム。この規模の撮影プロジェクトが当時のハンガリー政府から正式に承認されたこと自体、共産主義国家では前例がなかった。

その35mm原版から4Kレストアを手がけたのは、ピーター・ジャクソン監督(『ロード・オブ・ザ・リング』三部作)率いるニュージーランドのパーク・ロード・ポスト・プロダクション。音はオリジナルのマルチトラック音源から新たにリミックスされている。本編には「We Will Rock You」「We Are The Champions」「Under Pressure」「Bohemian Rhapsody」といった代表曲に加え、ハンガリーの伝統民謡「Tavaszi Szél Vizet Áraszt(春の風)」をアコースティックで歌う場面も収められている。
日本の上映館が106館に増えた
10月7日の公開が発表された時点から、日本の上映体制は目に見えて広がっている。公開発表時には上映予定のなかった11県で29劇場が新たに加わり、北は岩手県から南は佐賀県まで、全国106館での上映となった。世界では50以上の地域、2,000館超で公開される。
IMAX特別先行上映は10月7日のTOHOシネマズ 新宿とTOHOシネマズ 名古屋栄。ドルビーアトモス上映と2D通常上映は基本的に10月7日と10月10日の2日限定で、一部劇場では10月15日まで上映される。鑑賞料金は3,000円一律(特別規格のスクリーンや席はアップチャージあり)。
10月30日、初の3枚組アナログも出る
劇場での体験は、そのまま家に持ち帰れる。10月30日、『クイーン:ブダペスト』はマルチフォーマットでリリースされる。ブルーレイ、DVD、2CD、デジタル配信に加え、この作品としては初となる3枚組アナログLPも登場する(国内盤はブルーレイと2CDの2形態)。音はクイーンのスタジオ・チームがオリジナル・マルチトラックから新たにリミックスしたものだ。
国内盤ブルーレイは4面パネルソフトパック仕様の完全生産限定盤で、MC・ナレーション部分に日本語字幕が付き、解説・歌詞・対訳入りの日本語ブックレットが同梱される(SIXP61/¥5,940税込)。2CD国内盤は高品質Blu-Spec CD2仕様で、初回仕様にはハーフカット型抜きステッカーが封入される(SICP-31878〜9/¥3,960税込)。
2026年は、フレディ・マーキュリー生誕80周年、バンド結成55周年、そして<Magic Tour>40周年が重なる年だ。1本のフィルムが40年を待って出てくるには、ちょうどいいタイミングだったのかもしれない。



















