社会的に成功しているビジネスマンやセレブたちにも多い、自分の努力や成功を認められない「インポスター症候群」とは? (フロントロウ編集部)

人気沸騰中シンガーが「インポスター症候群」を告白

 MTVビデオ・ミュージック・アワード(以下VMA)のステージで、圧巻のパフォーマンスを披露し、観客や視聴者から大喝采を浴びた人気急上昇中のシンガー/ラッパー、リゾ(Lizzo)。

 4月にリリースしたアルバム『コズ・アイ・ラブ・ユー(CuzI Love You)』がビルボードのアルバムチャートで初登場6位に輝き、10週間にもわたってトップ10入りを続けるという快挙を成し遂げた彼女は、女性の本音や強さをパワフルかつソウルフルに歌った楽曲が多くの人の心を掴み、トップアーティストへの階段を駆け上がっている。

画像: VMAでのパフォーマンスの様子。

VMAでのパフォーマンスの様子。

 普段から歯に衣着せぬ物言いや、明るく自信に満ちた言動が注目を浴びることが多い彼女だが、アーティストにとって大きな目標の1つである“VMAへのステージに立つ”という夢を実現したリゾは、その直後に自身が抱える意外な“闇”について告白。

 VMAのでのパフォーマンスの模様を収めた動画を公開したリゾは、「インポスター症候群」に悩まされていることを打ち明けた。

「あの日、ステージに立った女性たちすべてが、自分はステージに立つべきではないと思ってしまったり、もしくは、自分にはステージに立つ権利が無いと思ってしまった経験があります。私もその1人です。『インポスター症候群』は、アメリカにおいて最も社会的に無視されている集団(※)の特権です。私たちは、スポットライトの下に居場所は無いと教えられてきただけではなく、ついに自尊心を肯定できる場所に辿りついた場合にも、世間から叩き潰されそうになってきました」
※ここでは、黒人女性を意味している。歴史上、社会的に疎外されてきた黒人女性には、とくにインポスター症候群に陥る人が多いとされている。


「インポスター症候群」とは?

 リゾが告白した「インポスター症候群」とは、自分の成功を素直に肯定できず、もし何か目標を達成したりしても、それは「自分の実力ではなく、運が良かっただけ」と感じたり、「いつか自分の実力の無さが露呈してしまう」と不安を抱いたりしてしまう傾向のこと。

 異常なまでに自己評価が低く、「自分は詐欺師だ」、「周囲を騙している」などと感じる人が多いため、別名「ペテン師症候群」、「詐欺師症候群」とも呼ばれているこの症状は、海外で行なわれた研究では、7割近くの人が経験していることも明らかになっており、社会的に成功した人物、とくに女性が陥りやすいと言われている。

画像: 「インポスター症候群」とは?

 その原因としては、さまざまなものが考えられているが、幼少期や学生時代に受けた周囲からのプレッシャーや大人になってから経験したトラウマ的な出来事、社会的な風潮などが影響している場合が多いという。

【もしかしたらあなたも? インポスター症候群の人が陥りやすい思考】

・自分の実力の無さがいつ周囲にバレてしまうかと恐れている
・つねに失敗することへの不安を抱えている
・失敗をした時には「やっぱり、ダメだったか」と思ってしまう
・他人からのポジティブな評価を素直に受け入れることができない
・「自分なんて…」と口にしがち


トップセレブたちも悩ませる「インポスター症候群」

 世間から注目を浴びるセレブにもインポスター症候群を公表している人は多い。

 アカデミー賞受賞女優のメリル・ストリープやジョディ―・フォスター、高学歴で知られる女優のナタリー・ポートマンやエマ・ワトソン、世界的シンガーのレディー・ガガやジェニファー・ロペス、女子テニス界のトップに輝いたプロテニス選手のセリーナ・ウィリアムズ、トップモデルから女優へと転身したカーラ・デルヴィーニュらが「自分を詐欺師のように感じたことがある」、「自分にはステージに立つ価値がない」などと感じてしまった経験があることを告白している。

画像: 上段左から:メリル・ストリープ、ジョディ―・フォスター、ナタリー・ポートマン、エマ・ワトソン 下段左から:レディー・ガガ、ジェニファー・ロペス、セリーナ・ウィリアムズ、カーラ・デルヴィーニュ

上段左から:メリル・ストリープ、ジョディ―・フォスター、ナタリー・ポートマン、エマ・ワトソン
下段左から:レディー・ガガ、ジェニファー・ロペス、セリーナ・ウィリアムズ、カーラ・デルヴィーニュ

 男性では、母国アメリカで大統領自由勲章まで受章しているベテラン俳優のトム・ハンクスが「どんなに成功しても、ふとした瞬間に『俺、どうやってここまで来たんだ?』と思ってしまうことがある。いつか、みんなが俺が詐欺師だということに気づいて、すべてを取り上げられてしまうんじゃないかと不安になる」と告白。映画『デッドプール』のライアン・レイノルズや映画『トワイライト』のロバート・パティンソンといった人気俳優たちも、同様の傾向を口にしている。

画像: 左から:トム・ハンクス、ライアン・レイノルズ、ロバート・パティンソン

左から:トム・ハンクス、ライアン・レイノルズ、ロバート・パティンソン


「インポスター症候群」を克服するには?

 リゾが「インポスター症候群」」を公表したコメントには、こんな続きがある。

「でも、今回は違います。昨夜、世界は私たちとともに微笑み、歌い、美しさを目の当たりにしました。世界は黒人女性たちが最高にハッピーだと感じるのを目の当たりにし、応援してくれました」

 VMAのステージに立っていた瞬間は、自身を苦しめてきたインポスター症候群から解放されることができたと話したリゾ。彼女が自分の目標達成を素直に認め、それをほかの女性たちと共有できたことには大きな意味がある。

画像: 「インポスター症候群」を克服するには?

 インポスター症候群の克服に有効だとされるのは、まずは「自分は完璧でなくてはいけない」という高すぎる理想を捨てること。そして、将来への不安に駆られるのをやめ、今という瞬間に集中すること。そして、自分を誉めることを習慣化することだと言われている。

 さらに、自分が抱える悩みについて、同じような局面を乗り越えて来た人と話し合ってみるのも効果的だとされている。

 謙虚であることを美徳とする日本でも、知らず知らずのうちに抱えている人が多そうなインポスター症候群。「もしかして自分も…」と感じる人は、一度、肩の力を抜き、自分を見つめ直してみるといいかもしれない。(フロントロウ編集部)

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