パトリシア・アークエットが亡き妹を偲ぶ
ドラマ『The Act(ザ・アクト)』で2019年度のエミー賞リミテッドシリーズ部門の助演女優賞を受賞したパトリシア・アークエットは、「50歳になった今、人生最高の役を手に入れられていることに感謝しています。しかし、私の心は悲しみでいっぱいです。妹のアレクシスをなくしたからです」と、2016年に47歳の若さで他界したトランスジェンダーのアレクシス・アークエットについて涙に声をつまらせながら言及。そして、パトリシアはこう続けた。
「トランスの人々は今でも迫害されています。アレクシス、私は毎日あなたを思い喪に服しています。そしてこれからの人生、トランスの人々が迫害されなくなるまでずっとそうします。トランスの人々に仕事を与えてください。トランスの人々だって人間なんです。あちこちに存在する偏見を取り除きましょう」
スタンディングオベーションで称えられたパトリシアのこの訴え。
ハリウッドでは、映画界とテレビ界でトランスジェンダーの役の起用に変化が表れている。テレビ界では、LGBTQ+コミュニティを舞台にしたドラマ『POSE』や、初のトランスジェンダーのスーパーヒーローが登場したドラマ『SUPERGIRL/スーパーガール』など、トランスジェンダーの役柄が少しずつ増加傾向にある。一方で、2018年に大手配給会社が公開した計110本の映画のうちトランスジェンダーのキャラクターが登場した作品はゼロだった。
ラバーン・コックス、ファッションで訴える
パトリシアの涙のスピーチ中にスタンディングオベーションをおくっていたラバーン・コックスも、この日、ファッションでLGBTQ+の権利向上を訴えた。
ドラマ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』で大ブレイクし、トランスジェンダーであることを公表している人として初めてプライムタイム・エミー賞にノミネートされた経歴を持つラバーンは、エミー賞のレッドカーペットにレインボーカラーのクラッチを持って登場。
ラバーン自身がデザインしたという虹色のクラッチの一面には、「10月8日 タイトル7 最高裁(Oct 8, Title VII, Supreme Court)」の文字が。そしてもう一面には、トランスジェンダーの旗と「トランスは美しい(TRANSISBEAUTIFUL)」というハッシュタグが描かれていた。
アメリカでは、LGBTQに対する雇用差別が性差別にあたるかどうかの審議が10月8日から最高裁ではじまる。この審議では、人種、宗教、性別、出身地を理由とした雇用差別を禁じる1964年の法律“Title VIIof the Civil Rights Act of 1964”にLGBTQ労働者が該当するかどうかも審議される。そんな大事な審議を前に、ラバーンがテレビ界最高峰のエミー賞という大舞台を使って、この話題にスポットライトを当てた。(フロントロウ編集部)