ロシア人男性が、AppleのiPhoneに操作されて自分は同性愛者になったと裁判を起こした。この騒動の裏側にひそむ、インターナライズド・ホモフォビア(内なるホモフォビア)とは?(フロントロウ編集部)

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iPhoneアプリによって自分が同性愛者に?

 ロシアに住む男性が、iPhoneのせいで自分は同性愛者になったと、iPhoneを販売するAppleに対して裁判を起こした。

 男性によると、自身のiPhoneで仮想通貨のビットコインを購入したところ、LGBTQ+コミュニティで使用可能なゲイコインが送られてきたという。さらにそこには、「試してみるまで判断しないで」というメッセージも添えられていたそう。

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 そこで男性は、ゲイコインを使えるアプリを使用。同性と恋愛関係になるに至ったという。

 男性は裁判所へ提出した書類の中で、こう述べている。

「私には彼氏がいて、それを両親にどう話すべきか分かりません。前述のメッセージを受け取ったことにより私の人生は悪い方へ変わってしまい、普通に戻ることは二度とありません。アップルは私を操って同性愛者にしました。この変化は、私のモラルと精神を痛めつけるものです」

 このゲイコインはAppleではない企業が販売していたものだけれど、男性は、Appleはそのネットワーク上の製品に対して責任があると主張している。

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インターナライズド・ホモフォビアとは

 今回の男性の話は、LGBTQ+コミュニティで話題にあがることが増えている「インターナライズド・ホモフォビア(internalized homophobia)」にあたる。直訳すると「内在化した同性愛嫌悪」となるこのフレーズは、LGBTQ+当事者が自分自身のセクシャリティを嫌悪してしまうこと。

 最近では、ディズニー・チャンネルのドラマ『アンディ・マック』でチャンネル史上初めて同性愛者の10代を演じたジョシュア・ラッシュが、現実世界でもバイセクシャルでありながらその部分を嫌悪していたことを「ゲイをオープンにしたキャラクターを演じているときでさえ、インターナライズド・ホモフォビアに悩んできた」と告白して話題を集めた。

画像: インターナライズド・ホモフォビアとは

 インターナライズド・ホモフォビアの原因は、LGBTQ+が「悪」とされる環境。LGBTQ+に対してネガティブな情報や感情を社会や家庭で見聞きして育った人が、自身がLGBTQ+であることに気づいたときにそれを嫌悪してしまう。

 例えば、テレビや本などでLGBTQ+キャラクターが笑いの対象として描かれていることを見ること、家族や友人グループの間でLGBTQ+の人々に対するネガティブな発言を聞くことで、当事者が自身のセクシャリティを嫌悪することに繋がってしまう。

 そしてこの内なる同性愛嫌悪が強い人ほど、孤独感や抑うつ、アルコールへの依存や薬物の使用、HIV、リスク行動、低い自尊心への繋がりが高いことが、マギル大学の2003年の研究をはじめ、過去の多くの研究で分かっている。

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 実際に、裁判を起こした男性が暮らすロシアは同性愛に厳しいスタンスをとっており、2014年には、同性婚が合法の国に暮らす同性カップルにロシアの子供を養子に出すことを禁止。2018年には同性愛宣伝禁止法が成立し、「非伝統的な性的関係(=同性愛)」を未成年者に宣伝する行為が禁止された。また、今年2019年7月にはLGBTQ+の人権活動家が“同性愛者狩り”の標的となり、その後殺害された。しかしロシア当局は、同性愛者狩りを行なう集団の捜査を拒否した。

 2013年には、英女優のティルダ・スウィントンがロシアにおけるLGBTQ+コミュニティの扱いに対してレインボーフラッグを掲げて抗議のメッセージを送った。

 セクシャリティという自分自身の自然な部分を否定して裁判を起こした男性。この男性はAppleに、約170万円の損害賠償を求めている。裁判は、10月17日に行なわれる予定。(フロントロウ編集部)

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