公開中の映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』の冒頭の「あのシーン」には、本編で描かれなかった“その後”が…?(フロントロウ編集部)

※この記事は映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』のネタバレを含むのでご注意ください。


冒頭の「あのシーン」に込められた意味

 大ヒット公開中の映画『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』で監督を務めるアンディ・ムスキエティと、監督の姉であり製作のバルバラ・ムスキエティにフロントロウ編集部がインタビューを行ない、冒頭の「あのシーン」に込められた意味について聞いてみた。

画像: 冒頭の「あのシーン」に込められた意味

 すでに作品をご覧になった方のなかには、映画の冒頭で同性愛者の青年エイドリアンが、いわゆる“同性愛嫌悪”の若者たちから執拗に暴行を受け、最終的にペニーワイズに命を奪われるという、あまりにも惨いシーンを見て胸糞が悪くなった人も多いはず。

 「あそこまで残酷である必要はあったのか?」「殺された青年が同性愛者だったことに意味はあるのか?」など、あのシーンを見て様々な疑問が浮かんだと思うが、今回、監督のアンディがすべての疑問を解決する答えをくれた。

 「作者のスティーヴン・キングが『IT/イット』の原作を執筆していた時、アメリカのメイン州にあるバンゴーでチャーリー・ハワードという若者が殺されたんだ。(エイドリアンと同じく)チャーリーもゲイで、劇中に出てくるシーンと同じようなかたちで殺害された。橋から川に投げ落とされて、溺死したんだ。あのシーンは作者のスティーヴンにとっても重要だったし、僕にとっても現代社会を反映する意味のあるシーンだった」-アンディ

 冒頭のあのシーンは実際に起こった事件がもとになっており、単にペニーワイズの残虐性を描いただけのものではなく、作者のスティーヴン・キングが原作本を執筆した80年代と変わらず、現在も社会問題になっている「ヘイトクライム」を描写していたのだ。

 ちなみに、問題のシーンを見た時に、「心の中でペニーワイズがエイドリアンではなく、彼に暴力を振るった若者たちを襲ってくれたらよかったのに…」と願ったことを編集部が伝えると、バルバラは、「ペニーワイズは弱者をもてあそぶ存在で、あの状況ではエイドリアンが最も弱い存在だった。あくまでペニーワイズはソーシャル・ジャスティス(社会正義)ではなく、ただの悪」としたうえで、現在制作を進めているディレクターズカット版で、エイドリアンをひどい目に遭わせた若者たちが、「報いを受けることになる」と特別に教えてくれた。

 ちなみに、ヘイトクライムやセクシャルマイノリティなど、意外にも社会的なメッセージが随所に込められている本作では、ルーザーズ・クラブのメンバーであるリッチー・トージアが「同性愛者」だということが明らかに。そのことについてアンディはこう語っている。

画像: 本作で大人になったリッチーを演じるのは、俳優兼コメディアンのビル・ヘイダー。

本作で大人になったリッチーを演じるのは、俳優兼コメディアンのビル・ヘイダー。

 「本作でリッチー・トージアがゲイだということが明かされるけど、彼はまさに自分のセクシャルアイデンティティに苦しむ人たちを象徴するような存在なんだ。『いまどき自分の性的指向を隠している人なんていない』なんて言う人がいるけど、そんなことない。その考えは間違ってる。今だってたくさんの人たちがカミングアウトをすることができず、苦しんでいる。自分の性的指向を明かすことでいじめられ、自尊心を傷つけられることを恐れている。だからこそ、リッチーやほかの登場人物たちを通して、そういったことを描きたかったんだ」-アンディ

 単なるホラー映画の枠を超えて、社会的なメッセージやLGBT+の要素を多く含んでいる本作。これらをふまえて作品を見ると、また違った印象を受けるかもしれない。(フロントロウ編集部)

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