『ブレードランナー』が1982年に描いた未来予想図
映画『ブレードランナー』は、リドリー・スコット監督の名作。ハリソン・フォードが主人公のリック・デッカードを演じ、退廃的な近未来に生きる硬派な男の姿を見せてくれた。
2017年には『ブレードランナー2049』というタイトルで続編が制作され、現在来日中の俳優マッケンジー・デイヴィスもキャストに加わっている。
映画『ブレードランナー』の舞台は2019年11月のロサンゼルス。人類の大半が宇宙の植民地に移動し、地球に残った人々は、酸性雨が降りしきる超高層ビルが立ち並んだ人口過密の大都市での生活を強いられている。
そんな『ブレードランナー』内での未来予想は、どれぐらい正確だったのかチェック!
1、ビデオ通話は進化した!
映画『ブレードランナー』の中では、主人公のデッカードとレプリカントのレイチェルがビデオ通話していた。ビデオ通話は、今日の技術が映画を追い越した例の1つ。
じつは、ビデオ通話が実際に行なわれるようになったのは、なんと1920年代で、米大手通信社AT&Tの社長が、当時の米国大統領ハーバート・フーヴァーと通話したのが世界初。
その後、ビデオ通話は2003年にSkypeが始まるまではあまり一般に浸透していなかったものの、現在ではAppleのFaceTime、GoogleのDuo、FacebookのWhatsApp、Lineのビデオ通話など、さまざまなツールができて、誰でも気軽に利用することができる。
さらに、『ブレードランナー』では通話するのに1.25ドル(日本円で109円)ほどを入れなければならなかったけど、今はスマホやパソコンで通話するので基本的には不要。
2、今と近いスマート家電
デッカードは家に帰るとき、声紋認証と「Deckard 97」というパスワードを入力する。声紋認証は現在利用が進んでいるものの一つ。AmazonのAlexaやGoogleのアシスタントは、音声のパターンによって人間を識別して、さまざまなことをやってくれる。仮想アシスタントAIが返事をしてくれるという点については、同じと言っても良いだろう。
しかし、『ブレードランナー』の世界では、インターネット上でつながった「スマート家電」ではなく、ろうそくを使っているため、現代ではおなじみの自動照明などは使えないかもしれない。
また、デッカードはカードキーで家の鍵を開けていたけれど、世界で初めてカードキーが作られたのは1975年。ノルウェーのトール・ソーネス(Tor Sørnes)という人がホテルの安全のために開発した。
3、ウソ発見器
ウソ発見器は、現在でも使われている。映画の中では感情を引き起こすような質問を繰り返し、その人が「レプリカント」なのか「人間」なのかを調査していた。
ウソ発見器は1921年に、「ポリグラフ」という名前で開発されて以来使われ続けており、血圧や心拍数を読み取るものや、脳波や声紋を測定するものなど、さまざま。
現在ウソ発見器の信ぴょう性は疑われている部分が大きく、イギリスなど証拠物として認めなくなった国もある。
4、写真共有技術はとても進化した!
『ブレードランナー』では、スマホやデジカメの写真よりも、現像、またはプリントアウトした写真が主に使われていた。
映画の中ではポラロイドカメラの写真をわざわざ探して分析していたけれど、現在写真はインスタグラムやFacebookで共有され、気軽に扱うことができる。
もし現在の世界でデッカードが手掛かりを求めるときは、レプリカントという疑いがある人のインスタグラムやFacebookを先に見ているかも。
5、ドライヤーは性能がいい
デッカードに追われることになるレプリカントのゾラは、髪の毛を球体の金魚鉢のような器具で乾かしていて、それは数秒で彼女の髪を乾かしてくれていた。
現在の技術でも、髪の毛を乾かすには数分かかってしまうため、映画『ブレードランナー』の世界のドライヤーにはまだ追いついていないよう。
6、ネオン広告はむしろ古い
『ブレードランナー』の中でも象徴的だとされているビルのデジタル広告やネオンサインは、現在では普及しきってもう目新しいものではなくなった。
デジタル広告の画素数は年々上がり、非常に美しいものになっているものの、大枠で考えるとさほど変わりないと言ってもいいだろう。
また、ネオンサインに関しては最近では減少傾向にある。時代の流れから、ネオンサインを製造する会社がどんどん減って、ガラス管を加工する職人も少なくなっているそう。現在では、ネオンサインに代わってLED照明などが使われることが多い。
ちなみに『ブレードランナー』で使われていた「柄が光っている傘」は、検索すると通販ショップなどで購入することができる。梅雨の季節にこの傘を使えば、簡単に『ブレードランナー』の住民の気分が味わえるかも。
2019年を舞台にしたSF作品は、『ブレードランナー』だけではない。なんと、日本のSFアニメーション作品『AKIRA』の舞台設定も2019年。昔の人は、2019年に対して大きな夢を抱いていたのかもしれない。(フロントロウ編集部)