ケイト・マッキノンがエレンの功績を涙声で祝福
2020年のゴールデン・グローブ賞で、テレビを通して業界と視聴者に強い影響を与えた人に贈られる特別賞のキャロル・バーネット賞がエレン・デジェネレスに授与され、エレンと同じくLGBTQ+のコメディアンであるケイト・マッキノンがプレゼンターとして登壇した。
バラエティ番組『サタデー・ナイト・ライブ』や映画『ゴーストバスターズ』などで知られるケイトは、マイクの前でジョークを交えながらこう話した。
「エレンのコメディ番組が人気絶頂だった1997年に、私は母の家の地下室にある鏡の前で筋トレをしながらこう自問していました。『私、ゲイなのかしら?』。結果的に、私はゲイでした。そして今もゲイです。ただ、それに気づくのは恐ろしいことなのです。(DNA検査サービスの)23andMeをやってエイリアンのDNAをもっていると知らされるのと同じようなもの。そんななか、その恐ろしさを緩和してくれたのはテレビに映るエレンでした。彼女は真実を話すために、自身の人生とキャリアを犠牲にしました。そしてその結果、ひどく苦しんだ。世の中の風潮は変わってきていますが、それは、エレンのような人が炎の中に飛び込んでくれたからです。私自身、エレンをテレビで見ていなかったら、『LGBTQの人はテレビには出られないから私にはテレビは無理』と思っていたでしょう。それだけでなく、自分がエイリアンであり、この世に存在すべきではないと思っていたかもしれません。だからエレン、私に幸せな人生を生きる機会をくれてありがとう」
最後には涙で声を震わせてエレンを称えたケイト。そんなケイトのスピーチを妻である俳優のポーシャ・デ・ロッシの隣で聞いていたエレンの目には、涙が浮かんでいるように見えた。
そしてステージにあがったエレンは、「この受賞の素晴らしいところは、来る前から自分が受賞することがわかっているところ。ここにいる多くの人たちのように、ドキドキしながら待たなくていいからね」などと一通りジョークを飛ばしたあと、こう続けた。
「みんなを笑わせて良い気分にさせること。私がしたいのはそれだけです。自分の番組を通して、誰かが良い一日を過ごせた、辛い経験や痛みを乗り越えられたと聞くことほど嬉しいことはありません。私にとってテレビの本当のパワーとは、皆が番組を見てくれることだけでなく、番組を見て、みんなが善い行いをしようとインスパイアされることなのです」
エレン・デジェネレスのカミングアウト騒動とは?
1994年に主演コメディ番組『エレン』が全米で放送スタートして大人気を博していたエレンは、1997年にレズビアンであることをカミングアウト。同年に番組内でも自身のキャラクターが同性愛者であることをカミングアウトし、同エピソードは、アメリカのテレビ史上初めて主人公がLGBTQ+であることをカミングアウトした番組のひとつとなった。
しかし当時、LGBTQ+コミュニティに対する世間の反応は今よりももっと厳しく、エレンはカミングアウトのせいでキャリアダウン。『エレン』は放送中止となり、エレンのキャリアは事実上抹殺された。さらに『エレン』のカミングアウト・エピソードに出演した俳優のローラ・ダーンにもなぜか批判が集まり、ローラは約2年も業界から干されたというから、当時の炎上ぶりが伺える。
そんなエレンだけれど、徐々に表舞台に復帰し、2003年に昼のトーク番組『エレンの部屋』が放送スタート。これが高視聴率番組となり、エレンは現在、アメリカで最も稼ぐ司会者のひとりとして活躍中。そして若い世代からは、キャリアを犠牲にしてまでLGBTQ+のために闘ったアイコンとして尊敬されている。
ちなみに、『エレン』のカミングアウト・エピソードで共演してそれぞれ業界から干されたエレンとローラは20年以上経った今でも親友同士で、2020年のゴールデン・グローブ賞でも立ち話して交流する姿が。ローラは映画『マリッジ・ストーリー』で映画部門の助演女優賞を受賞して、特別賞キャロル・バーネット賞を受賞したエレンと合わせて、第71回ゴールデン・グローブ賞では2人してトロフィーを持ち帰った。
(フロントロウ編集部)