ラッパーのリル・ナズ・X(Lil Nas X)がグラミー賞で見せた全身ピンクのド派手な衣装に難癖をつけ、同性愛嫌悪的発言をした同業者に爽快な“ひと言”を返した。(フロントロウ編集部)

ジェンダーレスな衣装に難癖

 マイリー・サイラスの父でカントリーシンガーのビリー・レイ・サイラスをフィーチャリングに迎えた異色のカントリーラップソング「オールド・タウン・ロード(Old Town Road)」が爆発的なヒットを記録し、一躍トップアーティストたちの仲間入りを果たした20歳のラッパー、リル・ナズ・Xは第62回グラミー賞で最優秀新人賞など主要3部門を含む6部門にノミネートされ、「最優秀ポップ・パフォーマンス(グループ)」、「最優秀ミュージック・ビデオ」を受賞した。

画像: グラミー賞のプレスルームでトロフィーを手にするリル・ナズ・X。

グラミー賞のプレスルームでトロフィーを手にするリル・ナズ・X。

 授賞式には、ヴェルサーチェ(Versace)の全身ネオンピンクのド派手なルックで登場して話題をさらったリル・ナズだが、同性愛をカミングアウトしている彼のジェンダーの枠にとらわれないファッションに、ベテランラッパーのパスター・トロイが難癖をつけた。

 パスターは、自身のインスタグラムにグラミー賞のレッドカーペットでのリル・ナズの写真をアップし、長文を投稿して同性愛嫌悪的なメッセージを投下。

 「俺はグラミーを獲れないはずだよな。だって、こんな格好しなくちゃいけないんだろ。ヤツらは子供たちにこういう概念を押しつけるのが大好きなんだ」と、グラミー賞の主催者たちがLGBTQ+コミュニティに有利に動いていると批判したうえで、近所のファミリーレストランで同性愛カップルがキスをしたりイチャついたりしているのを見た自身の14歳の息子が、彼らに対して嫌悪感を露わにしたことを誇りに思うといった主旨のコメントをした。

 「ヤツらは、男から、とくに黒人の男から”男らしさ“を奪おうとしている。みんな第3の目を開いて自分たちの息子に何が真実かをしっかり教えたほうがいい。さもないと、息子たちは本当にオールド・タウン・ロード(田舎道)を歩くことになるぜ!」と続けたパスターは、さらに「#NotMySons(俺の息子は違う)」、「#ItAintWorthIt(価値がない)」といった侮蔑的なハッシュタグを添えてメッセージを締めくくった。

画像: ラッパーのパスター・トロイ。

ラッパーのパスター・トロイ。


“俺流”な反撃

 近年、LGBTQ+コミュニティーへの理解を求める動きが活発化しているが、黒人社会ではいまだにLGBTQ+の人たちへの差別が根強く残っている。

 とくにヒップホップ界は、ショービズ界のなかでもLGBTQ+への風当たりが最も強く厳しい世界だと言われており、ブレイク直後に若くして堂々と同性愛をカミングアウトしたリル・ナズは、ある意味、異色の存在。

画像: “俺流”な反撃

 だからこそ、彼を新アイコンとして支持する人は多いが、そんなリル・ナズに対する今回のパスターの言動は、ヒップホップ界、そして、黒人社会に今も蔓延する悪しきステレオタイプや同性愛嫌悪を象徴するような出来事となった。

 パスターの反同性愛的思考が反映された投稿は大炎上し、その後削除されたが、ツイッターでは、彼のコメントのスクリーンショットが拡散され、たくさんのユーザーたちが議論を交わしている。

 そんななか、リル・ナズ本人が、パスターが使用したグラミー賞での写真を指して、こうひと言。

「あ~、この写真の俺、マジでカッコいい。マジで。」

 以前から、ヘイト(ディスや嫌悪コメント)に対して、あえてジョークを交えて返信している彼のコメントは、やはり爽快感抜群で、とことん彼流だった。

 さらに、リル・ナズは、パスターと彼の息子がファミレスでモッツアレラチーズを分け合っているゲイカップルを見て憤ったと綴ったことをからかい、中年女性が「私の見てるところではやめてちょうだい!」とヒステリックに怒鳴るインターネットミーム(※)を投稿して笑いを誘った。

※インターネット上で流行しているネタ動画や画像の総称。

(フロントロウ編集部)

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