『ジョーカー』のホアキン・フェニックスがアカデミー賞主演男優賞を受賞し、心からのメッセージを込めたスピーチで涙した。(フロントロウ編集部)

ホアキン・フェニックス、信念と涙のスピーチ

 2020年度の第92回アカデミー賞で、映画『ジョーカー』のホアキン・フェニックスが主演男優賞を受賞した。

画像1: ホアキン・フェニックス、信念と涙のスピーチ

 ホアキンは、『グラディエーター』や『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』、『her/世界でひとつの彼女』といった多くの作品で存在感のある演技を見せてきたけれど、じつはアカデミー賞受賞はこれが初。2012年には、映画のショーレースのシステムに悪態をついたこともあったホアキンだけれど、ついにオスカー像を手にしたことは感慨深い様子。スピーチでは、ホアキンの過去や信念など、心に持つ情熱を語った。

 「今、感謝でいっぱいです。この部屋にいる仲間の候補者より自分が優れているとは思いません。なぜなら私たちは同じ愛を共有しているのですから。映画への愛をね。(演技という)この形での表現は、私に並外れた人生を与えてくれました。もしそれがなかったら、私がどこに流れついていたか分かりません。

 しかし、私や映画業界の人々が与えられた最も偉大な贈り物は、声を持たない人々のために、声を上げられる機会があることでしょう。

 私たちすべてが直面している悲惨な問題について考えていました。私たちは、別々の社会的主張を擁護していると感じたり、感じさせられたりしているのではないでしょうか。しかし私には、すべてに共通項が見えます。性差別や人種差別、LGBTQ+の権利や先住民族の権利、そして動物の権利のどれについて話していたとしても、それは、不公平に対する闘いについて話しているのです。

 ひとつの国民、ひとつの人々、ひとつの人種、ひとつの性別、ひとつの種族が、権力を振るい、罪に問われることなく他者を利用して支配する、という考えに対する闘いについて話しているのです。

 私たちは、自然界から本当に切り離された存在になっていると思います。私たちの多くはエゴに満ちた世界観を持つという点で有罪であり、自分が世界の中心にいると信じています。私たちは自然界に侵入し、資源を略奪します。私たちは牛を人工的に受精させたうえで、彼女の赤ちゃんを奪う資格があると思っています。彼女の苦悩の鳴き声が明らかであるにもかかわらず。そして、彼女の子供のために用意されたミルクも奪い、コーヒーやシリアルに入れるのです。

 私たちは、個人的な変化を怖がっているのではないでしょうか。なぜなら、それによって何かを犠牲にし、何かを諦める必要があると考えるからです。しかし、人間とは創造的で独創的なものです。私たちは、創造し、発展し、全ての生物や環境に利益をもたらす変化のシステムを備えることができます。

 僕は長いこと、悪い奴でした。自己中で、時にイジワルだったし、一緒に働くのが難しいやつでした。でも、この会場にいる多くの人が、僕に2度目のチャンスをくれたことに感謝しています。そして、そういった時こそ私たちが本領を発揮できる時だと思います。つまり、お互いに助け合う時です。過去のミスを理由にお互いを抹殺する時ではなく、お互いに成長するのを助け、お互いに教えあい、お互いに償うための道しるべとなる時です。

 私の兄が17歳頃、彼はこの歌詞を書きました。『愛を持って人を助けよ。その末に平和がある』」

 スピーチの最後には、涙をこらえながら、ホアキンの兄で27年前に23歳で逝去した伝説の俳優リヴァー・フェニックスの言葉を引用して終えたホアキン。

 ヴィーガンであるホアキンは、動物の権利や環境問題に熱心であり、最優秀主演男優賞を受賞したSAGアワード(全米映画俳優組合賞)のアフターパーティーに参加せずに食肉処理場の前で行なわれたプロテストに参加したり、気候変動対策デモに参加して身柄を拘束されたりしてきた。

 畜産業に対しては、家畜のための森林伐採や、家畜自体が大量のメタンを排出をしていることなどから、動物の権利の観点からだけでなく、環境問題の観点からもヴィーガンやベジタリアンになる人も多い。

 地球のために生きる信念を持つホアキンだからこそ、多くの利己的な差別に対抗する熱い思いを人々に送った。

画像2: ホアキン・フェニックス、信念と涙のスピーチ

 また、『ジョーカー』の撮影現場ではこだわりの強いホアキンをトッド・フィリップス監督が全面的にサポートしていたことが明らかになっており、若く未熟だった自分が時を経て成功したことで、友人・知人への感謝やサポートの気持ちを述べずにはいられなかったよう。

画像: ホアキンとリヴァーの母ハート・フェニックスと。

ホアキンとリヴァーの母ハート・フェニックスと。

 ちなみに、ホアキンの兄リヴァーは、ホアキンが子供の頃に俳優の道へ進むよう言い、ホアキンは俳優として成功すると予言していたことを、ホアキン本人が過去に明かしている。(フロントロウ編集部)

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