政治を動かす映画のパワー
『パラサイト 半地下の家族』はポン・ジュノ監督の韓国映画。カンヌ国際映画祭の最高賞のパルムドール、アカデミー作品賞、ゴールデン・グローブ外国語映画賞など、多くのアワードを制した傑作として、世界中で話題を集めている。
タイトルにもある「半地下」とは、韓国の社会問題にもなっている劣悪な住環境の賃貸物件で、人口の約2%に当たる38万3千世帯が住んでいる。
もともとは、北朝鮮からの攻撃を想定したシェルターとして作られたものの、住宅の不足から、格安で貸し出されるように。
半地下で暮らす住民の多くは、カビや湿気、プライバシー侵害、犯罪、悪臭などの問題を抱えているうえ、映画でも登場したように、部屋の半分が水道管よりも低い場所にあるため水道の水圧が低く、トイレが逆流しないよう部屋の一番高いところにあるため衛生面が心配されるなど、住居として多くの問題を抱える。
大雨による水害も深刻で、地面より低い位置にある半地下の部屋は真っ先に浸水。甚大な被害を受けてしまうにもかかわらず、その生活から逃れることはできない貧困問題が、国民に重くのしかかっている。
そんななかで公開された『パラサイト 半地下の家族』は、ソウル市政府を動かした。
『パラサイト』が鳴らした警鐘を政府がキャッチ
韓国全土にある半地下の住宅の約59.5%はソウルにある。
韓国政府は、『パラサイト 半地下の家族』が描き出した国の実情を重く受け止めてか、首都ソウル市内の半地下に住む約1,500世帯の生活改善のために、1世帯当たり最大320万ウォン(約30万円)の助成金をだすと発表した。
市で進行中の、古いアパートを修復するプロジェクトの一環として、半地下のアパートは自治体と財団からの財政支援において優先されると、米The Korea Heraldが伝えている。
しかし、ソウル市内で半地下に暮らすのは約24万世帯。助成を受けられない世帯と受けられる世帯の間で、また「格差」が生まれてしまうことが心配されている。(フロントロウ編集部)