猛威を振るう新型コロナウイルス、映画産業にまで影響
呼吸器系疾患の原因となる新型コロナウイルスは、2019年末に発生し、現在世界では約9万人の罹患者、約3千人の死者を出す脅威となっている。
新型コロナウイルス発生源とされる中国は、感染拡大を防ぐため数週間にわたって映画館を閉鎖。さらに、感染者の増加が止まらないイタリアや韓国、そして映画市場規模が世界で3番目に大きい日本でも、映画鑑賞に大きな影響が出始めている。
中国の映画産業、2,200億円の損失
映画市場の規模が世界2位の中国は、約7万の映画館がいまだ閉鎖状態。中国で最も映画産業が盛り上がる旧正月の時期に公開予定だった多くの映画の公開が延期され、未だに新たな公開日のめどは立っていない。結果的に、旧正月の映画収益は約4.6億円だったという。昨年の同時期の収益は約1,930億円だった。
中国の映画業界の損失は2月末までに2,200億円(20億ドル)を超えるだろうと米Hollywood Reporterは伝えている。
韓国も大打撃、前年比マイナス80%
さらに、全世界で5番目に大きい市場である韓国での興行収入は、前年比マイナス80%。韓国映画委員会は、「2015年のMARSの時より遥かに悪い」「MARSのときは40%ほど観客は減ったが、劇場の封鎖はなく、約1ヶ月で市場は完全に回復した」「(回復の)見通しは全くついていない」と語り、現在の苦しい状況を明かした。
韓国では、オスカー4冠を獲得したポン・ジュノ監督の作品『パラサイト 半地下の家族』の白黒映画バージョンが公開予定だったが、これも延期となっている。
収束の見通しつかず、落ち込む世界の映画業界
イタリアでは、現在全ての映画館の半分が閉鎖。イタリア当局によると、閉鎖後初の週末の収益が、前年に比べて76%減少した。伊産業協会ANICAの会長フランチェスコ・ルテリによると、コロナウイルス蔓延前の興行収入は2019年1月よりも22%高かったという。
日本国内においても、大人気フランチャイズ『映画ドラえもん のび太の新恐竜』やディズニー実写映画『ムーラン』など様々な大作映画が延期、プロモーションで来日予定だった俳優の舞台挨拶や、国内映画のプレミアも中止という状態。大手シネコンでは、前売り券を買ったものの映画館に行きたくないという観客のために、通常は行われていないチケットの払い戻しの措置などを行なっている。
また、新型コロナウイルスはアジア諸国だけでなく、ヨーロッパや中東にも徐々に広がりを見せており、世界的な映画産業の損失は既に5,500億円(50億ドル)にも達していると米Hollywood Reporterは報じている。(フロントロウ編集部)