マーベル映画『ブラックパンサー』を見に行くと知った子供達が、喜びすぎてダンス。『ブラックパンサー』が持つ、“ただの映画以上の価値”って?(フロントロウ編集部)

『ブラックパンサー』に生徒たち大興奮

 2018年に公開されたマーベル映画『ブラックパンサー』は、2019年に『アベンジャーズ/エンドゲーム』が公開されるまで歴代ヒーロー映画の中で全米1位の興行収入を誇り、現在でも、ヒーロー映画における世界での興行収入ランキングで『アベンジャーズ』シリーズ4作品に次いで5位という記録を残している。

 とくに、マーベル史上初の黒人ヒーローが主役であり、その他のキャストや、制作陣も、ほとんどが黒人だったことで注目を集めた。そんな作品に対して、もちろんワクワクしてしまうのが子供たち。そこで、アメリカのアトランタにある非営利の学校であるThe Ron Clark Academyでは、子供達にあるサプライズプレゼントを贈ることに。それは、学校遠足で『ブラックパンサー』を見に行くこと! 満を持して先生が生徒にそのこと伝えると…?

 生徒たち、全員総立ちで喜びのダンス! 机の上にデジタルデバイスが置いてあるにもかかわらず、興奮が抑えきれず椅子や机の上にあがってキレッキレの踊りを見せる子供達の様子には、多くの大人も笑顔になった。『ブラックパンサー』が子供達にとってどれだけ価値のあるものなのかを示したこの動画は、主演のチャドウィック・ボーズマンの元にも届くほど拡散され、チャドウィックも自身のツイッターで動画をシェアしていた。

ただのヒーロー映画というだけじゃない価値

 『ブラックパンサー』がここまで高く評価されている理由には、これまでの歴史上多くの作品や広告などが、黒人キャラクターがいなかったり、黒人に対するステレオタイプを描いたりしてきたことに対して、変化をもたらしたことにある。ジャーナリストのジャミル・スミス氏は、米Timeへ寄稿した記事のなかで、「自分が映画館で初めて見た映画には、黒人のヒーローがいたことを覚えている」と思い出しながら、広告で黒人がいないことが子供に与える問題点を指摘した。

「もしあなたが白人であれば、メディアの中で自分のような(人種の)人を見ることは、そこまで思いを馳せるようなことではないでしょう。毎日起きている文化の中では、あなただけでなく、あなたがなれる数えきれないタイプの人々を映しています。幹部や詩人、清掃員や兵士、看護師などなど。世界は、あなたの可能性は無限だと言っているのでしょう」

画像1: ⓒMARVEL STUDIOS/WALT DISNEY PICTURES / Album/Newscom

ⓒMARVEL STUDIOS/WALT DISNEY PICTURES / Album/Newscom

 映画やドラマ、広告の影響力は大きい。人種や性別など、自分と同じものを持ったキャラクターが、様々な生き方をしているのを見られないことは、黒人の子供達が持つ可能性をつぶしていると指摘したスミス氏。彼はさらに、そういった多様性のなさは、当事者“以外”にも影響していると語った。

「白人でない私たちは、メディアや公共物の中に自分たちを表現しているものを見つけることに日々苦労しているだけでなく、私たちの人柄は様々だという表現を見つけるのにも困難を感じています。スクリーンの中のキャラクターたちが自分たちに似ていることは、私たちが、自分たちの存在は認識されていて、理解されていると感じるためだけでなく、私たちを見て理解する必要がある他の人々にとっても不可欠なことです。もしそれが起きないのであれば、私達はみんな、それをできないでしょう」

 『ブラックパンサー』は、白人に対抗する黒人というカタチではなく、黒人の黒人による新しい世界観を表現したとして評価するファンが多い作品。制作陣に当事者が多いからこそ表現できた、新しく、しかしリアルな世界観からは、多くの人が学ぶことができる。

画像2: ⓒMARVEL STUDIOS/WALT DISNEY PICTURES / Album/Newscom

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アメリカにおける黒人差別

 アメリカでは、2017年時点で3億2,600万の人口が記録されており、そのうち4,100万人以上が黒人。しかし、歴史的に差別を受けてきた黒人は、2010年時点で27.4%が貧困に陥っており、6歳以下で貧困状態で暮らしている子供は、なんと45.8%にのぼる。

 また、2015年と2016年の映画の祭典アカデミー賞では、主演・助演俳優賞で黒人が1人もいなかったことから、OscarsSoWhite(オスカーは真っ白)というハッシュタグがインターネット上で拡散されたほど。その後数年は少し改善が見られたけれど、2020年のアカデミー賞では、アジア映画『パラサイト』が最多受賞になったとはいえ、ノミネーションリストでは、ふたたびほとんどが白人となった。

 まだまだ改善が求められるハリウッドだけれど、『ブラックパンサー』の続編は制作中。『ブラックパンサー2』は、2022年5月6日に全米で公開予定。(フロントロウ編集部) 

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