米ペンシルバニア州で運行中の路線バスから、マスクを着用せずに乗車した男性客が複数名の警官により力ずくでバスから強制退去させられた。その時の様子を収めた動画が波紋を呼んでいる。

「マスク無し乗客」を強制降車

 ベンシルバニア州の州都フィラデルフィアで、路線バスに乗車した男性客がマスクを着用していなかったことを理由に、降車するよう警告を受けたが、直ちに従わなかったため、その後、駆けつけた警察官により、力ずくで下車させられるという出来事があった。

 一般利用客から成るフィラデルフィア交通機関利用組合のツイッターが、ほかの利用客が撮影した、警官たちが数人がかりで1人の男性をバスから引きずり降ろす様子が映った動画を公開。この映像がSNS上で拡散されると、警察の荒々しい対応に非難が殺到した。

 男性は逮捕はされていないが、フィラデルフィア市警は、この件に関して現在捜査を行っていると現地メディアThe Philadelphia Inquirerに話している。

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、アメリカ各地で、市民たちに外出時や交通機関利用時のマスクの着用が要請されるなか、問題が起きたバスを運行する南東ペンシルべニア交通局(SEPTA)も、現地保健局の方針に習って4月9日から利用者たちに対してマスクの着用、もしくは、布などで口元を覆うことを要求。

 しかし、事前に充分な告知が行き届いておらず、翌日10日には、マスクを着用せずに乗車してしまった利用客が多数いた。

 そういった乗客たちに対し、SEPTAの職員である運転手が「マスクをしていない方は公共交通機関の利用はできません」と車内に乗り込み警告。厳しい口調で「そこの男性、降りてください!」、「あなたも、あなたも、あなたも降りなくてはなりません」と降車を促す模様を撮影した動画も、同じくフィラデルフィア交通機関利用組合で公開された。


ルール緩和へ、乗車禁止措置は行わず

 警察の力ずくの介入や事前の告知不足に批判が集中すると、SEPTAはマスク着用に関するルールを緩和。

 同局のウェブサイトには「ほかの乗客や運行スタッフの安全のため、乗客の皆さまにはマスクの着用もしくは、顔を覆っていただくよう要請します。どうか、ご自身と他者を守るためにこのルールに従ってください」との記載があるが、マスク着用は強制ではなく、今後は乗車禁止や強制降車の措置は行わないことを明らかにしている。

 アメリカでは、ミシガン州デトロイトでバス運転手として勤務し、SNSを通じて「乗客が口元を覆わずに咳をしている」と不安を漏らしていた男性が新型コロナウイルスに感染し、その後死亡するという事例が起きた。

 SEPTAのマスク着用に関する厳しいルールは、あくまでも乗客や社員を守るために決められたものだが、同社の広報は「我々は、市民の皆さんに(マスク着用に関するルールについての)十分な告知ができておりませんでした」と、方針の施行の仕方に問題があったことを認めている。(フロントロウ編集部)

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