映画『スター・ウォーズ』シリーズの俳優ジョン・ボイエガが黒人に対する人種差別に抗議するデモの最前線でスピーチを行なった。「教科書に載ってもおかしくない」とたくさんの人の心に響いている演説の内容を和訳。(フロントロウ編集部)

黒人男性殺害の元白人警官により厳しい罪

 アメリカ・ミネソタ州で偽造紙幣を使用した疑い(※)で警察に通報され、駆けつけた白人警官によって路上で約9分間も首元を膝で圧迫され続けたことにより命を奪われたアフリカ系アメリカ人男性ジョージ・フロイド。

※その後フロイド氏が使用した紙幣は本物だったことが判っている。

 その様子を通行人が撮影した動画がSNSで拡散されたことが引き金となり、それまで抑圧されてきた黒人コミュニティと、彼らを支持する人々が、アメリカ各地をはじめ、世界各国の都市で,
連日、人種差別に抗議する抗議運動を繰り広げている。

画像: 黒人男性殺害の元白人警官により厳しい罪

 フロイド氏を殺害した張本人であるデレク・ショーヴィン容疑者は、事件後に懲戒免職となり、第3級殺人と第2級故殺の疑いで逮捕・起訴。米現地時間の6月3日には、ショーヴィン容疑者の逮捕容疑が第2級殺人に切り替わり、さらに、フロイド氏殺害の現場におり、同じく事件後に懲戒免職となった元警察官トウ・タオ、ジェイ・アレクサンダー・クェン、トーマス・レーンの3名も第2級殺人幇助、第2級故殺幇助の罪で起訴されることが米Star Tribuneが報じた法務長官の発表により明らかになった。

画像: デレク・ショーヴィン容疑者の逮捕写真。

デレク・ショーヴィン容疑者の逮捕写真。


ジョン・ボイエガがロンドンでのデモに参加

 少しずつ、警察側の譲歩ともとれる行動が見られている今回の事件だが、歴史上長きにわたって黒人に対する差別の横行を容認してきた警察の抜本的な体質改善を求める人々は、より明らかな変化の兆しが見えるまでは抗議運動の手を緩めるつもりはないよう。

 アメリカから遠く離れたイギリス・ロンドンにあるハイド・パークでも「#Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター/黒人の命も価値がある)」のスローガンを掲げた抗議運動が行なわれたが、そこには、映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』や『パシフィック・リム:アップライジング』への出演で知られる俳優のジョン・ボイエガの姿もあった。

画像: 拡声器を持って訴えるジョン。

拡声器を持って訴えるジョン。

 フロイド氏の事件が報じられた直後、ツイッターを通じて「僕は心から本当に差別主義者が大嫌いだ」と発言していたジョンは、この日、拡声器を握りしめ、集まった参加者たちに向けて涙ながらに演説。その模様はSNSで拡散され、「素晴らしいスピーチ」、「教科書に載せたいくらいだ」、「社会を変えようという頑なな姿勢が伝わってくる」と絶賛されている。

 フロントロウが重要部分を抜粋して和訳。

「今日はみんな、集まってくれてありがとう。僕たちへのサポートを表明してくれてありがとう。黒人のみなさん。僕はみんなを愛している。みなさんに感謝している。今日は重要な日だ。僕たちは自分の権利のために戦っている。自由に生きる能力のために戦っている。

 僕たちはジョージ・フロイドへのサポートを体現する存在だ。サンドラ・ブランド(※1)やトレイボン・マーティン(※2)、スティーブン・ローレンス(※3)へのサポートを体現している。

 僕は今、心の底からあなたたちに語りかけている。ああ、このあと僕はキャリアを失うかもしれない。でも、そんなものはクソくらえだ!

※1:2015年、米テキサス州ヒューストンで交通違反の取り締まり中に警官に反抗したとして逮捕され、留置施設の中で死亡した状態で発見された黒人の女性。

※2:2012年、米フロリダ州のサンフォードにおいて無実の罪を着せられ地元自警団ボランティアに射殺された17歳の黒人少年。

※3:1993年、英ロンドン南部でバスを待っていたところ白人少年グループに襲われ、刺殺された18歳の黒人男性。警察は人種を理由に当初適切な捜査を行なわなかった。

画像: ジョン・ボイエガがロンドンでのデモに参加

 今日は、目標を達成するために半分しか生きられなかった無実の人たちに捧げる日だ。もしジョージ・フロイドが生きていたら一体どんな事を成し遂げただろう。サンドラ・ブランドがもし生きていたら、どんな目標を実現できた? 僕らには知る由もない。でも、今日、僕たちは若い世代の子たちにとって、夢を実現することが決して非現実的な考えではないということを伝えなければならない。

 みなさんには、差別されることがどんなに辛いことかを理解してもらわなくちゃならない。毎日、自分の人種に価値が無いと思い知らされることがどんなに痛みを伴うかを理解してもらわなくちゃならない。だってそんなことは、これまでも、これからも事実無根なんだから。

 ここで、ジョンは、人権運動で影の力持ちとなっている黒人女性たちへの称賛と、黒人男性に対して、そんな女性たちをしっかりと守り、大切にするべきだと語り、より良い未来に必要な条件を提示するメッセージも口に。

「黒人男性のみなさん、僕たちは黒人女性たちを大切にしなくてはならない。彼女たちは私たちの心臓であり、未来なんだ。自分たちを悪者にしてはいけない。僕らこそが家族の柱なのだから。想像してみて欲しい。健康でコミュニケーションをしっかりととり、愛を持って子供たちを育て、一生懸命に生きている家庭によって築かれる国家は、善良な人間を生む可能性が高いはず。それこそが、僕たちが創り出さなくてはならないものだ。黒人男性のみなさん、すべては、あなたから始まる。僕たちはこれ以上ゴミなんかではいられない。そんなのは終わりだ。改善すべきなんだ」

 そして、ジョンはこんな印象的な言葉で、スピーチを締めくくった。

「黒人の命には、これまでだってずっと価値があった。僕たちはいつだって重要な存在だった。無意味なんかじゃなかった。いつだって前進してきた。そして、今こそ、その時だ。僕はもう待ったりはしない」

 ジョンが、まだまだ白人に優位とされる映画界における、この先の自分のキャリアをリスクに晒してまで行なった魂のスピーチの様子は、下記のツイート内の動画で見ることができる。

(フロントロウ編集部)

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