売れっ子俳優アダム・ドライバー
アダム・ドライバーは、映画『スター・ウォーズ』シリーズや『マリッジ・ストーリー』、『沈黙 -サイレンス-』、『ブラック・クランズマン』などの名作に次々と出演し、アカデミー賞主演男優賞ノミネート経験をもつ俳優。
アダムの出世作は、2012年に放送がスタートしたレナ・ダナム主演のドラマ『GIRLS/ガールズ』。アダムはレナのボーイフレンド役として注目を浴び、2013〜2015年の間、エミー賞助演男優賞にノミネートされ続けた。
その後、コーエン兄弟の映画『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』に出演し、2014年に出演した映画『ハングリー・ハーツ』ではヴェネツィア国際映画祭男優賞を受賞。それから彼は映画『スター・ウォーズ』シリーズで主役級の悪役、カイロ・レンを演じ、世界でその名を知られることになった。
そんな彼が俳優を志したきっかけは、軍を除隊されてしまったからだと知られている。アダムは、2001年に発生した9・11同時多発テロを機にアメリカの海兵隊へ入隊し、母国のために働きたいという使命感をもって訓練を積んでいたものの、入隊から2年8カ月が経過したときにマウンテンバイクの事故によって胸骨を脱臼。名誉除隊となってしまった挫折感をばねに俳優の世界に身を投じたと自ら発言をしていた。
しかし彼が初めて役者を志したのは、それよりもっと前の話だった。
18歳で俳優を志し、七転八倒
アダムはカリフォルニア州サンディエゴで生まれ、7歳からはアメリカ中西部のインディアナ州で幼少期を過ごした。そして18歳になったとき俳優に憧れてオーディションを受けようと決意。俳優を始めるにあたって、ニューヨークに行くかロサンゼルスに行くか迷っていたけれど、アダムの住んでいる土地からはニューヨークのほうが比較的近かったため、同地で有名な演技学校であるジュリアード音楽院を受験。
しかし、残念ながら不合格になってしまった彼は、今度はロサンゼルスに挑戦することに。家族、友人、ガールフレンドを残してリンカーン・タウンカーというセダンの車を買って、そこに小さい冷蔵庫、電子レンジなど生活必需品を積み込んで出発した。ちなみにニューヨークとロサンゼルスの距離は最短でも4,000キロ。
ところが彼の買った車はかなりオンボロの中古車で、距離にして約半分までいったテキサス州で故障し、その修理にかなりお金がかさんでしまったそう。さらに、やっとのことでロサンゼルスに着くと、今度は不動産業者にお金を騙し取られたことに気づく。せっかく憧れのハリウッドに到着したというのに、約1週間でお金はわずか2万円ほどに。計算してみると、ちょうど実家に帰るために必要なガス代と同じだったという。
アダムはその時のことを米New Yorkerのインタビューで振り返り、「負け犬の気分だった」とコメント。そして、アメリカで悲劇的な9.11同時多発テロが起こったのはちょうどその頃。アダムは自分の生まれた国を守りたいという一心で、俳優への夢を諦めて徴兵に参加したのだった。
今や名優の彼も、俳優を志した当初は壁にぶつかってばかりだった。そして、一度は別の道に進みながらも、ケガのせいで、結果的に俳優の道に戻ってきた。そう考えると、トラブルは少なくなかったとは言え、俳優業はアダムの運命だったのかもしれない。
そんな彼が出演しているジム・ジャームッシュ監督映画『デッド・ドント・ダイ』は2020年6月5日より日本全国公開中。(フロントロウ編集部)