大規模な人種差別抗議デモ「#Black Lives Matter」へのサポートを表明しているコスメブランドが急増しているなか、一部ではその活動に“違和感を覚える”との声も。自らもコスメブランドを手がける黒人女性起業家が指摘する問題点と、いまブランド側が本当にすべきこととは?(フロントロウ編集部)

デモに対する美容業界の動向

 全米から世界各国へと拡大している人種差別抗議デモ「#Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター/黒人の命も価値がある)」。

 多くのセレブや著名人たちが賛同を表明しているなか、各コスメブランドたちもBlack Lives Matter運動を支援する団体に寄付をしたり、SNS上で「#Blackout Tuesday」というハッシュタグをつけて、黒一色の投稿を行なうなどサポートの姿勢を示している。

画像: デモに対する美容業界の動向

 しかし、なかにはブランド側のあからさまな黒人へのサポートを強調する姿勢に、トレンドに便乗しているだけのPR活動ではないのかと、ある種の“違和感”を覚える人たちもいる。

 そんななか、ウーマ・ビューティー(Uoma Beauty)の創業者であるシャロン・チューターは、6月3日にインスタグラムを通じて、フォロワーたちに「#Pull Up or Shut Up Challenge」というチャレンジを提案。

 このチャレンジの内容は、各コスメブランド企業に対し、それぞれの企業で働いている従業員のうち「黒人の人数」を、72時間以内に公表するよう求めるというもの。

 ナイジェリア出身で、現在はロサンゼルスを拠点に活躍するシャロンは「あなたのお気に入りのブランドが、ブラックコミュニティへの支援について大胆なPRをしている。彼らの組織(本社およびサテライトオフィスのみ)に、何人の黒人従業員がいて、リーダーの役割には何人の黒人がいるのか、聞いてみて欲しい」と話し、フォロワーに対して「ブランド側がこれらの数字を公表するまで、72時間はいかなる商品も購入はしないで欲しい」とお願いしている。

なぜ、従業員の「人種構成」の開示を求めているのか?

 このチャレンジをシャロンが提案したきっかけは、アメリカの企業における黒人の代表や管理職、リーダーの職に就いている人が、いかに少ないかを意識してもらうため

 インスタグラムに投稿された動画で、シャロンは「私も含め、ほかのブラックコミュニティーの人たちは、Black Lives Matterへの支持を表明し、寄付を行ない、(Blackout Tuesdayで)ソーシャルメディアのコンテンツを中断してくれたブランドたちに心から感謝している」とコメント。

画像: ウーマ・ビューティー(Uoma Beauty)の創業者、シャロン・チューター

ウーマ・ビューティー(Uoma Beauty)の創業者、シャロン・チューター

 しかし、その一方で、多くのブランドが、長年ビジネス面で黒人を疎外し、抑圧してきたという背景を無視してはいけないと指摘。「(こういった背景から)これらの取り組みの多くは、単なるPR活動にすぎないかもしれない」と主張。

 シャロンは「ブランドは、黒人運動への寄付や巧みに作られたPR声明の陰に隠れて、この瞬間を乗り越え、いつも通りのビジネスを続けようとしている」と、ブランドの意思決定を行なう役職に“黒人”が携わっていない時点で、ブランド側がどんな活動をしていても、結局は今の状況を無傷で乗り切りたいだけの薄っぺらい活動であり、このままでは“本質”は変わらないと批判している

今こそ“本質”に迫るべきチャンス

 シャロンいわく、これは特定のコスメブランドを「総叩き」「炎上」させることが目的ではない。シャロンは「ブランドを名指ししたり、恥をかかせたりするつもりはない。ただ、すべてのブランドに対して、自社の慣行を見直すことを求めている」と発言。

 実際的な問題として、採用における人種差別と国籍差別は、いまだに根強く残っている。シャロンは「企業において、役職に就いている黒人の割合は全体の8%、管理職になると3%しかいない。さらに、フォーチュン・グローバル500(※)のCEOともなると、アメリカでこれらの職に就いている黒人は、たった4人しかいない」と指摘。

画像: 今こそ“本質”に迫るべきチャンス

※フォーチュン・グローバル500とは…米フォーチュン誌が毎年発表している、グローバル企業を対象とした総収益ランキング。

 また、人種に加えて、女性と男性の間でも“不平等さ”はあり、シャロンは「とくに、黒人女性が事業を拡大するために資金を求めているときでさえ、白人男性は220万ドル(約2億4,000万円)の融資が得られるのに対し、黒人女性は平均して42万ドル(約4,584万円)しか得られない」と、社会的立場における社会からの「信頼」にも、男女間で顕著な差異が見られると語った。

上辺だけの広報・PRではなく、“内側“からの変革を

 人種差別について活発に議論されている今こそ、表面を取り繕うのではなく、これを機にブランド側も体制を見直すべきだと主張するシャロン。米メディアAllureで、このようなメッセージを送っている。

画像: 上辺だけの広報・PRではなく、“内側“からの変革を

「まず社内を見回してみて。一緒に仕事をしているチームに多様性がないのに、どのようにして包括的になり、世界の他の国々を代表するようなことができるというの? 社内を見回して、それ(人種間の差異)を正すことができれば、物事は現実のものになり始める。なぜなら、自分が何かを行なうときに、その状況を把握できるだけの人数がその場にいれば、間違いが起きる前に止めてくれるはずだから」

黒人を採用することが、業界をより良くする

 米WWDの調査によると、黒人女性は化粧品に年間約75億ドルも費やしており、これは一般女性に比べて化粧品に80%、スキンケアに2倍の金額を支払っている。

  そのため、黒人女性に重要なポストを与えることは、ビジネス面において有益であり、至極真っ当で合理的であることに気づいて欲しいとシャロンは言う。

画像: 黒人を採用することが、業界をより良くする

 黒人の大半は依然として貧困にあえぎ、白人との経済格差は広がるばかり。人々に美しさと自信をもたらしてくれる“化粧品“や”コスメ“を作っていく業界だからこそ、これを機にポジティヴな変化が生まれることを願う。(フロントロウ編集部)

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