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映画『インセプション』の劇中歌であるエディット・ピアフによる「水に流して(Non,je ne regrette rien)」の歌詞って知ってた?(フロントロウ編集部)

緻密なストーリーでファンが多い『インセプション』

 2010年に公開された映画『インセプション』といえば、時間軸をバラバラにし、夢の世界なのか現実なのかを混乱させるクリストファー・ノーラン監督らしいストーリーと、そのストーリーを見事に視覚化した迫力の映像で、多くの映画ファンから高い評価を得ている。

 本作の主人公は、レオナルド・ディカプリオ演じるコブ。人の頭の中に潜り込み、潜在意識から情報を抜き出していたコブは、サイトーという男から、「インセプション」という名の仕事を依頼される。仲間となる精鋭たちを集め、仕事を遂行しようとするコブたちだけれど…。 

劇中歌の歌詞にメッセージ性

 階層化された人の夢の中を潜っていくという難しい設定の本作で、物語の主人公であるコブの弱点といえば、亡くなった妻のモル。夢の中で幾度となくコブはその存在に惑わされてしまう。映画の最後では、そんなコブが夢のなかに取り残されたのか、現実に戻ってきたのかを探るけれど…?

画像: ⓒWARNER BROSS PICTURES/SYNCOPY/LEGENDARY PICTURES / MOSELEY, MELISSA / Album/Newscom

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 様々な解釈が可能な本作だけれど、海外ファンの間では、その劇中歌の歌詞に注目する人が多い。コブが夢から覚める時にかかる音楽とはいえば、フランスを代表するシャンソン歌手のエディット・ピアフによる「水に流して(Non, je ne regrette rien)」。直訳すると、「後悔もない」という意味の曲の歌詞を、美艇香津氏の訳から一部抜粋する。

「思い出は燃やした/悲しみ 喜びも/もう要らないの
愛も捨てた/震える気持ちも/すっかりさよなら/ゼロから始める」

 読めば分かる通り、この歌詞、まるでコブがモルの影から立ち直ったことを示唆するかのような内容。この音楽は本編を通して使用されているので、ラストシーンの真相までは推測できないけれど、多くの海外映画ファンが、この歌詞はコブの人生を示しているのではないかと見ている。

テーマ曲にも緻密な仕掛けが

 またエディット・ピアフといえば、2007年の映画『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』で、マリオン・コティヤールが演じ、米国アカデミー賞や英国アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞まで総なめにした。そんなマリオンといえば、そう、コブの妻モルを演じたのも彼女。この主題歌は企画段階から決まっていたそうで、マリオンが映画に参加することになったのは、運命的な配役だったよう。

 ちなみに、本作のテーマ曲は「水に流して」をスロー再生して作り出されたもの。『インセプション』では、夢の中で時間の流れが現実の20分の1になるので、その設定を音楽にも活かしている。

 ノーラン監督は、「水に流して」をアレンジして夢の中で聞くような音楽を作って欲しいとだけリクエストし、作曲家のハンス・ジマーに仕事を依頼したことをプレスカンファレンスで明かしている。ノーラン監督の希望を汲み取り、見事音楽を完成させたハンスは、『インセプション』の音楽によって、第83回アカデミー賞最優秀作曲賞へノミネートされた。(フロントロウ編集部)

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