高い評価を得ている1989年版『バットマン』
DCコミックスのスーパーヒーローであるバットマンは、これまで多くの映画の主役として起用されており、大ヒットしたものや酷評に終わったもの、コメディテイストなものからシリアスなものまで、数多くの映画が存在する。
歴代のバットマン映画で高い評価を受けた作品といえば、最近のものであればクリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』3部作を思いつく人も多いけれど、アメコミキャラクターのバットマンをより現実的な世界観に落とし込んだ1989年公開の『バットマン』も根強い人気を博す。
本作は、その独特な世界観で有名なティム・バートンが監督を務め、主演にマイケル・キートン、そして悪役のジョーカーにオスカー俳優のジャック・ニコルソンを起用したことが大きな話題となった。そしてヒロインのヴィッキーには、その数年後にオスカー俳優となるキム・ベイシンガーを抜擢した。
バットモービルのために日本製品を輸入
本作では、バートン監督の頭の中の想像図を忠実に再現したと言えるセットや美術も魅力のひとつ。事実、第62回アカデミー賞の最優秀美術賞は、本作のピーター・ヤングとアントン・ファーストの手に渡った。
そんな『バットマン』の美術チームが力を入れたものと言えば、もちろんバットモービル。バットマンが乗りこなす世界に唯一の車は、その艶やかな黒の車体が光りを放つ。そんなバットモービルの塗料は、じつは日本からわざわざ輸入されたもの。
「フリップフロップ」と呼ばれる塗料は、ピーターによると、「吹きかけたら一方は紫に見え、他方は黒と少しの青に見える」とのことで、それがバットモービルの雰囲気を作り出したという。しかしその塗料には、ひとつ問題が。それは、非常にもろいということ。
キム・ベイシンガーの不可解な行動
そんな塗料が原因で、ファンが「?」と思ったあのシーンが作り出されることとなった。それは、ヴィッキーがバットモービルから降りるシーン。
そう、なぜかヴィッキーはこの時、靴を脱いでいる。物語に影響はないので、気にせずスルーしたファンも多いけれど、よくよく考えると、なぜ?となるこのシーン。これ、じつは塗料が原因だったそう。というもの、ヴィッキーが降りる時に靴を履いていると、毎回塗料が削れてしまったという。暗いシーンで、カメラも至近距離ではなことから、正直少し削られても問題はないように思えるけれど、アカデミー賞を受賞したデザイナーたちのこだわりは本物。結果的にキムが靴を脱ぐことになった。
海の向こうからも資材を集めるほどのこだわりとプライドを持った美術チームがいたからこそ、本作のクオリティは高いものになったよう。(フロントロウ編集部)