日本の東京ディズニーランドにもある人気アトラクションの「スプラッシュ・マウンテン」に改変を求める声が上がっている。一体何が問題? (フロントロウ編集部)

「スプラッシュ・マウンテン」に改変を望む声

 ウォルト・ディズニー・カンパニーが運営するテーマパークのうち、アメリカ・カリフォルニア州にあるディズニーランド・リゾート内のディズニーランド、アメリカ・フロリダ州ウォルト・ディズニー・ワールド内のマジックキングダム、そして日本の東京ディズニーリゾート内にある東京ディズニーランドの3つのパークに存在する人気アトラクション「スプラッシュ・マウンテン」。

 丸太のボートに乗って沼地を流れていき、最後にはスプラッシュ・マウンテンの頂上から滝つぼに向かって急降下するという、ワクワクとドキドキが融合したこのアトラクションは、東京ディズニーランドでも絶対にハズせない乗り物として、つねに長蛇の列ができている。

画像: カリフォルニアのディズニーランドで息子&ボディーガードとスプラッシュ・マウンテンを楽しむシンガーのブリトニー・スピアーズ。(2015年撮影)

カリフォルニアのディズニーランドで息子&ボディーガードとスプラッシュ・マウンテンを楽しむシンガーのブリトニー・スピアーズ。(2015年撮影)

 東京ディズニーランドには1992年10月にオープンした、このスプラッシュ・マウンテンに、最近になり、改変を求める声が急増している。


「ブラック・ライヴズ・マター」の影響

 その背景にあるのは、全米および世界各国で広まっている、黒人に対する人種差別の撤廃を訴える抗議運動。「ブラック・ライヴズ・マター(Black Lives Matter/黒人の命にも価値がある)」をスローガンに掲げたこのムーブメントは、エンターテイメント業界にも大きな影響を及ぼしており、人種差別的もしくは、黒人の歴史や文化などに関して人々に誤解を与えかねない表現を含む過去の映像作品などにも、いま一度、懐疑的な目が向けられるきっかけに。

画像: 「ブラック・ライヴズ・マター」の影響

 アカデミー賞で作品賞を含む8部門を獲得し、ハリウッド映画の古典として知られる映画『風とともに去りぬ』(1939年)も、黒人描写や奴隷制の肯定などが長きにわたって物議を醸してきたが、今回の「ブラック・ライヴズ・マター」の追い風を受けて、米HBO MAXが配信停止の措置を決定した。

画像: © M.G.M / Album/Newscom

© M.G.M / Album/Newscom


“ディズニー映画史上最も悪名高い作品”がモデルに

 スプラッシュ・マウンテンのモデルとなっている1946年公開のディズニー映画『南部の唄』も、昔から黒人描写に関して批判の声が絶えなかった作品。

 1880年に刊行された小説を原作とする、実写とアニメーションを組み合わせた同作は、白人の少年ジョニーと農場で働く黒人のリーマスおじさんとの交流が描かれた、愉快でほのぼのとしたストーリーだが、奴隷制の影響が色濃く残っていた当時のアメリカでは、白人と黒人が対等に交流することはありえなかったため、「白人と黒人の仲が良い」という設定が現実とあまりにもかけ離れていると批判が殺到した。

画像: ©LMPC/ Getty Images

©LMPC/ Getty Images

 全米黒人地位向上協会(NAACP)が抗議を起こしたこともあり、ディズニー側の自主規制により、1986年以降、アメリカでは1度も再公開されておらず、ディズニのストリーミングサービス「ディズニープラス(Disney+)」でも、もちろん配信されていない。

 「ブラック・ライブズ・マター」の流れを受けて、『南部の唄』がツイッターでトレンド入りするなか、「ディズニー映画史上最も悪名高い作品」とも呼ばれている、実質、“お蔵入り”となった同作の世界観を表現したスプラッシュ・マウンテンが、そのままの状態で運行を続けているのはおかしいという意見が続出。内容を改変するべきだと議論が交わされている。


『プリンセスと魔法のキス』をモデルに?

 そんななか、持ち上がったのが、スプラッシュ・マウンテンをディズニーアニメ『プリンセスと魔法のキス』(2009年公開)の世界観をテーマにしたアトラクションに改変したらどうかというアイディア。

 同作は、ディズニーアニメ史上初めての黒人(アフリカ系アメリカ人)のプリンセスであるティアナを主人公とした作品としても知られている。

画像: © JOHN MUSKER/UPI/Newscom

© JOHN MUSKER/UPI/Newscom

 ある熱心なディズニーファンが、『プリンセスと魔法のキス』に登場するさまざまなシーンのスクリーンショットとともに、独自に考えた改変プランをツイッターで紹介。

 これが、名案だと多くのユーザーたちから支持され、なんと、実際に『プリンセスと魔法のキス』をテーマにしてスプラッシュ・マウンテンを生まれ変わらせて欲しいと、ウォルト・ディズニー・カンパニーにお願いする嘆願署名までスタートした。オンライン署名サイトChange.orgでは、記事執筆時点ですでに8700件以上の署名が集まっている。

 作家E.D.ベイカーの小説『カエルになったお姫様』をベースに、ルイジアナ州南部のニューオーリンズを舞台に描かれた『プリンセスと魔法のキス』に関しても、一部の黒人コミュニティから「当時あった人種差別などが描かれていない」などと批判が上がった経緯があるが、はたして、ファン発のこのアイディアはディズニーに採用される? そして、人種差別撤廃運動の後押しを受けて、スプラッシュ・マウンテンは刷新されることとなるのだろうか? (フロントロウ編集部)

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