アルバム『クロマティカ』のセールスが好調なガガが、ヴァーチャル卒業式「Dear Class of 2020」に登場。約7分におよんだスピーチを全訳。(フロントロウ編集部)

レディー・ガガがヴァーチャル卒業式に登場

 レディー・ガガが5月29日にリリースしたアルバム『クロマティカ』は、全米・全英チャート共に初登場1位を獲得し、大ヒットを記録。ガガはアルバムのプロモーションを一時中断し、現在、自身のSNSなどを通して、『クロマティカ』のメッセージでもある“世界中には様々な人がいて、その人の数だけ、みんな違うのは当然のこと。私たち人間は、思いやりを持って、お互いに優しく接するべきだ”と世の中に、日々発信し続けている。

 そんなガガが、新型コロナウイルスの影響で卒業式がキャンセルになった2020年度の卒業生のために、YouTubeが開催したヴァーチャル卒業式「Dear Class of 2020」に登場。約7分間に渡るスピーチの中でガガは、今起きている人種差別問題を“森”に例えてスピーチ。その全訳を紹介。

全国の卒業生の皆さん、こんにちは。レディー・ガガです。 私は2週間前、皆さんが卒業という素晴らしい業績を成し遂げたことをお祝いするため、別のスピーチを録画したのですが、その内容は今回とは大きく異なるものでした。

その時の祝辞では、世界中に今年、甚大な被害と混乱をもたらしてきた新型コロナウイルスのパンデミックという共通体験に触れ、前途有望な人生において、皆さんが次なる一歩を踏み出すに当たり、“思いやり”を広める力を持った人となることがどれほど重要であるかについて、語っていました。

ジョージ・フロイドさんが殺され、続いて、この国の警察による不当な暴力行為と構造的な人種差別に対する抗議活動が巻き起こったのは、その祝辞を録画した後のことでした。 私の当初の卒業祝辞スピーチは、今現在この国に最も必要なものと、直接の関連はないかもしれません。ですが私は今日、改めて皆さんにこうお伝えしたいと思います。

世の中に悲しむべきことはたくさんある。けれども、祝うべきこともまた、たくさんあるのだと。

今、皆さんが目の当たりにしているのは、この国の進化にとって極めて重要な転機の瞬間です。社会が重要な意味で根本から変化するところを、皆さんは目にしているのです。 この変化には時間がかかることでしょう。私たちは根気強く取り組まなくてはなりません。けれども、変化は必ず起きます。より良い方向へと変わるはずです。 今回、祝辞を書き直しながら、アメリカにおける人種差別について、自分なりの考えを私は自問しました。

黒人社会を際限なく苦しめてきた構造的な抑圧や肉体的・精神的暴力に対して感じる怒りについて見つめ直した時、私の脳裏に浮かんだのは大自然でした。

アメリカにおける人種差別について考える時、私が思い描くのは、広大な森です。その森に生い繁っているのは、背の高い木々。この国の誕生と同じくらい昔からある木々。人種差別主義という種から育った木々。偏見という枝々を伸ばし、抑圧の葉を茂らせた木々。その曲がりくねった根は、土壌深く埋まり、複雑に絡み合い、もつれ合いながら成長し、しっかり張り巡らされているため、私たちがその仕組みをはっきり理解しようとしても、跳ね返されてしまうのです。

この森が、私たちの住んでいる場所です。この森は、私たち自身です。この森は、一つの社会として、私たちが何世紀にもわたって支え続け勢いづかせ続けてきた、道徳と価値体系なのです。 この国の人種差別主義を私が自然に例えて説明しているのは、それが自然と同じくらい国の隅々まで行き渡っていて、同じくらい現実的なものだからです。光が触れるところ全てに、そういった側面があります。けれども今この瞬間、私たち全員が、そのような仕組みに異議を唱え、実際の変化をもたらすにはどうすればいいか、考えるよう求められているのです。

その変化をこれから起こす人々が、今、私の話に耳を傾けてくれている。私はそう心から信じています。間違いありません。なぜなら皆さんこそが、未来を育む種だからです。皆さんという種は、やがて新しい、これまでとは異なる森へと成長するでしょう。それは私たちが現在住んでいる森よりも、はるかに美しく、愛情に満ちた森となるはずです。 人種差別という病を根絶するために進むべき道。その拠り所として3つの指針があると、私は信じています。その指針は、私の信念や自然に対する考え方の基盤をなしていると同時に、人類が目指すべきものであると、私は考えています。

その3つとは、“時間”、“十分な努力”、そして“神の恵み”。森を新たに植え替えるには、この3つが必要です。国全体が一つとなり、人々が心癒され、触発され、本気で取り組むことにより、変異した種から生まれた森が、創意に富んだ新しい方法と“天の配剤”によって育まれていく。

母なる自然を通じ、天は思いやりに満ちた声で私たちに語りかけてくれるのです。 “時間”と“十分な努力”をどう注ぐかは、私たち次第です。“神の恵み”は、私たちに左右できることではありません。ですが、“神の恵み”とは、信頼のことだと私は捉えています。私たちは自らの意志でお互いを信じ、愛情込めてお互いを健やかに育んでいくことができるはずです。

皆さんという美しい種は、素晴らしい贈り物に恵まれました。そう私は信じています。その贈り物とはつまり、この激動の時機、自らの道徳や、行動指針、そして価値観について、じっくりと考える機会、そしてその3つが、現在、そしてこの先の人生で迷いが生じた際に、皆さんをどう導いてくれるのかについて、見つめ直す機会のことです。 人の道徳、行動指針、価値観は、自分自身の心の底から生まれた、真正なものでなくてはならないと、私は今、確信しています。

あなたの行動指針は、あなたの本心から生まれたものでなくてはいけません。あなたの価値観は、あなたの頭で考えたものであるべきです。そしてあなたの道徳は、あなたという人間全体から引き出されたもの、あなたが愛情を込めて人類に寄せるものでなくてはなりません。 あなた自身の中から生まれたあなたなりの思いやりが、あなたの国際社会に対する貢献となるのです。

元々の祝辞で、私は次のような問いを投げかけていました。「常に優しくあるために必要なものとは?」と。おそらくそれは、今もなお意義を持つ問いではないでしょうか。皆さんが賢く才能に溢れていることは、今日という日を迎えたことで既に明らかですので、今更ながらかもしれませんが、この機会に敢えてそれを口にすることで、その答えを言い表したいと思います。

人は、困難なことでもやり遂げられます。皆さんは、困難なことでもやり遂げられるのです。この古い森を切り倒し、植え替えて、あなたが抱く理想を実現することができるのです。 時として、優しくあるのが難しい場合もあります。皆さんも、思いやりのないクラスメートや、友達、家族、見知らぬ人、世間の人々、学校の先生を、幾人か思い浮かべることができるに違いありません。あるいは皆さん自身が、不親切な行動をとったことさえあるかと思います。

ですが、たとえ思いやりのなさに接したことがあったとしても、困難なことをやり遂げる力が人から奪われるわけではありません。優しくあることが困難な場合もあり、時に思いやりに欠けた状況に置かれたとしても、それでも人々は困難を乗り越え、優しくなることができるからです。

皆さん、どうか思いやりを持ってください。今日皆さんに祝辞を贈るという、この大変名誉ある機会をいただき、私なりの理想を示したいと考え、これをお伝えしています。優しさについてお話をしていますが、とても重要な問題に直面した際、私には私なりの道徳や価値観、そして行動指針あるのだということを、皆さんとこうした瞬間を分かち合っている間にも、確かめているのです。

では今、私たちは何をすればいいのでしょうか? 私の答えは………“思いやり”を持つこと。シンプルですが、それが私なりの考えです。 私たちは今、いつも以上に、お互いに話し合いをしようと試みています。 共に話し合いましょう。ですが、皆さんがほぼ毎日教室でそうしてきたように、耳も傾けましょう。 他の人々に耳を傾けなければ、学ぶことはできません。 2020年の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。皆さんが作り上げる森を見るのを、楽しみにしています。

 これまでも平等を訴えてきたガガのスピーチは、多くの人の胸に響くものとなった。(フロントロウ編集部)

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