映画『マルコムX』や『ブラック・クランズマン』で知られる映画監督のスパイク・リー。彼が描く作品は、どれも強いメッセージ性に驚かされる。そんなスパイク・リー監督の人気作品を、米批評サイトRotten Tomatoesより上位10作品ご紹介。(フロントロウ編集部)

第10位『マルコムX』スコア:88%

 1992年に公開された、アメリカの黒人公民権運動活動家マルコム・Xの生涯を描いた著名な映画『マルコムX』が第10位に。攻撃的かつ活発なマルコム・Xを演じたのはアカデミー賞やゴールデン・グローブ賞など数々のアワードで受賞経験を持つデンゼル・ワシントン。本作はマルコム・Xの生前から取材が行なわれていた『マルコムX自伝』という書籍をもとに作られている。


第9位『ドゥ・ザ・ライト・シング』スコア:92%

 スパイク・リー監督初期の名作『ドゥ・ザ・ライト・シング』は1989年に公開された作品。当時貧しい黒人や様々な人種が多く住んでいた米ニューヨークのブルックリンを舞台に、人種差別と闘う若者の暴動の様子を描いた心えぐられる作品。スパイク・リーは本作で監督、脚本、制作の全てを担当した。


第8位『ザ・ファイブ・ブラッズ』スコア:92%

 スパイク・リーが監督、脚本、制作に携わりNetflixより配信された2020年の戦争映画。ベトナム戦争から帰還した4人の黒人兵士が、隊長の遺骨と埋蔵金をゲットするために再びベトナムを訪れるというストーリー。陽気な音楽や演出とは裏腹に、戦闘当時の記憶や恐ろしいジャングルが4人を強く苦しめる。そのギャップがスパイク・リー監督の持ち味の一つともいえる。


第7位『パス・オーバー』スコア:93%

 2018年公開の『パス・オーバー』は、現代の黒人男性2人が詩的なユーモアや人間らしさを交えながらだらだらと過ごす様子を映した映画。本作は、「ゴドー」と言う人物をひたすら待つ有名な不条理劇『ゴドーを待ちながら』のオマージュで作られており、現代における人種差別という不条理を描いている。


第6位『ブラック・クランズマン』スコア:96%

 白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)を題材とした本作は、アカデミー賞脚色賞を獲得した2018年公開の映画。本作の舞台は米コロラド州コロラド・スプリングズ。そこの警察署でアフリカ系アメリカ人(黒人)として初めて警察官に採用されたロン・ストールワースが、KKKに潜入するという犯罪伝記映画。本作は、カンヌ国際映画祭での上映後、10分間にもわたるスタンディングオベーションが沸き起こったことでも知られている。


第5位『When the Levees Broke: A Requiem in Four Acts』スコア:97%

 2006年に公開されたドキュメンタリー映画が第5位にランクイン。本作は2005年にアメリカに上陸し、非常事態宣言が発令されるほどの災害と甚大な被害をもたらした巨大ハリケーン、カトリーナの惨劇を生々しく映し出している。日本未公開作品のため、日本ではあまり知られていない。


第1位『4 Little Girls』スコア:100%

 驚くべきことに、スパイク・リー監督の作品には、100%のスコアを獲得した作品が4作品もある。今回は4作品を同率1位としてご紹介。

 1963年9月15日に米アラバマ州バーミンガムのバプティスト教会が爆破され、11歳から14歳までの黒人の少女4人が犠牲になった事件を映画化したドキュメンタリー作品。本作に登場する爆弾魔の正体は、『ブラック・クランズマン』でも登場したKKKのメンバー。人種差別により発生した事件を克明に描いた作品として重要な1作。


第1位『ヒューイ P.ニュートン・ストーリー』スコア:100%

 『ヒューイP.ニュートン・ストーリー』は、1960年代に立ち上がった集団“ブラック・パンサー党”のリーダーであったヒューイP.ニュートンの物語。マルコムXやマーティン・ルーサー・キング・ジュニアが暗殺されたのと時を同じくして、米オークランドではヒューイらが中心となり、ブラック・パンサー党が結成される。彼らはショットガンを構え、黒いベレー帽、革のジャケットを身にまとい、拳を高く振り上げた。


第1位『Passing Strange』スコア:100%

 スパイク・リー監督が米演劇界の栄誉とされるトニー賞に輝いたロックミュージカル『Passing Strange』をドキュメンタリー映画化した本作は、若い黒人男性がロサンゼルスの中流家庭を離れ、芸術の自由とアイデンティティーを求めて海外を旅するというストーリー。スパイク・リー監督は記者会見で「(本作を)何世代にもわたって見てもらいたいから」と、映像化について語った。


第1位『ロドニー・キング』スコア:100%

 1991年にロドニー・キングという黒人男性が米ロサンゼルス市内を運転中、スピード違反で現行犯逮捕された際、警察官から激しい暴行を受けたという事件に端を発して発生したロサンゼルス暴動の記憶を、アメリカの俳優ロジャー・グーンヴァー・スミスが舞台に立ち、迫真の一人芝居をする映像作品。2017年に公開された本作は「I can't breathe (息ができない)」いう、警察による黒人に対する不当な扱いに抗議するブラック・ライブズ・マター運動のスローガンのひとつである言葉(※)で締め括られている。本作はNetflixで視聴可能。100%の評価にも頷ける鳥肌モノの名作。

※「I can’t breathe(息ができない)」は、2014年に警察官の締め技によって窒息死した黒人男性エリック・ガーナーが亡くなる前に発した言葉。2020年には、黒人男性ジョージ・フロイドが同じフレーズを訴えたにもかかわらず首元を9分近くも警官に膝で押さえられて死亡した

 スパイク・リー監督は、映画ばかりではなく、ドキュメンタリーも素晴らしい。彼が直球で描くメッセージ性の強い作品は、どの時代に作られた作品でも、現代と変わらない“差別意識”を改めて気付かせてくれる。ぜひ人気作品の中から気になったものを鑑賞してみては? (フロントロウ編集部)

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