「あなたのような客を私は喜んで失います」。顧客第一主義が当たり前となっている商売の世界で、アマゾンのCEOが“禁句”ともいえる言葉で客を突き放したワケとは?(フロントロウ編集部)

悪質なクレーマーにCEOが直々に対応

 通販業界のトップに君臨する世界的大手通販サイト「アマゾン(Amazon)」の創業者でCEOのジェフ・ベゾス氏が、客からの“あるクレーム”に直々に対応。そのクレームに対して、ベゾス氏が返した言葉に称賛の声が集まっている。

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 「All Lives Matter(すべての命に価値がある)」という表題がつけられた客からのメールには、個人ではなく会社として「Black Lives Matter/ブラック・ライヴズ・マター(黒人の命にも価値がある)」を支持することは少なくともこの客にとっては侮辱的なことであり、アマゾンの公式サイトを開くたびにBlack Lives Matterの文字が表示されるのは不快である、といった人種差別的な内容が書かれていた。

 ご存じの方も多いと思うが、Black Lives Matterとは、黒人に対する人種差別の撲滅を訴える抗議運動のことで、All Lives MatterはBlack Lives Matterに対抗して使用されている言葉で、Black Lives Matterを否定するような意味合いも含まれる。

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I got this email from a customer and wanted to share my response.

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 ベゾス氏は、この客から届いたメールの全文と一緒に、ベゾス氏が実際に送ったという返信の内容を公開。そこにはこう書かれていた。

 「いいえ、メイシー。私はあなたには同意できません。Black Lives Matterは決して、(黒人以外の)ほかの命に価値がないと言っているわけではありません。Black Lives Matterは黒人に対する人種差別と、この国の警察と司法制度によって(黒人が)不相応なリスクに晒されていることに声を上げるものです。私には20歳の息子がいますが、いつの日か息子が(警察に)身柄を拘束され、窒息して死ぬかもしれないなどと心配したことはありません。私にとっては心配事ではありませんが、子を持つ黒人の親たちにとっては違うでしょう。

 (Black Lives Matterは)あなたやほかの人たちが抱える悩みや心配事を退けているわけでも、見下しているわけでもありません。ただ私は、今私たちの周りで起きているこの運動を支持しており、私のこの姿勢が変わることはない、ということだけは知っておいてください」

 じつは、ベゾス氏によるクレーム対応にはまだ続きがある。

 先ほどのメールの内容をインスタグラムで公開した直後、ベゾス氏のもとには彼の姿勢を批判する内容のヘイトメールが殺到。ベゾス氏は、山ほど届いたヘイトメールのうちの一通を自身のインスタグラムで公開しているのだが、そこにはNワードと呼ばれる黒人の蔑称や、「お前は完ぺきなクソ野郎だ」「お前とのビジネスはもう終わりだ」といったベゾス氏を侮辱するような表現がずらっと並んでいた。

 それに対し、ベゾス氏は「こういったヘイト(憎悪)を、影に隠れたままにしておいてはいけません。目に見えるようにすることが大事なのです。ちなみに、これはこの問題のひとつの例に過ぎません」と、ヘイトメールを送りつけてきた人たちのことを非難。そして、最後には「あなたのような客を私は喜んで失います」という、トドメのひと言が書かれていた。

 “客は神”という言葉をよく耳にするが、顧客第一主義が当たり前となっている商売の世界で、先ほどのトドメの言葉いわば禁句。普通であれば絶対に口にしてはいけない“ありえない言葉”だが、1人の客を失ってでもBlack Lives Matterを支持することを表明したベゾス氏に、多くの人たちから称賛の声が集まった。(フロントロウ編集部)

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