「ジューンティーンス」と呼ばれる6月19日の奴隷解放日を記念して、ビヨンセやアリシア・キーズら多くのアーティストが楽曲を発表して、人種差別に異議を唱えた。この日リリースされた数ある楽曲の中から、フロントロウ編集部が厳選した6曲をご紹介。(フロントロウ編集部)

国をあげてジューンティーンスを祝福しようとする動き

 6月19日は、1865年6月19日にテキサス州で奴隷解放宣言が発令されたことを記念し、アメリカで奴隷解放記念日に制定されている。

 「June 19th=ジューン・ナインティーンス」を省略して「ジューンティーンス(Juneteenth)」と呼ばれるこの記念日は、155年前から祝われてきたものの、“黒人のためだけの記念日”とした印象が強く、ほかの歴史的記念日と比べると認知度が低かった。しかしながら、Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)運動の高まりもあって、今年2020年は、これまでに比べて「ジューンティーンス」を一体となって祝福する動きが広がっており、セレーナ・ゴメスやテイラー・スウィフトをはじめ、ジューンティーンスを正式に国民の祝日に制定し、国家レベルで祝うべきだと声をあげるセレブも多くいた。

画像: 米現地時間6月19日にイリノイ州シカゴで撮影。

米現地時間6月19日にイリノイ州シカゴで撮影。

 そんななかで、今年は6月19日が、「ニュー・ミュージック・フライデー」として知られる、世界的な音楽のリリース日である金曜日だったこともあり、多くのアーティストたちがこの日に合わせて新曲やニューアルバムをリリースした。ここでは、先週6月19日にリリースされた数多くの楽曲の中から厳選した6曲をご紹介。

ビヨンセ「ブラック・パレード」

 今年のジューンティーンスにリリースされた多くの楽曲の中でも、最もサプライズだった曲の1つが、ビヨンセの新曲「ブラック・パレード」。この日のTwitterの世界トレンドで、「Beyoncé」が1位を、「Black Parade」が3位を獲得したことも、その注目度の高さを表している。

 ビヨンセは楽曲のリリースに際して、「良いジューンティーンスの週末を!これからも、困難の中でも私たちが喜びを分かちあい、お互いを称え続けることを祈っています。私たちの美しさ、力、勢力を忘れないでください」と自身のインスタグラムに綴った。

 ビヨンセは「ブラック・パレード」で、黒人としての自身のルーツに対する誇りを力強く歌いながら、黒人たちが経験してきた人種差別の歴史にも言及している。

「ああ、メラニンよ、私の魅力はこのディープな肌
ああ、母なる大地よ、母なる大地が私に授けてくれた
ああ、私の歴史が、彼女の物語だってことを忘れてはいけない(※)
黒人であること、彼らがいつも怒っているのはきっとそれが理由
彼らを抜かしてきたけど、彼らがそれで怒っていることも私は知ってる
彼らはいつもそうだった」
※自分の歴史が、あらゆる黒人女性たちの人生に影響を与えるということ。

アリシア・キーズ「Perfect Way To Die(パーフェクト・ウェイ・トゥ・ダイ)」

 2019年、2020年とグラミー賞で2年連続となる司会を務めたアリシア・キーズがリリースした「パーフェクト・ウェイ・トゥ・ダイ」には、より感情を揺さぶられるかもしれない。

 ラッパー/プロデューサーのスウィズ・ビーツとの間に2人の子供をもうけているアリシアが発表したこの曲は、警察の暴力によって子供を亡くした母親の視点から描かれている。アリシアは「完璧な死に方」を意味する楽曲のタイトルについて、インスタグラムに次のように記している。「もちろん、完璧な死に方など存在しません。このフレーズは意味をなさないものです。警察の暴力という破壊的な文化によって、あまりに多くの無実な命が私たちのもとから奪われてしまったのと同じくらい、意味をなさないものなのです」。

「あの日は都市部で行進が行われたんだって
ストリートで看板を掲げながら
ストリートで目に涙を浮かべながら
だけどあの日、都市からは音沙汰がなかったんだって
また1人、去ってしまっただけ
都市は歩みを進めて行った」

H.E.R. 「I Can't Breathe(アイ・キャント・ブリーズ)」

 今年1月の第62回グラミー賞授賞式で主要部門含む5部門にノミネートされたことも記憶に新しいH.E.R.(ハー)は、その名も「I Can't Breathe(アイ・キャント・ブリーズ)」と題した、故ジョージ・フロイド氏ら、警察によって殺害された黒人たちに捧げる楽曲をリリース。

 「アイ・キャント・ブリーズ(息ができない)」という言葉は、白人警官によって首を押さえつけられ死亡した黒人ジョージ・フロイド氏が亡くなる直前に残した言葉で、現在行なわれている抗議活動のスローガンの一つとなっている。H.E.R.はその力強くも繊細な歌声に乗せて、悲痛な思いを歌っている。

「息ができない
私の命が奪われようとしている
息ができない
誰か私のために闘ってくれますか?」

アンダーソン・パーク「Lockdown(ロックダウン)」

 エミネムの師匠であるドクター・ドレーに見出されたことで知られ、グラミー賞を3度受賞したことのあるアンダーソン・パークは、「ロックダウン」と題された楽曲をリリース。アンダーソンは、同曲のミュージックビデオに参加したキャストやクルーの報酬を、人種差別解消に取り組んでいる慈善団体に寄付することも発表している。

 ロックダウンとは、新型コロナウイルスの感染防止のための都市封鎖を意味する言葉だけれど、彼がこの曲で歌っているのは、ロックダウン中にもかかわらず、人々がブラック・ライヴズ・マター運動のためにストリートでデモをしている様子。

「ダウンタウンに行くべきたった
人々が立ち上がってる
ロックダウンされていると思ったんだけどね
彼らは火をつけたんだ
銃弾が飛び交ってる
ロックダウンだなんて誰が言った?
酷いウソだ」

ジョン・レジェンド「Never Break(ネヴァー・ブレイク)」

 グラミー賞の常連であり、アカデミー賞、トニー賞、エミー賞の米4大エンターテイメント賞すべての受賞歴がある数少ないアーティストであるジョン・レジェンドは、ジューンティーンスに合わせてニューアルバム『ビガー・ラブ』をリリースした。

 ジョンは本作について、「私の人生の愛、妻や家族、そして私をアーティストにしてくれたブラックミュージックの豊かな伝統からインスピレーションを受けています」とし、「2020年の夏を迎える今、この新しい作品があなたを再び、リフトアップさせ愛とインスピレーションで心を満たし、踊るため、手を繋ぐため、愛し合うための何かを与えることが出来ることを願っています。“より大きな愛”を是非体感してください」とコメントしている。

 ジョンは本作に収録されている「ネヴァー・ブレイク」で、何があろうと“絶対に壊れない愛”を歌っている。

「僕たちは絶対に壊れない
基盤の上に築かれた
留まれる強さがある
僕たちは絶対に壊れない
水位が上がっても
山が震えても
僕らの愛は残り続ける」

テヤナ・テイラー「We Got Love(ウィー・ガット・ラヴ) feat. ローリン・ヒル」

 カニエ・ウェストが2016年にリリースした楽曲「フェイド」のMVに出演したことで一躍注目を集めたことで知られるテヤナ・テイラーもまた、ジューンティーンスにアルバムをリリースした1人。彼女はこの日、ミーゴスのクエヴォやエリカ・バドゥ、ミッシー・エリオット、ローリン・ヒルら豪華なアーティストが参加した23曲入りの大ボリュームのアルバム『The Album(ジ・アルバム)』をリリースした。

 テヤナはジューンティーンスにアルバムをリリースした理由について、米Billboardに対し、「ジューンティーンスにアルバムをリリースしたことについては、大切なことだと思っている。『メイド・イット』や『ウィー・ガット・ラヴ』のようなリードシングルからも気づいてもらえると思うけど」と、アルバムに収録されている楽曲の名前をあげながら次のように説明している。「私はずっと、自分たちが祝福されることや、自分のカルチャーや周囲の人たちを祝福することについて歌ってきた。起こることすべてが祝福であり、アルバムのリリースが遅れて、ジューンティーンスに完璧にフィットしたこともそう。これは祝福なの」

 テヤナは発言にもあったリードシングル「ウィー・ガット・ラヴ」で、ローリン・ヒルと共に次のように歌い上げている。

「多くの人の間で成功の定義は違う
あなたなら、何だって手に入れられると私は思う
世界中のすべてのお金だって手に入れられる
だけど、もしそれが楽しめるものでなかったり、持続的なものでなかったとしたら?
私の言ってること分かる?
それらすべてを手に入れたところで、人格者にはなれないとしたら?
それにどんな意味があるの?一体何の意味があるの?
価値は内側にある
あなたの価値は内側にあるの

私たちには愛がある
信じてみて
私たちには愛がある
信じてみて」

(フロントロウ編集部)

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