ハリウッドで活躍する黒人俳優たち300名以上が、Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)をハリウッド業界全体で支援するよう要求するオープンレターを公開した。(フロントロウ編集部)

大規模発生しているBlack Lives Matter

 2020年になってもなお黒人差別が根強く残るアメリカで、ここ数ヵ月で非武装の黒人が白人警官に相次いで殺害された事件を受け、黒人に対する社会的な差別に抗議するBlack Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)運動が各地で大規模に発生している。

 黒人差別に抗議する呼びかけだけでなく、法改正や黒人を殺した白人の逮捕、各企業や団体の取り組みなど、実際の行動を求めるBlack Lives Matter(以後BLM)においては、多くの著名人もプロテストに参加している。

画像: イギリスのロンドンで開催されたプロテストに参加した映画『スター・ウォーズ』シリーズへの出演で知られる俳優のジョン・ボイエガ。

イギリスのロンドンで開催されたプロテストに参加した映画『スター・ウォーズ』シリーズへの出演で知られる俳優のジョン・ボイエガ。


テレビや映画は黒人差別を助長している

 また、警察ドラマの制作陣や警官を演じたことのある役者の間では、他の業界関係者以上にBlackLives Matterへの責任があるとし、ドラマ『ブルーブラッド 〜NYPD家族の絆〜』で警官を演じたグリフィン・ニューマン、『ブルックリン・ナイン-ナイン』でローザ役を務めるステファニー・ベアトリス、『ブルックリン・ナイン-ナイン』のスタッフとキャスト、そして『LAW&ORDER/ロー・アンド・オーダー』プロデューサーを務めたワーレン・レイトなどが、BLMを支援する団体に寄付を行なったと発表している。

 映画やドラマなどの映像作品では、人種や性別、セクシャリティの多様性を描き出せる一方で、古いステレオタイプなイメージを多くの人に植えつけることも可能。そのような背景もあり、警察ドラマの関係者が行動を起こした。とはいえ、これまで多くの作品を世界中に送り出してきたハリウッドは、元々白人優位で、男性優位だと批判されていた。そのような状況を打開するために、黒人俳優や関係者が、ハリウッドに対して公開文書を発表した。

画像: ケンドリック・サンプソン

ケンドリック・サンプソン

画像: テッサ・トンプソン

テッサ・トンプソン

 ドラマ『インセキュア』や『殺人を無罪にする方法』などで知られるケンドリック・サンプソンと、『アベンジャーズ/エンドゲーム』のテッサ・トンプソン、そしてBlack Lives Matterの創設者2人が書いたオープンレターは、イドリス・エルバ、ダナイ・グリラ、ゾーイ・クラヴィッツ、チャドウィック・ボーズマン、マイケル・B・ジョーダンなどを含む300名以上の署名とともに発表された。以下、オープンレターより一部抜粋。

「ハリウッドは、クリエイティブ業界として考えを膨らませ創造するという特権があります。私達はカルチャーや政治へ大きな影響力を持っています。そして、より良い世界をイメージして作り上げるために、影響力を使うことができます。しかしながら、歴史的にも現在のところも、ハリウッドは警察の暴力やアンチ黒人文化の流行を盛り上げています。

ハリウッドや大手メディアが、黒人を犯罪者として描き、法における誤った姿を映し、警察の腐敗や暴力を美化してきたことは、黒人の人生に対して悲惨な結果を生み出してきました。私達は精神的に暴力であるという物語もあります。このような数々の物語は、ニューヨーク警察の巡査部長ヒュー・バリ―によって殺害されたデボラ・ダナーをはじめとした黒人の殺害事件の一因です。また、トランスフォビア(※トランスジェンダー嫌悪)を永続させるような物語もあり、フロリダでのトニー・マックデイド殺しを正義のためだとしました。そして、ミズーリのニナ・ポップ、フィラデルフィアのドミニク・フェルズ、オハイオのリア・ミルトンも。暴力的で法に縛られず振る舞う警官や捜査官をヒーローのように称賛することをやめなくてはいけません。このような表現が、ジョージ・フロイドを殺した犯人のデレク・ショービンのような警官を力づけているのです」

「黒人の人生を肯定する物語を、白人がコントロールし抑圧することを許容することで、ハリウッドは直接的にも間接的にも、私達黒人のコミュニティに対して害や抑制を負わせているのです。ハリウッドはこの問題の大きな要因のひとつなのですから、私達はハリウッドに、解決策のひとつにもなることを要求します。黒人として、私達はこの業界に莫大で計り知れないほどの文化的価値や経済的価値を提供しています。そして私達は、この業界によって永続させられている抑制にも悩んでいるのです。私達には、変化を要求するすべての権利があります。

改善を要求します。黒人の人生を守り、投資することを宣言するという大胆な行動を取り、黒人の存在はハリウッドにおいて価値のあるものだと証明してください。ミネアポリスの学校や、デンバーの公立学校、ミネソタ大学やその他多くの団体が警察システムへの支援を取りやめ、黒人コミュニティへの投資を決定したことに追従してください。私達は、ハリウッドにも同様の行動を求めます」


具体案を呼びかけた黒人俳優も

 今回オープンレターに署名し、映画制作会社Outlier Societyを運営するマイケル・B・ジョーダンは、6月初めに大手芸能事務所4社が共同で開催したデモに参加した際に、ハリウッドが取り組むべき具体案を呼びかけている。

画像: 具体案を呼びかけた黒人俳優も

「私たちは今、ハリウッドの中心にいます。(ハリウッドは)世界で最も強力なパワーを持つ業界のひとつで、私はその一員です。私は自身が運営する映画制作会社でインクルージョン・ライダー(※)を取り入れていますが、それだけでは十分ではありません。私をサポートするブランドや芸能プロダクション、スタジオ、私とつながりを持つビジネスや私とパートナーシップを結ぶ企業が、もし警察と経済的なつながりがある場合、自分たちのビジネスを再検討する必要があります」
 ※俳優が作品への出演契約を結ぶ際に、キャストとスタッフの人種・性別などの構成を少なくとも50%は多様なものにするよう要求すること。

(フロントロウ編集部)

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