豪クイーンズランド州でナイトクラブが再開
ここ日本でも、新型コロナウイルスの感染拡大はいまだ完全には収まっておらず、ライブハウスやクラブなどで、生のエンターテインメントを体感できる機会はほとんど制限されてしまっている。そんななか、今週末からナイトクラブの営業を再開するという豪・クイーンズランド州の取り組みが話題になっている。
オーストラリアのクイーンズランド州政府によれば、現地時間7月2日の時点で、2週間以上にわたって新規の新型コロナウイルス感染者はゼロ。現在は患者2人が治療を受けているという状況だという。新規の感染者が減少していることを踏まえ、クイーンズランド州では現地時間7月3日よりナイトクラブの営業が再開。入場できる人数を制限した上で再オープンするという。
しかしながら、ソーシャルディスタンスという言葉がすっかり浸透したように、このコロナ禍では感染防止のため、人との間に社会的距離を空けるのが必須。クラブが再開する際には、オーディエンス同士の距離を一定に保つため、フロアに椅子が用意されるという。
立って踊ることが醍醐味なところもあるクラブで椅子に座るというのは、ちょっとシュールな感じもするけれど、新型コロナウイルスの感染防止のためには、社会的距離を保つことは絶対条件。クイーンズランド州ブリスベンにあるクラブ、レトロズ・フォーティテュード・バレーでマネージャーを務めるタミー・ウッド氏は英The Guardianに対し、営業再開に当たって、新型コロナの流行前とは「少し違ったものになるでしょう」とした上で、次のように続けた。「これまで以上に椅子を用意する必要があります。皆さんには、椅子の上でダンスを踊ってもらわなければなりません」
ソーシャル・ディス“ダンス”?
ウッド氏の言う通り、椅子に座るというルールのもとでは、どんなに思い切り踊りたい曲が流れてきたとしても、椅子に座りながらダンスしなければいけない。等間隔に配置された椅子の上で、社会的距離を保った状態でダンスするという試みは、もちろんこれまでにないもので、「ソーシャル・ディス“ダンス”(Social Dis-Dance)」という造語まで誕生。新型コロナ禍においては、このようなクラブの楽しみ方がスタンダードになるのではないかという声も多い。
オーストラリアのクラブ好きたちも、椅子に座った状態でどう踊ればいいかと頭を悩ませているようで、SNSでは、これからのクラブを想定したイメージを投稿するのが流行。ある人は、椅子に座ってダンスしているGIFを投稿して、「椅子で踊る準備はできてる」とツイート。
Chair dance moves at the ready � pic.twitter.com/bbiuCd2Qo8
— Isabella (@IsabellaDCheng) June 30, 2020
またある人は、座りながらタップダンスしているGIFを投稿して、「タップのし過ぎでつま先を痛めなきゃいいけど」とツイート。
I hope no one hurts themselves toe tappin pic.twitter.com/ZwOt157boP
— damien venditti (@damienvenditti) June 30, 2020
さらには、老人ホームで撮影されたと思われる写真を投稿して、老人たちが着席している様子を「クイーンズランド州のナイトライフ」になぞらえる人も。
Queensland nightlife pic.twitter.com/sioVMMnMFD
— australian kitsch � (@OzKitsch) June 30, 2020
一方、クイーンズランド州政府の見解はと言うと、州首相のアナスタシア・パラシェ氏は、「音楽を聴くことはできます」と発言。たとえ座った状態でも、少なくとも音楽は聴けるはずだとコメントした。
Nightclubs will reopen in Queensland on Friday but patrons will have to stay seated �@AnnastaciaMP says “you can listen to the music”.
— Lydia Lynch (@LydiaLynch101) June 30, 2020
すでにオランダでは同様の取り組み
一見、ダンスフロアに椅子を持ち込むというのは斬新にも思えるこの取り組みだけれど、オランダではすでに、今月初めから同様の取り組みが行なわれている。オランダのクラブDoornroosjeでは今月、椅子で社会的距離を保った状態でDJイベントを開催。英Reutersが、オーディエンスが着席した状態で集まったイベントの模様を報じた。
ICYMI: Dutch youth follow social distancing rules as they hit the club pic.twitter.com/DchIwNzEmr
— Reuters (@Reuters) June 14, 2020
プロモーターのジョナタン・ブランドンはこの新たな取り組みについて、英Reutersに次のように語っている。「これもクールだと思います。人々は椅子に座った状態でもダンスできますし、拳を突き上げたり、身体を動かしたりできますから。素晴らしいですよ」
新型コロナウイルスの影響で、また以前と同じように密集した状態でライブエンターテインメントを楽しめるようになるのはまだ先かもしれないけれど、クラブに椅子を持ち込むという取り組みは、コロナ禍におけるライブへの向き合い方の1つの標準になるかもしれない。(フロントロウ編集部)