東京ディズニーランドにもある人気アトラクション「ホーンテッドマンション」のあるシーンに“テコ入れ”を望む声が、一部の海外ディズニーファンの間で上がっている。(フロントロウ編集部)

ディズニーの人気アトラクションに“アップデート”を望む声

 ウォルト・ディズニー・カンパニーが運営するリゾート事業の企画、開発、マネジメント、レジャー事業を行うディズニー・パークス社は、黒人に対する人種差別に抗議するムーブメント「Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター/黒人の命も価値がある)」の後押しを受けて、昔から黒人描写に関して批判の声が絶えなかった『南部の唄』をモデルにした人気アトラクション「スプラッシュ・マウンテン」のテーマ改変を発表。

 ディズニーアニメ作品として初めて黒人のプリンセスを主人公に迎えた『プリンセスと魔法のキス』の世界観を表現したライドへと刷新する計画を明らかにしたが、このディズニーの対応を受けて、スプラッシュ・マウンテンのほかにも、不適切な描写や演出が問題視されるアトラクションへの“テコ入れ”を望む声が活性化している。

画像: 米フロリダ州オーランドにあるマジック・キングダムのスプラッシュマウンテン。

米フロリダ州オーランドにあるマジック・キングダムのスプラッシュマウンテン。

 スプラッシュ・マウンテンに次ぎ、「ジャングルクルーズ」が、先住民族に対して人種差別的でステレオタイプを植え付けるような表現を含むとして議論の的になっていることはフロントロウでもお伝えしたが、新たに、「ホーンテッドマンション」に関しても、昨今の時代の流れに合わせて、ある場面の仕掛けを見直すべきなのではないかとの意見が持ち上がっている。


ホーンテッドマンションの「あの場面」が問題視

 アメリカのフロリダ州にあるマジック・キングダムやカリフォルニア州のディズニーランド、フランスのディズニーランド・パリ、そして日本の東京ディズニーランドの計4つのディズニー・パークに存在し、来園時には乗らずには帰れない人気アトラクションの1つに数えられる、ホーンテッドマンションは、999人の亡霊が住んでいる屋敷が舞台。

 亡霊たちが呪われた館を訪れたゲストを1000人目の仲間に迎えようと狙っているという、ユニークなコンセプトの同アトラクションは、屋敷に住むゴーストの1人である「ゴーストホスト」と呼ばれる案内役の解説とともに進んでいく。

カリフォルニアのディズニーランドにあるホーンテッドマンションの外観。

 一部のディズニーファンたちの間で“テコ入れ”が検討されるべきか否かと議論されているのは、アトラクションの序盤、3人乗りの黒い椅子型のライドに乗る前に、ゲストたちが通される「ストレッチルーム(伸びる部屋)」の最後に一瞬だけ登場する“首を吊る男性”の演出。

 8角形の不気味な小部屋に案内されたゲストたちは、「この不思議な気配を、諸君は感じただろうか?部屋が伸びているのか? それとも、諸君の眼の錯覚なのか?よーく見るがいい…」というゴーストホストの語りとともに、壁にかけられている絵や部屋全体が伸びていくような不思議な体験をする。

画像: ©Alexis Simpson/ZUMA Press/Newscom

©Alexis Simpson/ZUMA Press/Newscom

 その後、「フフフフフ・・・慌ててももう遅い。果たして諸君はこの部屋から出ることができるかな?」という不気味な高笑いが聞こえ、部屋は一瞬真っ暗に。「私ならこうやって出るがな...」とゴーストホストが言い、天井には、それまでは無かったはずの“首つり死体”が出現。部屋の明りがつくと、天井から死体が消えている。

 彼の言葉からも分かるように、この“首を吊る男性”の正体こそがゴーストホストであり、亡霊たちの巣窟となった館から脱出するには、彼はもう“自殺をするほかには手段がなかった”という設定なのだが、近年、とくに新型コロナウイルス感染症というパンデミックの渦中で、欧米でも自殺者の増加が懸念されるなか、このシーンが自殺という深刻な問題を軽視し、少々ユーモラスに表現しすぎているようだと難色を示す人も。

 海外の人気掲示板サイトredditで問題提起したユーザーのこんな投稿が注目を集めている。

もし、ディズニーのテーマパークのどのアトラクションに含まれるシーンが一番、不快感を抱かせるものかっていう議論をするなら、ホーンテッドマンションのストレッチング・ルームのあの場面だと思う。みんな分かってるよね。ゴーストホストが『Of course, there’s always my way』と言って、首吊り死体が一瞬だけ出現するシーン。

 何が問題かって?
A:自殺を取るに足らないものとして表現しているから
B:陰惨だから
C:リンチ(集団暴行)を彷彿とさせる絞首ロープが使われているから
 冗談で言ってるわけじゃない。あの演出を無くすには、ただフラッシュ照明を当てるのをやめればいいだけなんだし、検討の余地はあるんじゃないかな。

 ゴーストホストの『Of course, there’s always my way』というセリフは、日本語では「私ならこうやって出るがな...」というマイルドな表現に訳されているが、英語では、人生に行き詰まった人に、“辛いなら死んでしまえばいい”と暗に訴えかけているようなニュアンスにも受け取れる。

 このユーザーは、それを指摘し、ホーンテッド・マンションの“首吊り死体”を、すべてのアトラクションの演出のなかで、最も不快なシーンだと呼んだ。この意見は、世界中のディズニーファンたちの間で賛否両論となっている。

 スプラッシュ・マウンテンのテーマ改変は、もともとはSNS上で一部のディズニーファンたちが議論し、『プリンセスと魔法のキス』のテーマを採用すべきだと推していたことが発端で、署名運動にまで発展。これを受け、ウォルト・ディズニー・カンパニーがついに刷新を決断したものだった。

 ホーンテッド・マンションの“首つり死体”は、アトラクションを通じてストーリーが語られるうえでは、必要な演出であるという声もあるけれど、はたして、今後この議論は拡大していくこととなるのか? (フロントロウ編集部)

This article is a sponsored article by
''.