シャーリーズ・セロン、『エイリアン』に救われた過去
映画ごとに見せる顔がまったく違うカメレオン俳優として有名なシャーリーズ・セロンは、映画制作会社Denver and Delilah Productionsを立ち上げたプロデューサーでもあり、これまでに『モンスター』や『スキャンダル』、『オールド・ガード』など、様々な女性を描く作品を世に送り出してきた。
そんなシャーリーズだけれど、幼少期には女性が活躍する映画やドラマはほとんどなかったと、米EWへの寄稿で振り返る。そんな彼女に変化をもたらしたのが、1979年に公開されたSFアクション映画『エイリアン』。シガニー・ウィーバーが演じたエレン・リプリーは大人気を博し、シリーズを通して活躍する主人公となった。
「20代前半で、『エイリアン』のシガニー・ウィーバーを見ました。彼女が演じたキャラクターのリプリーは、私の心の深くにいつもいてくれた。アクション映画へのインスピレーションだけというわけではなく、普遍的に。リプリーを見てから、世界が広がって、無限のように感じることができた」
女性の複雑さや多様性を祝福
キャリアの当初はモデルとして活動していたシャーリーズだったけれど、その後俳優の道へ。敏腕プロデューサーでもある彼女は、2019年に全米公開された、マスコミ業界で働く女性が性的嫌がらせ(セクハラ)を告発する映画『スキャンダル』の製作に携われたことを誇りに思っているという。「この30年にわたって、振り返って話題に出来るような他の女性と共演した映画があまりないことを恥ずかしく思っています。私にとって、『スキャンダル』のような映画を作れたことは大きなことでした。女性が多く登場する映画に出演したことはなかったし、それは信じられないほど間違っていることですよね」。
ハリウッドでフェミニストとして活躍するリース・ウィザースプーンやマーゴット・ロビーなどと並び、シャーリーズもリーダーシップのある女性としての印象が強いけれど、意外にもその過去が抱える後悔も垣間見せた。しかしそのような経験や、それによる感情に引け目はないよう。とくにアクション映画の分野で女性キャラクターが活躍してきていることに関して、前向きなメッセージを綴る。
「私達はこの10年20年で、社会的変化を経験してきました。女性戦士や女性ヒーロー、女性のアクションスターがどのようなものであるべきかという考えが、決して真実を表していないと、誇りを持って声をあげられるようになりました。私達の失敗や欠陥、私達を興味深いものにしてくれる物事が絡まり合う複雑さには、祝福すべきものがあります。
複雑で多様性のある女性ヒーローたちは、物語を高めます。それは私達により多くの行き先や、遊びを与えてくれるようになりました。つまりは、アクションというジャンルのなかで、女性は何か大きなものを失った時、夫が死んだ時、子供がさらわれた時にだけ存在し、息をするというアイディアや比喩を排除するということです。こういった比喩は、少しずつ消えていっていますし、女性が、これまで何世紀にもわたって男性がしてきたのと同じように、この世界で生きて息をしている姿が見られるようになっているのです」
女性が活躍することに意味はいらない
映画やドラマで描かれる女性の性格や外見が似ていることは、それを見ている人の頭にあるステレオタイプを増幅させることになる。しかしハリウッドでも様々な女性が描かれる作品が増えてきているといった変化が見られ、シャーリーズが主演と制作を手掛けた、女性ヒーローたちが活躍するNetflix映画の『オールド・ガード』は、公開から8日間ですでにNetflixオリジナル映画の歴代視聴数ランキングでトップ10に入るほどの快進撃を見せている。そのような変化を作るために活動してきたシャーリーズは、最後にこのような言葉を女性へ贈り、文章を締めた。
「私達はもう説明しなくて良いんです。私達は戦って、世界を救えて、はちゃめちゃにできる。そして、私達のその行動の後ろに理由はなくていい。私達はただ生きて、息をして、自分でいればいい」
(フロントロウ編集部)