『ダークナイト』のマーケティングにおいて、ジョーカーの“あの行為”を現実世界で実行する計画があった!(フロントロウ編集部)

『ダークナイト』公開前の参加型ゲーム

 2008年に公開され、世界中でメガヒットとなった映画『ダークナイト』。クリストファー・ノーラン監督による『ダークナイト』3部作の2作目であり、故ヒース・レジャーが演じたジョーカーが登場する、ファンから熱狂的な人気を誇る作品となっている。

 日本ではあまり知られていないけれど、本作の公開前にはARG(Alternate Reality Game/代替現実ゲーム)という、現実世界で『ダークナイト』をテーマにした大規模なゲーム「Why so Serious?」が開催されており、2009年のカンヌ国際広告祭のサイバー部門グランプリを受賞している。

 このゲームでは、参加者がハービー・デントをゴッサム・シティの地方検事に選出しようとすることから始まる。しかしジョーカー(ARG運営側)がいくつもの妨害行為をし、また、ジョーカーの仲間も募集されるなど、かなり大がかりなものとなり、参加者は1,000万人を超えた。だからこそ、アメリカのファンにとっては、『ダークナイト』の始めでジョーカーが仲間とともに銀行強盗をしたり、ハービーが地方検事として活躍したりしていることは、かなり胸アツな展開だった。

あのシーンを現実で実行する計画

 そんなARGを行なうにあたっては、もちろん専門の運営チームがいたのだけれど、数々のイベント案のなかには、泣く泣く諦めたアイディアもあったよう。DCコミックス作品が原作とあって、コミコンではジョーカーのシールが張られた1ドル札をおつりの中に忍ばせるというイベントも行なったが、当初は別の方法でお金をバラまこうとしていたよう。ARGのディレクターであるアレックス・リューが、米INGにその裏話を明かした。

「ティム・バートン監督の『バットマン』で、(ジョーカー役の)ジャック・ニコルソンがお金をバラまいて、人々がそれをゲットしようと走り回るシーンがあるでしょう。当初のアイディアは、1万ジョーカードルを持って(会場の)3階に行って、お金をバラまこうというものでした。私は『これは面白くなるぞ』って思いましたし、スーザンはコミコンに、その計画を話すと決定しました。でもそうしたら、コミコン側は『…冗談ですよね?』って。

コミコン側からしてみれば、私達が3階からお金をバラまく場合、もちろん安全の確保が懸念点だったわけです。それは楽しいかもしれないけれど、誰かが傷つくかもしれない。そこで彼らに、『私達にはバンキングシステムが備わっています。会場の売り手にはおつりも(手配している)』と言われたので、1万枚の1ドル札を彼らに渡して、それを各売り手のおつりの中に入れたんです。当日は、Tシャツや飲み物を買っておつりを貰ったら…、ちゃんとお札を見るまで気づかないかもしれませんが、ジョーカーのお札が手に入っているんです。誰も分かっていませんでした。このお金はどこから来たのか?どこでゲットしたのか?」

 1989年の『バットマン』で、ジャック・ニコルソン演じるジョーカーがお金をバラまくシーン。

 お金が降ってくるうえ、そのお札はファンにとって宝物になることは確実のジョーカー版1ドル札。もし当初の計画が本当に実行されていれば、ケガ人が出た可能性は高い。コミコン側の賢明な判断だったと思われるけれど、降ってきたお金はジョーカーのものだった、なんてかっこよすぎる状況に巻き込まれたかったファンも多そうだ。(フロントロウ編集部)

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