大腸がんにより亡くなった俳優のチャドウィック・ボーズマンが、家族やごく一部の関係者以外には闘病について告知しなかった理由について、長年にわたり彼のマネージメントを担当してきたエージェントが明かした。(フロントロウ編集部)

チャドウィック・ボーズマン、がん闘病を“秘密”にしていた理由

 映画『42〜世界を変えた男〜』や『マーシャル 法廷を変えた男』、そしてマーベル映画『ブラックパンサー』などに出演した俳優のチャドウィック・ボーズマンは、約4年にわたる大腸がんとの闘病の末、43歳の若さで他界した。

 2016年にステージ3の大腸がんと診断され、以来、化学療法などを受けながら、出演作の撮影に臨んでいたというチャドウィック。彼が、がんに侵されているという事実は、家族やほんの数名の関係者たちのみにしか知らされておらず、2020年3月から撮影が開始する予定だった『ブラックパンサー』のキャストや制作陣も、彼の訃報でその事実を知り、大きな衝撃を受けた。

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 がんは時を経て、ステージ4へと進行。しかし、チャドウィックは、9月から撮影が開始する作品の準備を進めており、亡くなるほんの1週間前まで、がんを克服して、すっかり減ってしまった体重を元に戻し、『ブラックパンサー』続編の撮影に臨めると確信していたという

 彼が、約4年もの間、頑なに病について公表せず、ひっそりと闘病を続けていた理由について、じつは、チャドウィックの母キャロリンの“教え”が影響していると、長年にわたって彼を担当してきたエージェントのマイケル・グリーンが米The Hollywood Reporterに明かした。

「彼女(キャロリン)は、チャドウィックにいつも、人々を騒がせるような事をしないように教えてきました。彼自身も、この業界では、人々がある物事に関して大袈裟に騒ぎ立てる傾向があると感じていました。だから、彼はとても、とても、プライバシーを大切にする人だったのです」

 看護士だった母親のキャロリンは、人様にあれこれ言われるような行動をとってはいけないと、昔からチャドウィックに教えていたという。そんな母の教えを胸に生きたチャドウィックは、がんとの闘病も、そして、亡くなる数カ月前の2019年10月に、2015年から交際していたシンガーのテイラー・シモーネ・リドワードと結婚し、夫婦となったことも、世間には公表しなかった。

画像: 2019年1月に行なわれた全米映画俳優組合賞(SAGアワード)の授賞式には妻のテイラーを同伴。チャドウィックは、2020年8月28日、ロサンゼルスにある自宅でテイラーや家族に見守られるなか息を引き取った。

2019年1月に行なわれた全米映画俳優組合賞(SAGアワード)の授賞式には妻のテイラーを同伴。チャドウィックは、2020年8月28日、ロサンゼルスにある自宅でテイラーや家族に見守られるなか息を引き取った。


チャドウィックの闘病中の姿

 チャドウィックがブラックパンサー/ティ・チャラ役として出演したマーベル作品の役作りにあたり、肉体強化をサポートしたというパーソナルトレーナーのアディソン・ヘンダーソンは、彼のがん闘病について知っていた、ごく一部の人々の1人。

 アディソンは、自身の父親が過去4回にわたってがんを克服した経験があることを踏まえて、チャドウィックには、よく「自分の父を思い出す」と話していたことをThe Hollywood Reporterに回顧。

 「あなたたち(父とチャドウィック)はファイターだね。決して前に進むことをやめない」と声を掛けていたというアディソンは、「進もう。あなたがやりたい事をやり続けよう。トレーニングを続けていこう」とチャドウィックを励ましていたことを明かし、彼の妻テイラーや家族たちもそんなチャドウィックを精一杯応援していたことを明かした。

画像: 2020年2月、NBAのオールスター戦を観戦した際のチャドウィック。彼が公の場に顔を出したのは、これが最後だった。

2020年2月、NBAのオールスター戦を観戦した際のチャドウィック。彼が公の場に顔を出したのは、これが最後だった。

 チャドウィックの母校であるハワード大学のウェイン・A.I.フレデリック医学博士は、2019年にチャドウィックとディナーを共にした際、すっかり痩せてしまった彼にどうしたのかと問いかけたことがあったという。

 質問に対し、チャドウィックはいつも通りとても丁寧に答えたそうで、博士はその時の様子をこんな風に振り返っている。

 「いつものように、彼は長く、詳細な回答をくれました。彼は、ベジタリアン(菜食主義者)であり、体調管理のため、やるべき事をやるためにエクササイズをしていると説明していました。それはとても思慮深い返答でした。実際に何が起きているのかは、決して明かしてくれませんでしたが」

 前出のエージェント、マイケル曰く、遺作となった映画『Ma Rainey's Black Bottom(原題/マー・レイニーズ・ブラック・ボトム)』の撮影中には、かなりがんが進行しており「ものすごい痛みを感じていた」というチャドウィック。しかし、学生時代に学費を肩代わりしてくれた恩師でもある大物俳優のデンゼル・ワシントンがプロデューサーに名を連ねる同作に参加できることには、非常に胸を高鳴らせていたという。

 1920年代に活躍したブルースシンガーのマー・レイニーを俳優のヴィオラ・デイヴィスが演じ、チャドウィックが野心家のトランペット奏者を演じた『Ma Rainey's Black Bottom』は2020年11月にNetflixで配信がスタート予定。8月31日にはバーチャル・プレビュー・イベントが開催される予定だったが、チャドウィックの訃報を受けてイベントの延期が発表された。(フロントロウ編集部)

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