2020年に開催された第77回ベネチア国際映画祭で、クロエ・ジャオ監督の映画『ノマドランド(Nomadland)』が、最高賞である金獅子賞を受賞した。女性監督としてはソフィア・コッポラ監督以来10年ぶり、史上5人目の受賞となる。(フロントロウ 編集部)

ベネチア国際映画祭が新型コロナ対策のなか開催

 2020年9月2日〜12日、世界三大映画祭の一つであるベネチア国際映画祭が開催された。今年で77回目となる同映画祭は、世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの対策を十分に取りながらイタリア現地で開かれた。

画像1: ベネチア国際映画祭が新型コロナ対策のなか開催

 米Deadlineの報告によると、いつもは満員となるオープニングセレモニーや上映会の出席率はかなり低く、ある上映室への来場者は通常の10分の1程度だった模様。今回参加したセレブは例年よりも少なかったものの、ティルダ・スウィントンやケイト・ブランシェット、テイラー・ヒルなどがレッドカーペットを歩いた。

 今回、監督賞である銀獅子賞に、日本から出品された黒沢清監督の『スパイの妻』が選ばれたことで、日本でも大きな注目を集めているベネチア国際映画祭。そんな本フェスティバルの最高賞で作品賞でもある金獅子賞には、クロエ・ジャオ監督の『ノマドランド(Nomadland)』が選ばれた。

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クロエ・ジャオ監督の『ノマドランド(Nomadland)』

 金獅子賞は、1949年から続くベネチア国際映画祭で最も優れた賞で、これまでにアルフォンソ・キュアロン監督の映画『ROMA/ローマ』やアン・リー監督の『ブロークバック・マウンテン』、黒澤明監督の『羅生門』など、様々な作品が栄冠を手にしてきた。2019年の受賞作品は映画トッド・フィリップス監督の『ジョーカー』だった。

 今回金獅子賞に輝いた映画『ノマドランド(Nomadland)』は、現代の遊牧民(ノマド)を描いた作品。ドキュメンタリーとフィクションの境界線を越えて新しい表現に挑んだ意欲作で、アメリカの西部の壮大な自然、路上に存在する美、ノマド達の生き様を映し出した映像が魅力的。

 本作の主人公は、リーマンショックを機に長年住み慣れたネバダ州の住処を失った60代の女性ファーン。彼女は、キャンピングカーに思い出もなにもかもすべてを乗せて、車上生活者となることを選ぶ。“現代のノマド(遊牧民)”として、季節労働の現場を転々としながら、行く先々で出会う他のノマド達と心を通わせながら、ファーンの、誇りを持った自由な旅は続く…。

画像: クロエ・ジャオ監督の『ノマドランド(Nomadland)』

 ファーンを演じるのは、映画『ファーゴ』と『スリー・ビルボード』でアカデミー賞主演女優賞を受賞したオスカー女優フランシス・マクドーマンド。撮影では、実在のノマド達の中に身を置いたという。

 クロエ・ジャオ監督はMCU映画『エターナルズ』の監督に抜擢され注目を集める現在38歳の女性監督。2017年に、アメリカ西部に生きるロデオライダーたちの姿を力強くも痛切に描いた『The Rider(原題)』で高い評価を得て以来、注目を集めている。

ベネチア国際映画祭で史上5人目となる女性監督の受賞

 ベネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞に輝いた女性監督は、77回の歴史の中でたったの5名のみ。今回は、2010年に公開されたソフィア・コッポラ監督による映画『SOMEWHERE』以降、約10年ぶりの受賞となった。

画像: クロエ・ジャオ監督

クロエ・ジャオ監督

 米EWによると、昨年の勝者であり賛否両論を集めた映画『ジョーカー』とは全く対照的に、『ノマドランド』は全会一致の高評価を得ており、EWは「必要性と崇高さの両方を兼ね備えた映画」と称賛している。

 映画『ノマドランド(Nomadland)』は2020年のアカデミー賞でも監督賞にノミネートするのではないかと噂されている。ちなみに、アカデミー賞92年の歴史で監督賞にノミネートされた女性監督はわずか5名。もし『ノマドランド』が受賞すれば、2009年に同賞を受賞したキャサリン・ビグロー監督の『ハート・ロッカー』以来となる。アカデミー賞は2024年から多様性を意識した作品選びの新機軸を採用することを発表している。

 映画『ノマドランド』は、2021年1月に日本公開が予定されている。(フロントロウ編集部)

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