俳優のジョン・ボイエガが、自ら監督まで務めたアロマ用品ブランドのCMから「排除」され、しかも、コンセプトや演出を勝手に「流用」されるというアンフェアな扱いを受けていたことが判明。企業側が過ちを認めて謝罪する事態に発展した。(フロントロウ編集部)

追記(2020年9月16日)
 ジョンがツイッターを通じて、Jo Maloneのグローバル・アンバサダーの役割を降りることを発表。「多くのブランドが地域によって異なる広告塔を起用するのは理解しているが、このような方法で誰かの文化を拒絶的に扱うことを許すことはできない」、「こんなナンセンスにつき合っている時間はない」と厳しい口調でコメントした。

ジョン・ボイエガがCMから「排除」&別の俳優に差し替え

 (2020年9月15日)映画『スター・ウォーズ』シリーズのフ俳優ジョン・ボイエガが、グローバル・アンバサダーを務める有名アロマ用品ブランド、Jo Malone(ジョー・マローン)の中国版の広告から「排除」され、しかも、自ら監督したキャンペーン映像のコンセプトを勝手に転用されるという不当な扱いを受けていたことがわかった。

 2019年に香水やキャンドルなどを扱う母国イギリス屈指のブランドJo Maloneの男性初の全世界向けのブランド・アンバサダーに就任したジョンは、生まれ故郷であるロンドン南部の街ペッカム区で暮らす家族や旧友にも出演を依頼した『A London Gent(ロンドン紳士)』と題したキャンペーン映像を監督・主演。

 ジョンがパーソナルな想いを込めたこの映像は、欧米向けのプロモーションに使用されたが、中国では、どういうわけか、ジョンが“排除”され、代わりに現地で人気の俳優リウ・ハオラン(劉昊然)が起用。ジョンが考案した演出の多くが、彼に知らされぬまま、勝手に流用されていたという事実が明らかになった。

 同じタイトルで公開された中国版のキャンペーン映像では、瞳の中にズームインする展開や白馬と自転車が登場するシーンなど、ジョンが故郷で過ごした時間や大切な人々との思い出にインスパイアされて考え出した演出がほぼそっくりそのまま取り入れられている。

 国によってブランド・アンバサダーが異なるというのは、決してめずらしいケースではないが、これらの映像が比較されたことで、中国版でジョンが“排除”された理由は、黒人であるジョンの人種に基づくものなのではないかと疑いの目を向ける人々が続々。コンセプトをほぼ丸パクリしている点に関しても、あまりにも敬意に欠けるのではないかと非難が相次いだ。


Jo Maloneが謝罪

 この騒動を受け、Jo MaloneはThe Hollywood Reporterを通じて謝罪。「ジョン・ボイエガを起用した特定の地域においてのキャンペーンの遂行に関する過ちに関して、深くお詫びを申し上げます。ジョンは素晴らしいビジョンや監督としての才覚を持った偉大なアーティストです。該当の映像のコンセプトは、彼の個人的な経験に基づくものであり、複製されるべきではありませんでした」、「今回の件は、誰かを傷つけたり、侮辱的だと感じさせるものであったと認識しています」と非を認め、中国版のキャンペーン映像を直ちに取り下げたことを報告した。

画像: Jo Maloneが謝罪

 Jo Maloneは、声明を通じて、何も知らずに中国版のキャンペーン映像に撮影に出演したリウにも謝罪している。

 Jo Maloneは、なぜ中国でのキャンペーンには、実質ジョンを“起用しなかった”のかという理由については説明しておらず、謝罪はあくまでも映像のコンセプトを流用してしまったことに対して行なわれたもの。世間で注目されている人種差別的判断があったか否かについては、言及していない。


ジョンが「中国版」で不当な扱いを受けるのは初めてではない

 黒人への差別撤廃を訴えるムーブメント「ブラック・ライヴズ・マター(BlackLives Matter)」を熱心にサポートしており、6月にはロンドンで行なわれたデモ行進に参加して、涙を流しながら熱いスピーチを行なったことや、最近では、自身の出世作となった『スター・ウォーズ』シリーズの撮影現場にも「人種差別はあった」と映画の制作・配給元であるディズニーを批判したことでも知られるジョン。

画像: 6月頭にロンドン市内で行なわれたブラック・ライヴズ・マターのデモの最前線でスピーチを行なうジョン。

6月頭にロンドン市内で行なわれたブラック・ライヴズ・マターのデモの最前線でスピーチを行なうジョン。

 じつは、彼は、過去にも、中国向けに行なわれたプロモーションで不当な扱いを受けたことがある。

 それは、2015年に『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が公開された際、欧米版や日本版のポスターでは、黒人俳優のジョン・ボイエガ演じるフィンがメインキャストらしく大きく表示されていたのに対し、中国版では、かなり小さい扱いになっていたという一件。

画像: 左が北米版のポスター、右が中国版のポスター。中国版ではジョンが小さく表示されているだけでなく、なぜかチューバッカが削除されている。

左が北米版のポスター、右が中国版のポスター。中国版ではジョンが小さく表示されているだけでなく、なぜかチューバッカが削除されている。

 多くの『スター・ウォーズ』ファンたちから「人種差別的だ」と抗議が殺到した、この騒動の苦い記憶もあり、今回のJo Maloneの中国版キャンペーンからのジョンの“排除”も物議を醸すこととなったよう。

 今回の件について、ジョンは、現時点では直接はコメントはしていないものの、自身が監督・主演したオリジナルの映像を褒め称えたうえで、「(Jo Maloneによる)謝罪だけでは足りない。ちゃんと埋め合わせをしてもらうべき」と訴えるなど、自分を擁護する発言をしたユーザーたちの投稿をいくつかリツイートして、遠回しに反応している。(フロントロウ編集部)

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