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レディー・ガガがアルバム『クロマティカ(Chromatica)』の制作に入る以前に、“暗黒期”を彷徨っていたことを明かした。(フロントロウ編集部)

「自分がガガ」である事にガッカリしていた暗黒期

 新型コロナウイルスの影響で約2ヵ月間リリースを遅らせるという決断をしながらも、5月に発売した最新アルバム『クロマティカ(Chromatica)』がロングヒットを記録しているシンガーのレディー・ガガが、同作の制作に入る以前、じつは、精神的に非常につらい時期を過ごしていたことを告白した。

 母でチャリティ活動家のシンシア・ジャーマノッタが、2012年にガガとともに立ち上げた、心に傷を抱えた若者たちを援助するための「ボーン・ディス・ウェイ基金」を通じて出会った人々のストーリーをまとめた著書『Channel Kindness: Stories of Kindness and Community』を発表するにあたり、米Peopleのインタビューに応じたガガは、音楽の力を借りて、暗闇から抜け出すことができたという体験談に言及。

 そのなかで、自分が、今やトップスターとなった“レディー・ガガ”であるということにとてつもないプレッシャーを感じ、落ち込んでしまっていた時期があったことを明かした。

 「朝起きて、私は“レディー・ガガ”なんだと気づくと、ものすごく気分が落ち込んで、悲しい気持ちになっていた。自分でなんかいたくないと思っていた。自分のキャリアが人生にもたらすものや、生活のペースに脅迫されているように感じた」


出口が見えたのは、やはり「音楽」のおかげ

 19歳だった頃に、20歳以上年上の男性プロデューサーから日常的にレイプされ、以来、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しめられていることを明かしているガガ。

 さらに、前作アルバム『ジョアン(Joanne)』のリリースから約1年後の2017年9月には、まるでガラスの破片が身体を流れるような痛みを伴うという、全身の骨格筋に激しい痛みやこわばりが生じるリウマチ性疾患「線維筋痛症」を発症したことを公表した。

画像: 線維筋痛症との闘病も記録したNetflixのドキュメンタリー番組『ガガ:ファイブ・フット・ツー』のプレミアが行なわれた2017年のトロント国際映画祭にて。

線維筋痛症との闘病も記録したNetflixのドキュメンタリー番組『ガガ:ファイブ・フット・ツー』のプレミアが行なわれた2017年のトロント国際映画祭にて。

 線維筋痛症は、痛みに対する不安から精神疾患を併発することが多く、「うつ病」の合併率は30~50%と高くなっているほか、躁状態と抑うつ状態を繰り返す「双極性障害」やストレスを我慢して内在化させる「失感情症」の併発率も高いといわれている。

 ガガが今回明かした、暗黒期とは、おそらく、PTSDと線維筋痛症による痛み、うつ症状などが合併した、本当に過酷な時を味わっていた時期のこと。

 この頃の様子について、「とにかく何もしたくない、緊張性昏迷状態(※)のような時間をたくさん過ごしていた」と振り返ったガガは、「そして、ついに、少しずつ音楽を作り始めて、楽曲を通じて自分のストーリーを語れるようになった」と、楽曲制作を糧にして、自分の内側に閉じ込めていた感情をリリースすることができたことが、回復へと繋がったと明かした。

※精神運動の低下および昏迷状態に代表される異常行動を特徴とする状態。1978年に神戸大学医学部精神神経科が『精神医学 』(20巻2号)で発表した『緊張病性昏迷の脳波』という論文によると、昏迷とは、「意識は覚醒していても運動制止の状態で一言も発せず、心的現象の了解可能な徴候を示すことなく、自己との関係を持とうとするすべての試みに向かって無反応にとどまっている状態」と説明されている。

画像: 出口が見えたのは、やはり「音楽」のおかげ

 ガガの言葉の通り、メンタルヘルスの問題やトラウマからの回復を歌った楽曲が多い『クロマティカ』には、アリアナ・グランデとのコラボで大ヒット中の「レイン・オン・ミー(Rain on Me)」や「フリー・ウーマン(Free Woman)」など、暗闇から光を見出すことをテーマにした楽曲が含まれている。

 苦しかった自身の体験と、『Channel Kindness』で紹介されている人々の体験を重ね合わせたガガは、「(この本で紹介されているストーリーは)心と心の間に高速道路を創り出してくれるようなもの。私たちが思いやりや共感をもって、みんなが持つ(苦境から)立ち直る力を祝福できるようなね」と語っている。(フロントロウ編集部)

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