レディー・ガガが最新アルバム『クロマティカ(Chromatica)』の収録曲「911」のミュージックビデオを公開。「そういう事か!」と度肝を抜かれる、終盤の“急展開”が必見の映像にはどんな意味やメッセージが込められている? (フロントロウ編集部)

レディー・ガガ、「911」MVの“ラスト1分間の衝撃“がヤバい

 シンガーのレディー・ガガが、ダンス・ポップに回帰したキャリア通算6枚目のアルバム『クロマティカ(Chromatica)』の収録曲「911」のMVを公開した。

 前日に突如行なった告知通り、日本時間の9月19日未明に公開されたMVは、真っ白な砂漠でガガが倒れているシーンからスタート。その後は、宗教的ともとれる、荘厳でアーティスティックかつミステリアスな描写が続き、「一体どういう意味があるのだろう?」と真剣に見入ってしまう。

 しかし、映像が残り1分を切ったところで、衝撃の急展開が!

 初めて見る人は、「なるほど、そうだったのか!」と鳥肌が立ち、何度も見返したくなる“どんでん返し”が用意されていることを心してMVを見て欲しい。


幻覚と現実

 そう、MVの最初から3分の2ほどは、交通事故に遭い救急救命室に運ばれたガガが見ている幻覚の世界。

 枕に頭を打ちつける男性は、ガガが乗っていた自転車と衝突した車の運転手が、事故の衝撃でエアバッグに頭を打ち付ける姿で、幻覚の中では、ガガを苦しめようとしている悪役にも見える長髪&ヒゲの男性は、現実世界では、ガガの命を救おうとしている救急隊員。そして、胸元に赤十字がついた白いケープを纏った女性は、白衣を着た医師。

 さらに、傍観者や事故の巻き添えとなった人々も幻覚に登場しているほか、現実世界の登場人物たちが手にしているアイテムや、事故現場付近の映画館で上映されていた映画のポスターに描かれた白い砂漠や馬に乗った黒い影も、形を変えて幻覚のなかに出現している。

 臨死体験のようにも感じられる幻覚と現実の対比は、登場人物たちの描かれ方からも、”物事は見方によって、捉え方がまったく変わってくる”というメッセージが込められているよう。

 たとえば、幻想の世界で、天使の輪のようなヘッドアクセサリーを着け、白いバラを手にしたガガが天に昇っていくのを長髪&ヒゲの男性がガガの足に縛り付けたロープを引っ張って地に落とすシーンは、一見、残酷に見える。しかし、実際には、救急隊員であるこの男性が、天国へと旅立ってしまおうとしているガガの命を、懸命に繋ぎとめようとしているという、まったく逆の解釈もできる。

 思わず何度も見返したくなる「911」のMVは、YouTubeでの公開から1時間足らずで再生回数が45万回を突破した。


「911」はどんな楽曲?

 「911」は、うつや過去のレイプ被害によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)といったメンタルヘルスの問題を抱えていることを公表しているガガが、日頃から摂取している抗精神病薬(※)についた楽曲。

※向精神薬の一種で、主に統合失調症や躁状態の治療に承認されている精神科の薬。妄想や幻覚といった精神症状を軽減させる。

 ご存知の方も多いと思うが、「911」は、アメリカやカナダといった欧米の国における緊急事態通報の番号で、火事・救急・犯罪といった事件が発生した場合に電話をかけて、警察や救急、消防に助けを求めるための統一の連絡先。

 ガガはこの楽曲の意味について、Apple Musicに「これは私が飲んでいる抗精神病薬についての曲。自分の脳が命じることを自分ではコントロールできなくなることがあるから、薬を飲んで、そのプロセスが起こってしまうのを制止しなくちゃいけないの」と説明しており、自分で制御できないほど、精神がパニックに陥った場合に、抗精神病薬を摂取して、平静を取り戻している様子をうかがわせている。

画像: 「911」はどんな楽曲?

 “SOSのサイン”を連想させる「911」をタイトルにした同楽曲では、サビ部分で「私の一番の敵は私自身、“911(抗精神病薬)”を飲みなさい」と繰り返したり、幻覚症状に言及する一節や、薬を飲んだ時に症状が和らぐことを示唆する「パラダイスは私の手の中にある」という歌詞も登場する。

 ガガは、「911」MVの公開を告知したインスタグラムへの投稿に、監督を務めた映像作家のターセム・シンや制作スタッフたち、楽曲プロデューサーのブラッドポップ、そして“リトル・モンスター”の愛称で知られるファンたちへのお礼の言葉を含む、こんなメッセージを添えて、仕上がりへの満足感を表現している。

「このショートフィルムは、私にとって、とてもパーソナルなもの。メンタルヘルスに関する自分の体験と、現実と夢がどのように相互連結して私たち自身の内側や周囲にヒーローを創り出すかということも表現しています。

 私のストーリーに共感し、25年間もあたためていたアイディアを共有してくれた監督で映像作家のターセムに感謝します。(衣装制作チームの)ハウス・オブ・ガガにも感謝します。私が強くいられなかったときでも、強くいてくれてありがとう。それから、パンデミックの最中に、誰も病気になることなく、安全にショートフィルムの制作を行なってくれたスタッフのみなさんにもお礼を言います。

 『911』のMVは、私にとって、数年ぶりに自分のクリエイティヴィティを生き生きと発揮できた作品。私を信じて、真実を包み隠さず、さらけ出した楽曲を作ってくれた(プロデューサー)のブラッドポップにも感謝してる。そして、最後に、リトル・モンスターたちにもお礼を言わなくちゃ。私は目覚めた。私にはあなたたちが見えるし、感じることもできる。私が大きな不安を抱えている時でも、私を信じていてくれてありがとう。

 かつて私にとってリアルな日常だった事柄が今、映画になりました。これは、過去の真実の物語で、現在のものではありません。これは、痛みの詩です」

 8月末に開催されたミュージック・ビデオの祭典、MTVビデオ・ミュージック・アワード(MTV VMA)では、9部門で最多ノミネートされ、そのうちの5部門を受賞したほか、VMA史上初となる3つ以上の分野で活躍する功労者に贈られるトリコン・アワード(Tricon Award)を受賞したガガ。新たに公開された「991」のMVも、その名に恥じない、見応えのある良作となった。(フロントロウ編集部) 

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