ディズニーの研究機関が「人間型ロボット」に関するリサーチを発表。“視線”に重きを置いて開発されたロボットは、見た目はちょっと不気味だが、その意図を聞くと納得。(フロントロウ編集部)

ディズニー、「アニマトロ二クス」の“視線”に磨きをかける

 ディズニーのテーマパークにあるアトラクションに欠かせないのが、「アニマトロニクス」と呼ばれる人間やディズニーキャラクターを模したロボット。

 現時点で運用されているアニマトロにクスも充分にリアルで、ロボットらしさを残しているところも一種の愛嬌だが、パークやアトラクションの設計開発やクオリティ管理などを行なうウォルト・ディズニー・イマジニアリングの研究部門は、人間や動物の動きを忠実に再現できる、よりリアルなロボットの開発に日夜取り組んでいる。

画像: 米フロリダ州にあるウォルト・ディズニー・ワールドのエプコットにある『フローズン・エバー・アフター』のアニマトロ二クス。

米フロリダ州にあるウォルト・ディズニー・ワールドのエプコットにある『フローズン・エバー・アフター』のアニマトロ二クス。

 そんななか、同社の研究部門ディズニー・リサーチが、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究者たちと共同で行なっているプロジェクトについて発表。人間のコミュニケーションにおいて、最も重要な役割を果たす“視線”に重点を置いて開発されたロボットをお披露目した。

 ディズニー・リサーチの公式YouTubeチャンネルで公開された動画を通じて初披露されたのが、人間らしいアイコンタクトができるコチラのロボットの姿。

 対話中の人の動きに合わせて、まっすぐに見つめる仕草や、相手の存在を認識した際の眼差し、読み物をするときの目の動きや、視点を定めようとする最中の急速な眼球運動、チラ見や相手の言う事を承認する場合にじっと見つめるような視線など、さまざまなパターンの人間の目の動きを再現している。

 中身が丸見えのため、見慣れるまで、いや、見慣れても不気味さは拭えないが、その視線が与える印象は、確かに人間のものに非常に近い。

 さらに、胸の部分に仕込まれたセンサーが相手の目や顔の動きを感知し、それに合わせて視線や首の角度を変えたり、呼吸を真似て少し上下したりもできるようになっている。


目は口ほどに物を言う

 開発チームは、“視線”にフォーカスしたロボットの研究を行なう理由について『Realistic and Interactive Robot Gaze(現実的で相互作用的なロボットの視線)』と題した論文のなかで、こう説明。

「視線は、人々が意思の疎通を行なう上での重要な社会的信号の1つ。例えば、アイコンタクトに長けている人には親近感を覚えたり、より聡明で、良心的で、誠実で、信頼できると認識されます。それに加えて、視線は社会性や感情を表現する手段でもあります」

 人間の社会的コミュニケーションにおいて、“視線”というものは感情や意思を伝えるうえで非常に重要な役割を果たしている。それを踏まえ、ロボットにも人間の眼差しを模倣させることで、より豊かな感情表現や人間らしさを演出しようと研究を進めているというわけ。


「不気味の谷現象」を乗り越える切り札に?

 人間に似たロボットの開発において、大きな障壁となってきたのが、「不気味の谷現象(Uncanny Valley)」と呼ばれる、美と心と創作に関わる心理現象。

 日本人ロボット工学者の森政弘氏が初めて唱えたこの仮説は、「人間は、ロボットが人間に似始めると好意的な反応を示すものの、あるポイントに達すると、その肯定的な感情が減少し、不快感や嫌悪感を覚える」というもので、2015年には、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の心理学者たちがこの説を認めている。

 人間がより共感できるロボットを作るうえで、不気味さの境界線を見つけることは大きな課題。そんななか、ディズニー・リサーチが発表した“視線”に着目した今回の研究報告は、今後、より人間が親しみを持ち、受け入れやすいロボットを開発するうえで、かなり参考になりそう。

 公開された動画には、顔の内部がむき出しで目だけとてもリアルな未完成のロボットの不気味な姿ばかりに気をとられた人々から、「怖すぎる」、「魂を見透かされそう」、「夢に出て来そう…」といった反応が寄せられているが、将来的にディズニーランドのアトラクションのアニマトロ二クスに、この“視線”にまつわる技術が応用されたら、今よりももっとリアルで感動的な体験ができるかも。もちろん、ディズニー・アトラクション以外の対人ロボットに応用される可能性も期待できる。(フロントロウ編集部)

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