予防も治療も可能な病気でありながら幼児の死因第1位に君臨し続けている肺炎。11月12日の「世界肺炎デー」は、新型コロナ禍で改めて、人々がその恐ろしさを思い知ることとなったこの病気について理解を深める日。(フロントロウ編集部)

「世界肺炎デー」とは?

 毎年11月12日は、世界肺炎デー(World Pneumonia Day)。この日は、予防可能で診断も容易、治癒可能な疾病であるにも関わらず、依然として世界の幼児の死因1位である「肺炎」という病気について知識を深め、少しでも多くの人々の命を救うためにできる事、すべき事は何かを考える日。

画像: 「世界肺炎デー」とは?

 世界肺炎デーは、“忘れ去られた感染症”とも呼ばれる肺炎に警鐘を鳴らすため、保健や子どもの専門機関6団体(ISGlobal、セーブ・ザ・チルドレン、ユニセフ、Every Breath Counts、ユニットエイド、GAVI)が、2009年に世界規模での行動を呼びかけたのが始まり。


忘れ去られた感染症

 肺炎が“忘れ去られた感染症”と呼ばれてきたのは、不治の病や難病にはカテゴライズされないことから、近年、先進国ではそこまで危惧されてこなかったため。

 でも、貧しい国々には、適切な治療や予防接種が受けられない子供たちが大勢いる。2018年の1年間には、肺炎で死亡した5歳未満の子どもの数が80万人以上にのぼった。これは、39秒に1人が命を落とした計算になる(※)。

※ 世界保健機関(WHO)および母子疫学推計グループ(Maternal and Child Epidemiology Estimation Group:MCEE)の中間推定値と2018年の子どもの死亡率推計に関する国連の機関間グループ推定値に基づいた、2019年9月発表のユニセフの分析より


パンデミックが転機に?

 そんな肺炎を、もう“忘れ去られた感染症”とは呼べない、大きな転機が訪れたのが、2019年~2020年。

 悪化すると肺炎を併発しかねない、新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延を受け、人々は肺炎の恐ろしさを思い出し、治療薬や人工呼吸器などを十分に整備することの重要さを思い知らされた。

画像1: パンデミックが転機に?

 米ジョンズ・ホプキンズ大学公衆衛生大学院のティモシー・ロバートソン教授らが医学雑誌ランセットに発表したレポートによると、新型コロナウイルス感染症による死者数は、大人に偏って多いものの、医療サービスの混乱や崩壊により充分な治療が受けられないことで、2020年内には、例年よりも230万人以上も多くの子供たちが命を落とすことが予測されている。そして、その35%を占めるのが肺炎や新生児敗血症だと見込まれている。

 ただでさえ、医療が充実しておらず、ワクチンや予防接種、治療用設備も不足している貧困国では、パンデミックの煽りを受け、肺炎の発症者数が爆発的に増える恐れも。

 ユニセフのヘンリエッタ・フォア事務局長は、肺炎と闘うためには、「世界規模での積極的な取り組みと投資の増加が不可欠。子どもたちのもとへ、費用対効果の高い保護、予防、治療の支援を届けることによってのみ、何100万人もの命を救うことができるのです」と述べている。

画像2: パンデミックが転機に?

 一方で、新型コロナウイルスの蔓延によって得た教訓や開発された技術などを、長きにわたって軽視されてきた肺炎の予防や治療に活かすことができたら、大きな改善につながるはずだとの考えもある。

 2030年までに肺炎で亡くなる子供を1000人中3人以下に減少させることを目標として発足された官民パートナーシップ『Every Breath Counts Coalition(エブリー・ブレス・カウンツ・コアリション)』のレイス・グリーンスレイド調整官は、「パンデミックをコントロールしようとする世界規模での努力は、上手くいけば、そのほかの原因に基く呼吸器感染症を減らし、長期的に見て、子供たちや大人たちの死をも防げるはず」だという見方を示しており、各国の政府は新型コロナウイルス禍で開発された技術を医療ケアシステムの基盤に組み込むべきだと述べている。(フロントロウ編集部)

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