“女性専用”と言われてきた服を着てファッション誌の表紙を飾ったハリー・スタイルズに一部の人たちが難色。ハリーの仕事仲間が彼を擁護した。(フロントロウ編集部)

ハリー・スタイルズ、「女性用の服」を着た表紙に注目

 2020年で結成10周年を迎えたボーイズグループ、ワン・ダイレクションのメンバーのハリー・スタイルズは、同グループが2016年3月に無期限の活動休止に入ってからは、ソロシンガーとして活動。現在までに『Harry Styles』(2017年)、『Fine Line』(2019年)という2枚のアルバムをリリースし、いずれも全米アルバムチャート1位を獲得する大ヒットを記録している。

 ファッションアイコンとしても熱い視線を浴びるハリーは、以前からステージ上でもフリルのついたシャツを着用したり、臆することなくピンクの洋服を取り入れたり、2019年のメットガラ(METガラ)には、首元にボリューミーなリボン、袖口や胸元にレースがあしらわれたブラックのシースルーのブラウスにパールのピアスを着用して出席したりと、近年まで“女性専用”と見なされてきたディティールやカラーリング、小物使いを取り入れた装いを頻繁に着こなして、たびたび話題に。

画像: 2019年、グッチ(Gucci)の衣装を身に着けてMETガラに参加したハリー・スタイルズ。

2019年、グッチ(Gucci)の衣装を身に着けてMETガラに参加したハリー・スタイルズ。

 そんなハリーは、先日、男性としては単独で初めて米Vogue誌の表紙に登場。表紙には、淡いグレーのレースにギャザー加工を施したグッチ(Gucci)のドレスに同じくグッチのブレザーを羽織ったショットが採用されたほか、誌面では、チェック柄のスカートや、バレリーナのチュチュを彷彿とさせるスカート、胸元が大きく開いたスタイリングなどを着こなすハリーの姿が掲載された。


批判の声も 「男らしい男性を取り戻せ」

 Vogueとのインタビューでは、「服というのは、楽しんだり、実験したり、遊んでみたりするためにあるんだよ」としたうえで、「『男性のための服があって、女性のための服がある』っていう障壁さえ取り除けば、言うまでもなく、楽しむことのできる領域が広がることになる」、「僕も時々、ショッピングに行った時に女性の服を見ることがある。『素晴らしいな』って思いながらね」と、既成概念にとらわれなければ、おしゃれはもっと楽しくなるはずだと持論を語ったハリー。

 この言葉には、多くの若者が共感し、身をもって“ファッションにはジェンダーの境界線など必要ない”というメッセージを広めようとしているハリーを称賛する声も上がった。

 しかし、一部には、男性がドレスやスカートを身に着けたり、フェミニンだと言われる着こなしをすることに難色を示す人々もいる。

 保守派のコメンターとして知られるキャンディス・オーウェンズは、ツイッターでハリーのドレス姿を添付した米Vogueのツイートを引用して、こう批判した。

「強い男性なくして生き残った社会などありません。東はこれを知っています。しかし、西では、子供たちにマルクス主義(※)が教えられるのと同時に、男性たちの女性化も教えられている。これは単なる偶然ではないでしょう。これは明らかに(社会への)攻撃です。男らしい男性を取り戻しましょう」

※ドイツの思想家カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスによって展開された資本を社会の共有財産に変えることにより、“労働者が資本を増殖するためだけに生きる”という賃労働の悲惨な性質を廃止し、階級のない協同社会をめざす思想。


ハリーの「仕事仲間」が擁護

 世界的に注目度が高い米Vogueで、一般的にフェミニンだと言われてきた着こなしを披露したハリーを“男らしくない”と批判し、まるで真面目で伝統を重んじる気質と言われるアメリカ東海岸の全体の思想を代表するかのように、開放的で自由な気質だといわれる西海岸の思想教育にまつわる陰謀説を匂わせたオーウェンズ氏。

画像: アメリカの保守派の作家・政治評論家、政治活動家であるキャンディス・オーウェンズ。当初はドナルド・トランプ大統領や共和党に批判的だったものの、その後、支持に回る。トランプ政権を支持し、ブラック・ライヴズ・マターや民主党に批判的な黒人女性として言論界で活躍している。2月には保守政治活動協議会でスピーチを行なった。

アメリカの保守派の作家・政治評論家、政治活動家であるキャンディス・オーウェンズ。当初はドナルド・トランプ大統領や共和党に批判的だったものの、その後、支持に回る。トランプ政権を支持し、ブラック・ライヴズ・マターや民主党に批判的な黒人女性として言論界で活躍している。2月には保守政治活動協議会でスピーチを行なった。

 そもそも彼女が言う“強さ=男らしさ”という考えが、「男はこう振る舞うべき」、「男は強くタフでなくてはいけない」というステレオタイプ的な行動規範を男性たちに押し付け「トキシック・マスキュリニティ(有害な男らしさ)」の明らかな例だと指摘する人々から、多くの反論が寄せられている。

 そのなかには、俳優としても活躍しているハリーが、現在、映画『Don’t Worry Darling(原題/ドント・ウォーリー・ダーリン)』で一緒に仕事をしている俳優のオリヴィア・ワイルドも含まれていた。

画像: オリヴィア・ワイルド。ドラマテレビシリーズ『The O.C.』や『Dr.HOUSE』への出演で注目を集め、2010年公開の映画『トロン: レガシー』でブレイク。以降、俳優としても話題作の数々に出演しているが、2019年公開の『ブックスマート卒業前夜のパーティーデビュー』で映画初監督。クリエイターとしても注目されている。

オリヴィア・ワイルド。ドラマテレビシリーズ『The O.C.』や『Dr.HOUSE』への出演で注目を集め、2010年公開の映画『トロン: レガシー』でブレイク。以降、俳優としても話題作の数々に出演しているが、2019年公開の『ブックスマート卒業前夜のパーティーデビュー』で映画初監督。クリエイターとしても注目されている。

 2019年に大成功させた監督デビュー作『ブックスマート卒業前夜のパーティーデビュー』に続き、『Don’t Worry Darling』でメガホンを取るオリヴィアは、ツイッターでオーウェンズ氏宛てて手短かつ強烈なひと言をつぶやいて、ハリーを擁護した。

「あなたって、哀れな人ね」

 オリヴィアは、ただ藪から棒にオーウェンズ氏に冷たい言葉を浴びせたわけではない。じつは、オリヴィアは、米Vogueのハリーのカバーストーリーにも登場しており、ファッション面でもかなり力を入れているという『Don’t Worry Darling』にハリーの出演が決定した際には、衣装担当と一緒に「嬉しくて小躍りしたの。だって、彼のファッションやスタイルに関する審美眼は本物だから」とコメント。さらに、「彼はトキシック・マスキュリニティとは無縁の男性としての自信を持っている人。彼の世代、すなわち、この世界の未来を象徴するような存在」とも語っていた。

 ハリーの擁護したセレブはオリヴィアだけではない。活動家としての顔も持つドラマ『グッド・プレイス』のジャミラ・ジャミルは、「ハリー・スタイルズはすごく男らしいよ。だって、“男らしい”って自分がありたいと思う自分でいることだから。“男らしい”っていうのは、何百年も前に決められた自信が無くて、有害で、女性嫌悪で、同性愛嫌悪のクソ野郎たちのことなんかじゃない」とツイッターでコメント。

 ドラマ『Scrubs〜恋のお騒がせ病棟』などで知られる俳優のザック・ブラフも「僕たち男性は、生涯ずっと、男らしくあれと言われてきた。人生は短い。何だって好きなものになればいい」と男性の立場からコメントした。

 オーウェンズ氏は、オリヴィアらの言葉には反応していないが、次々に寄せられる反論に「トキシック・マスキュリニティなんて言葉は有害な女性たちが創り出したもの」、「本当のフェミニストは偽のフェミニズムには加担しない」などと応戦。「#BringBackManlyMen」というハッシュタグまで立てて賛同者を募り、批判を繰り広げている。(フロントロウ編集部)

※ハッシュタグの記載に誤りがあったため、修正しました。

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