コストコのホットドッグが安すぎるワケ
会員になれば食品や家電、衣類などあらゆる商品がお手頃価格で手に入ることから、日本でも大人気の会員制ウェアハウス・クラブのコストコ(Costco)。新型コロナウイルスのパンデミックの影響で買い置きやまとめ買いをする人が増え、各国で同店の需要がより一層高まっており、とくにピザやソフトクリームといった安くて美味しいメニューが売りのフードコートは、つねに大にぎわいとなっている。
そんなコストコのフードコートで不動の人気を誇る商品といえば、やはりホットドッグ。食べ応え十分なビッグサイズのホットドッグが180円という超低価格で楽しめるだけでなく、なんと無限でおかわりできるソフトドリンクまでついてくる太っ腹ぶり。本場アメリカのコストコでも同じ条件で1.50ドルで売られているが、コストコが誕生した1980年代から一度も値上げされたことがないというから、さらに驚く。
あそこまで低価格だとほとんど利益がないように思えるが、なぜコストコのホットドッグは激安なのか? そこにはコストコの創業者であるジム・シネガル氏の強い意思と、“穏やかじゃない裏事情”があった。
コストコの現在のCEO、クレイグ・ジェリネック氏が過去に米425 Businessに明かした話によると、シネガル氏はホットドッグを低価格で販売することに並々ならぬ熱意を持っていたそうで、まだシネガル氏がCEOだった頃に一度、ホットドッグの値上げを提案したところ、「あのホットドッグを値上げしたら、私はお前を殺す。なんとかしろ!」と半ば脅しのようなお叱りを受けてしまったという。
「殺す」とは穏やかではないが、シネガル氏にとってコストコのホットドッグはとても神聖なものであると同時に、「1.50ドルのホットドッグ」がコストコのの生命線だと考えていたようで、2009年に米The Seattle Timesのインタビューで「コストコのホットドッグの値上げは、あなたにとって何を意味しますか?」と聞かれた同氏は、「それは私が死んだということ。コストコといえばあの(1.5ドルの)ホットドッグだ。それだけは変えちゃいけない」と答えている。
ジェリネック氏はそんなシネガル氏の意志を受け継ぎ、アメリカ国内にコストコのプライベートブランド「カークランドシグネチャー」のホットドッグ工場を建設し、生産コストを削減することで、1.50ドルという低価格での販売を継続させることに成功。それでも利益と呼べる利益はほとんどないようで、コストコの従業員が米Popsugarに明かした話によると、ホットドッグのコンボ、1セットにつき儲けはたったの0.08ドルだとか。(フロントロウ編集部)