ラッパーのドレイクが、音楽界最高峰のアワードと言われてきたグラミー賞の権威は“もはや失われてしまったのかもしれない”と示唆。グラミー賞を「まるで頑固な親戚」と例える、その真意は?(フロントロウ編集部)

波紋が広がるグラミー賞

 1959年に初の授賞式が開催されて以来、60年以上にわたって毎年2月に発表されてきたグラミー賞。音楽界最高峰の栄誉と言われるグラミー賞は、各部門にノミネートを果たすだけでもアーティストのその後のキャリアに大きな影響を与えることで知られ、毎年11月下旬にノミネートが発表されると、必ずと言っていいほど、世間から「あのアーティストが無視された」、「あの曲のほうが売れたはずなのに」といった不満の声が上がる。

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 第63回を迎える2021年のグラミー賞も例外ではなく、ノミネートから外れてしまったさまざまなアーティストのファンたちが落胆。とくに、シングル曲「Blinding Lights」が全米1位を獲得しただけでなく、リリースから40週連続で10位圏内にランクインし続けるというロングヒットを記録したシンガーのザ・ウィークエンドが、“ノミネート無し”というまさかの結果に終わってしまったことには激震が走った。

 “完全無視”を食らってしまったザ・ウィークエンド本人も「グラミー賞は腐ったままだ。あなた方には私と私のファン、そしてこの業界に、“透明性”をはっきりさせる義務がある」と不満を吐露。さらに、じつは、グラミー賞のステージでパフォーマンスを行なう話があり、何週間も前から主催者であるザ・レコーディング・アカデミーと協力して準備を始めていたことを暴露したうえで、「俺の見解では“ノミネートゼロ=招待されてない”ってこと」と皮肉っぽくコメントした。

画像2: 波紋が広がるグラミー賞

ドレイクがグラミー賞の「価値」に持論を展開

 ザ・ウィークエンドの落選に関しては、大御所シンガーのエルトン・ジョンや、ジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデをクライアントに持つ音楽マネージャーのスクーター・ブラウン、シンガーのチャーリー・プース、ティナーシェ、ラッパーのキッド・カディ、エイコン、そして、ザ・ウィークエンドがかつて交際していたモデルのベラ・ハディッドも彼を擁護するリアクションを見せているが、ここへ来て、ザ・ウィークエンドにとっては同郷の兄貴分のような存在であるラッパーのドレイクが、今回の騒動に言及。

 グラミー賞は、これまで崇められてきたような、絶対的な権威を持つアワードではなくなってしまったのではないかと持論を展開した。

画像: ドレイクがグラミー賞の「価値」に持論を展開

 インスタグラムストーリーに投稿したメッセージの中で、ドレイクは、「俺たちはもう、こういうアワードと(現実に)インパクトをもたらしている音楽との間にギャップがあることに、毎年いちいちショックを受けるのは、やめるべきなんじゃないか。かつて最上級の表彰の仕方だとされてきた方法は、現代のアーティストたちや今後現れるアーティストたちにとっては、もはや重要では無いものになりつつあるっていう事を認めてさ」とコメント。

 そのうえで、グラミー賞は「何とかして改善して欲しいと願ってるけど、どうしても自分のやり方を変えることができない親戚みたいなもんだよ」と、グラミー賞を“保守的で頑固な親戚”に例えた。

 2021年のグラミー賞にザ・ウィークエンドがノミネートされることは確実だと予想していたというドレイクは、「年間最優秀アルバム賞か最優秀楽曲賞は確実だと思ってた。でも、ほかにも予想通りにはいかないことが数えきれないほどあるように、この件に関してもそうはならなかったな」と弟分の落選を残念がった。

画像: 2014年に一緒にステージに立った、そろってカナダ・トロントが故郷のドレイクとザ・ウィークエンド。

2014年に一緒にステージに立った、そろってカナダ・トロントが故郷のドレイクとザ・ウィークエンド。


過去にもグラミー賞に疑問を呈していた

 最後は、「これは、誰かが何か新しい事を始めるチャンスなんじゃないか。時間をかけてみんなで築き上げて、次の世代に警鐘できるような何かをさ」と、音楽界において、グラミー賞に代わる新しい功績の称え方が生み出されても良いのではないかと締めくくったドレイク。

 過去に、4度グラミー賞受賞経験があり、第63回のグラミー賞では、最優秀ミュージックビデオ部門と最優秀ラップ/歌唱パフォーマンス部門の2部門にノミネートを果たした彼が、グラミー賞を含むエンタメ界のアワードのあり方に疑問を呈するのは、これが初めてではない。

 2019年のグラミー賞で「ゴッズ・プラン」が最優秀ラップ楽曲賞に輝いた際の受賞スピーチでは、受賞やノミネートを逃したアーティストたちに向けて、「もしも、君の歌を一言一句歌ってくれる人たちがいるなら、君はもう、地元のヒーローだ。もしも、普通の仕事をしている人たちが、一生懸命稼いだ金でチケットを買い、雨や雪の中でも君たちのライブを見に来てくれるなら、君たちにはこんな物(トロフィー)は必要ない。約束する。君たちはもう、それだけで勝者だ」などと熱弁。

 アワードを軽視した発言をしたためか、主催者側の判断で、放送上はスピーチの途中でCM休憩に入ってしまうという出来事があった。

画像: 過去にもグラミー賞に疑問を呈していた

 第63回のノミネート発表を機に、グラミー賞への不信感を露わにしたのは、“完全スルー”をされてしまったザ・ウィークエンドだけではなく、ラッパーのニッキー・ミナージュは過去に「7曲が同時にビルボードのチャートにランクインして、過去10年で女性ラッパーとして最高の初週成績を残していたのに、グラミーが私に最優秀新人賞をくれなかった時のことは忘れたことがない」と恨み節を口に。さらに、シンガーのジャスティン・ビーバーは、R&Bを意識して作ったアルバム『チェンジズ(Changes)』や同作の収録曲がR&B関連の部門ではなく、ポップのカテゴリの賞にノミネートを果たしたことは「奇妙だ」とコメントを出した。

 ノミネートを果たしたアーティストたちの中には、苦労して辿り着いたグラミー賞に感極まって涙を流す人もいる。とくに新人や中堅アーティストにとっては、同アワードへのノミネートは、やはり、大きなステップアップに繋がるチャンスで、主要4部門のうち「年間最優秀レコード賞」「年間最優秀アルバム賞」「年間最優秀楽曲賞」にノミネートされ、自己最多となる計6部門でノミネートを果たしたシンガーのデュア・リパや、新人賞にノミネートされたノア・サイラスは、あまりの嬉しさに号泣する模様をSNSで公開し、ファンたちに感謝を伝えていた。(フロントロウ編集部)

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