エリオット・ペイジがトランスジェンダーであることをカミングアウトしたあと、「ある変化」が起こった。(フロントロウ編集部)

エレン・ペイジからエリオットに改名

 映画『JUNO/ジュノ』や『インセプション』、ドラマ『アンブレラ・アカデミー』などにエレン・ペイジとして出演していた俳優が、12月初めにトランスジェンダーであることをカミングアウトし、今後はエリオット・ペイジの名で活動していくことを報告した。そしてエリオットはコメントのなかで、トランスジェンダーの人々に対する暴力にも言及した。

画像: エレン・ペイジからエリオットに改名

 「社会には、トランスジェンダーの人々に対する陰湿で残酷で、恐ろしい結果を招くような差別が蔓延しています。2020年だけでも、少なくとも40人ものトランスジェンダーの人々が殺害されました。そのほとんどが黒人かラテン系のトランス女性です。

 トランスジェンダーの人々のヘルスケアを犯罪化し(法律によって禁じ)、存在する権利を否定しようとする政治指導者たちや、トランスコミュニティに対して敵意を剥きだしにし続けているインフルエンサーのみなさんに言いたい。あなたたちには彼女たちの死に対して責任があると。あなたたちが解き放つ卑劣な猛威や屈辱的な怒りは、自殺を試みたことがあるという大人の割合が40%を超えるトランスコミュニティの肩に降りかかっています」

トランスフォビアは報道されない

 トランスジェンダーの人々を嫌悪するトランスフォビアは、深刻な社会問題の1つとなっている。ドラマ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』への出演で有名なラバーン・コックスは、11月の終わりに友人と一緒に外を歩いていたところ、見知らぬ男性に絡まれ、友人が暴力を振るわれたことを明かしている。

画像1: トランスフォビアは報道されない

 「あの男はトラブルを求めてた…。そして私はトランスジェンダーだった。そういうことだと思う。でもこれは私にとってショッキングな出来事じゃない。私の人生はずっとこうだったから。私はずっとこういうことに対処していかなくてはいけなかった。でもどんな時もショッキングなんだろうね」

 2019年にはThe American Medical Associationが、社会の状況のことを、「トランスジェンダーコミュニティに対する暴力の流行」と呼び、危機感を募らせた。

 しかしながら、テレビのニュース番組はトランスフォビアについて報じてこなかった。非営利団体Media Mattersが2019年に行なった調査によると、午後5時から夜の12時までに放送されたテレビのニュース番組で、その年に起きたトランスジェンダーの人々に対する記録的な暴力について報じた時間はたったの33分。そしてその約半分である15分は、CNNが当時の大統領選候補者に対して行なったLGBTQ+コミュニティの権利やポリシーに関するインタビューでのことだった。

 インターネットで話題になっていれば問題ないと考える人も多いかもしれないけれど、自分の好きな情報ばかりを得てしまうインターネットに対して、国中にいる数千万人の人が同じものを見るテレビ番組が視聴者に対して持つ影響力や拡散力は依然として大きい。

 しかしエリオットがカミングアウトをしたことで、良い変化が発生している。

画像2: トランスフォビアは報道されない

 有名俳優であるエリオットがトランスジェンダーであるとカミングアウトしたことは、テレビでも報道されるぐらい大きな話題となった。そして彼がトランスジェンダーの人々に対する暴力にも言及したことで、NBCやABC、CBSといったテレビ局のニュース番組がそのことについて取り上げた。また、ラバーンの件もあわせて報道した番組もある。

 同じ立場の人々を勇気づける目的や、存在をアピールすることの重要性からカミングアウトする著名人は多い。しかしエリオットの行動によって、メディアという大きなプラットフォームが動かされ、さらに広く影響を与えるに至った。もちろんカミングアウトするかどうかは当事者の意思に任せるべきだけれど、エリオットの行動から、声をあげることが持つパワーを学ぶことができる。(フロントロウ編集部) 

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