テイラー・スウィフトが恋人とパンデミック禍の「定番の過ごし方」をした結果、生まれたものがすごい。(フロントロウ編集部)

テイラー・スウィフト、恋人とのおうちデートから「傑作」を生み出す

 世界中で猛威を振るい続ける新型コロナウイルスの影響で外出自粛ムードが続くなか、カップルの定番となったのが自宅で映画やドラマを観るおうちデート。

 シンガーのテイラー・スウィフトと4年来の恋人で俳優のジョー・アルウィンも例外ではなく、一緒にステイホーム生活を送りながら、夜な夜な映画を観てゆっくりと過ごしていたそう。

 カップルで映画を観たとして、普通ならば、感想を語り合ったり、作品の監督や出演者に関して知識を深めたりといった感じで話が膨らむことはある。でも、テイラーとジョーの場合は少し違った。

画像: ※イメージ画像

※イメージ画像

 米Entertainment Weeklyのインタビューに応じたテイラーは、7月末にサプライズリリースし、2020年内に最も高いセールスを記録したアルバムとなった8thアルバムの『フォークロア(Folklore)』が、もともとは、ジョーとの“おうち映画デート”がきっかけで構想を膨らませたものだったと明かした。

 「(コロナ禍で)アルバムを作ることになるとは思っていなかったの。自己隔離生活の最初の頃、たくさん映画を観るようになった。毎晩違う映画を観てたな」と振り返ったテイラー。

 続けて、「お恥ずかしい話なんだけど、じつは私、『パンズ・ラビリンス』を観たことがなかったの。それから『L.A.コンフィデンシャル』も観た。『裏窓』や『ジェーン・エア』も観たっけ」と、ギレルモ・デル・トロ監督のファンタジー映画『パンズ・ラビリンス』(2006年)や犯罪小説家ジェイムズ・エルロイの作品を原作とする映画『L.A.コンフィデンシャル』(1997年)、サスペンス映画『裏窓』(1954年公開)、フェミニズム要素も盛り込んだロマンス映画『ジェーン・エア』(過去に5作の実写映画が公開されているが最新版は2011年。テイラーがどのバージョンを観たかは不明)といった名作を鑑賞したことを回想した。

画像: 映画『パンズ・ラビリンス』のワンシーン。©️WARNER BROS. / Album/Newscom

映画『パンズ・ラビリンス』のワンシーン。©️WARNER BROS. / Album/Newscom

 おそらくジョーのおすすめでこれらの作品を観たテイラーは、そこから刺激を受けて、楽曲制作に乗り出したという。

「他人のアートやストーリーテリングを摂取することで、想像の新たな扉が開けた気がしたの。『なんでこれまで、やったことがなかったんだろう? どうして架空のキャラクターや面白い物語を創り出さなかったんだろう? どうして、これまで、そういう観点や語り口に挑戦してみようとしてこなかったんだろう?』って」。


あの曲は映画『マリッジ・ストーリー』にヒントを得たもの

 これまで制作したアルバムとは違い、かなりDIY(専門家や業者の力を借りずに、自身の力で何かを作ること)的要素が強かったという『フォークロア』。

 テイラーがこのアルバムを作っていることは、「ウィリアム・バウリー」というペンネームで収録曲「Exile(エグザイル)」と「ベティ(ベティ)」の制作にも参加したジョーと、アルバム制作でコラボしたアーティストたちしか知らず、本当に極秘で制作されたものだった。

画像: あの曲は映画『マリッジ・ストーリー』にヒントを得たもの

 そんな『フォークロア』は、それまで、ほとんどの楽曲を自分自身の実体験に基づいて制作してきたテイラーが、初めて第三者の視点を盛り込んで書いた楽曲が大半を占めることでも知られる。

 テイラーが、自分以外の誰かの物語を描くうえで、インスピレーションの源となったのが、ジョーと観た映画の数々だった。

 結婚した経験はないけれど、なぜか「離婚にまつわる物語や映画に共感してしまう傾向がある」というテイラー。かつては味方だったはずの大切な人に裏切られた痛みや悲しみを歌った「My Tears Ricochet(マイ・ティアーズ・リコシェ)」の歌詞の一部が、スカーレット・ヨハンソン&アダム・ドライバーがダブル主演した、2019年公開の映画『マリッジ・ストーリー』を観た後に書いたものであることもEntertainment Weeklyに明かしている。

画像: 幸せいっぱいな結婚をしたはずの夫婦の関係が破綻へと向かう様子を生々しく描いた『マリッジ・ストーリー』は、第92回アカデミー賞で6部門にノミネートされた。©️SplashNews.com

幸せいっぱいな結婚をしたはずの夫婦の関係が破綻へと向かう様子を生々しく描いた『マリッジ・ストーリー』は、第92回アカデミー賞で6部門にノミネートされた。©️SplashNews.com

 「My Tears Ricochet」と女性が胸の内に秘める怒りについて歌った「Mad Woman(マッド・ウーマン)」の2曲が、原盤権売却騒動で揉めに揉めた音楽マネージャーのスクーター・ブラウンと前所属レーベルのスコット・ボーチェッタCEOとの確執について歌ったものであることを認めたうえで、テイラーは、こんな風にも語っている。

 「(離婚に関するストーリーが)なぜ、自分にこんなにも痛みを感じさせるのか、ずっとわからなかった。でも、突然、自分はそれを経験したことがあるように感じたの。それって、15年以上にわたる関係が、ぐちゃぐちゃで動揺してしまうような終わり方をしたからだと思う。だから、その関係の終わりと人々の結婚の終わりを比べてみて、心に呼び起こされたイメージを『My Tears Ricochet』の作詞に活かした。世界で誰よりも信頼を寄せていた人が、突如として、自分を最も深く傷つける人物になってしまうということをね。あの曲のために書いたいくつかの最初の歌詞は、『マリッジ・ストーリー』を観て、結婚というものがうまくいかなくなり、壊滅的な方法で終わりを迎えるということについて聞いた後に書いたものなの」。

 恋人と映画を観て、ただ「面白かったね」などと感想を語って終わるだけでなく、自分の作品につなげたテイラーのクリエイター魂はさすが。今までよりも、ぐっと成熟した印象を纏う『フォークロア』は、多くのファンたちにテイラーの“最高傑作”だと言わしめている。

 ある意味、テイラーが楽曲制作における新たな可能性を発見をするのを後押ししたジョーの内助の功にも拍手を送りたい。(フロントロウ編集部)

This article is a sponsored article by
''.