社会を支える移民労働者
新型コロナウイルスが世界中を襲った2020年。多くの場合、賃金が高くないスーパーの店員やデリバリー配達員、食品に関わる様々な過程の仕事、運送業などの人々が、社会にとって欠かせない人々であることを認識した人は多い。
未曽有のパンデミックはほとんどすべての労働者に、健康や収入などの面でマイナスな影響を与えたけれど、移民への影響は多くの場合さらに深刻となっている。
社会を支える職業に就いている移民は多い。OECD諸国の医療現場で働く人では、医師の4人に1人、看護師の6人に1人が移民となっている。また、多くのOECD諸国では、交通、清掃、食料生産、ITサービスといった分野でも、3人に1人以上が移民。
移民の生活環境は感染リスクが高い
しかし、その国の出身者と同じサポートを政府から得られない場合も多く、危険な仕事であっても続けざるをえなかったり、辞めなくてはいけなくなった場合は、どれだけリスクがあろうとも新しい仕事に就こうとしたりする人は多い。また、母国に帰国しようにも、国境が開いていなければ帰れない。
OECD(経済協力開発機構)は、移民にはエッセンシャルワーカーが多いことなどが原因で、新型ウイルスへの感染リスクはその国の出身者の2倍に達しているとしている。
労働者階級出身の若手女性政治家として支持されるAOCことアレクサンドリア・オカシオ=コルテス米議員は、自身が代表を務める移民が多い地域で感染者が多い事実に触れたうえで、新型コロナウイルスの影響が移民に与える深刻な影響について、社会の在り方を指摘する。
「(この地域は)医療従事者、エッセンシャルワーカー、移民労働者が非常に高いレベルで集中しています。私たちの地域の人々は家の掃除のために何時間も電車に乗り、テイクアウトをデリバリーしたりしていますが、保険もなければ、援助からも取り残されています。これはミステリーなどではなく、不平等ということなのです」
日本でも事件は多発している
移民の権利保護については、1990年に国連総会で採択された「すべての移住労働者とその家族の権利の保護に関する国際条約」がある。
しかし、日本はいまだにこの条約に加入していない。
外国人技能実習生制度で日本へ来た外国人に対する人権侵害は深刻で、給与が正当に支払われないどころかマイナスで記されていたり、パスポートを奪って返さなかったりといった事例が確認されている。法務省によると2017年までの8年間に自殺や溺死、凍死や事故死、殺人などで174人が死亡したとされているけれど、アメリカの国務省は、日本はデータの公表が不十分だとしている。
そして2020年11月には、東京都内の風俗店の経営者2人が、新型コロナウイルスの影響で職を失ったり、母国に帰れなくなったりした外国人女性たち約30名を雇ったとして、出入国管理法違反(不法就労助長)容疑で逮捕された。
コロナ禍となる前から待遇や賃金で問題が指摘されていた移民労働者。早急な改善対策が求められている。(フロントロウ編集部)