2020年代を変化の10年にするために、知っておきたいフェミニズムワードをピックアップ!(フロントロウ編集部)

「言葉」を知れば世界が変わる

 新型コロナウイルスが襲ったなかでも、初の女性アメリカ副大統領が就任することが決定し、黒人の人権運動Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)も起きた2020年。ここ数年で、社会が良い方向へ変わっていくために、多くの人の声や行動が渦を巻いている。

 一方で社会が変わっていくためには、ある程度の期間が必要。2030年に向けて、この20年代を闘うために知っておきたい言葉をピックアップ。

インターナライズド・セクシズム(Internalized Sexism/自分(女性)の中の性差別)

 メイクをしていない女性や年上の女性の悪口を言ったり、女性は育児に専念すべきと言ったりする“女性”も少なくないのが現実。でもなんで、女性ばかりがメイクを“しなければならない”んだろう?女性ばかりが年齢で判断されるんだろう?その価値観は“誰”が作り出したものなんだろう?

 男性が決定権を持つことのほうが断然多い社会では、男性の価値観によって作られるものが多く、そのなかで作られた新聞やドラマ、広告などが街に溢れる時、その影響を受けるのは女性も同じ。女性自身の中にも女性差別はあること、そしてそれはなぜなのかと考えることは重要。

ベネヴォレント・セクシズム(Benevolent Sexism/親切な性差別)

 Sexism(セクシズム/性差別)のなかにも様々なものがあり、単に相手をバカにしたり攻撃したりするセクシズムと違って、一見すると褒め言葉のような性差別「ベネヴォレント・セクシズム」もある。例えば、女性のほうが優しいから子育てに向いている、女性のほうが弱いからレディーファーストするなど。

ミソジニー(Misogyny)/ミサンドリー(Misandry)

 ミソジニーは女性嫌悪を意味する。女性の“身体”は好きな女好きでも女性蔑視をする男性はおり、それもミソジニーに当たる。ミサンドリーは男性嫌悪を意味する。

 それぞれ差別であることは間違いないものの、嫌悪感の原因に対する理解は必要とされている。例えば、恋人ができないことが女性嫌悪につながっているインセル(※下記参照)と、レイプのような性的被害を受けた女性がトラウマから男性嫌悪に陥ってしまうことを同等のものとして対応するべきではないという見方がある。

インセル(Incel/InvoluntaryCelibate/不本意の禁欲主義者)

 望んでいるのに女性と交際できず、その原因は女性側にあると責任を押しつける男性。過去に起こった銃乱射殺人事件のいくつかは、インセルによる犯罪であることは明らかになっている。

ウォーク・ミソジニスト(Woke Misogynist/意識が高いミソジニスト)

 最近ではフェミニズムも有名になってきて、男性でもフェミニストである人も増えてきた。一方で、こんな人に会ったことはない? 例えば、自分はフェミニストだと言っているのに、行動では女性に対する上から目線や嫌がらせをする男性。そういった、フェミニストであることをアピールしているけれど中身がともなっていない人をウォーク・ミソジニストと呼ぶ。

画像: ウォーク・ミソジニスト(Woke Misogynist/意識が高いミソジニスト)

ニューロセクシズム(Neurosexism/神経性差別)

 女性と男性は、脳みそに違いがあるから女性は、男性より“科学的”に劣っている。だから女性は家事に向いていて、男性はビジネスに向いている…。そういった言葉で、性差別を肯定する人に遭遇したことがある人もいるのでは?

 そのように、根拠の薄い“科学”を利用して、あたかも性差別は仕方のないものだと肯定することは、ニューロセクシズムと呼ばれて問題となっている。これが起こる原因には、データを作った研究者自身に性差別的な意識があったり、研究者のデータを、専門家でないメディアが行き過ぎた解釈のまま報道したりすることがある。

フェミサイド

 相手を狙った理由が、女性であるということが理由になる殺人事件のこと。ほとんどの場合男性によって引き起こされるが、女性の家族が何らかの理由で起こすこともあるし、女性が加害者になる可能性もゼロではない。

 この言葉は、欧米では数十年前から使われている言葉だけれど、女性を狙った殺人事件であっても“無差別”殺人と報道されることがある。また、家庭内暴力(DV)などで女性が殺されることはフェミサイドの代表的な例。

 女性が女性であるだけで殺されることは、フェミサイドと名前がつくぐらい世界各国で起こっているということ。その視点からニュースを見てみると、2020年代の現在でさえ、多くの女性が女性であるだけで命を落としていることに気がつける。

インターセクショナリティ(Intersectionality)

 この記事を読んでいるあなたは、女性/男性?アジア系/白人?裕福/貧困?障がいを持っている/持っていない?すべての人は、たった1つの属性にいるわけではない。

 例えば、女性差別がなくても黒人差別はある、黒人差別はなくても女性差別はあるという状況では、黒人女性の受ける差別は解消されることはない。フェミニズムのなかでも、白人女性と黒人女性の直面する差別はカタチが違う。様々な差別は交差している。インターセクショナリティは、その考え方や視点を指すもの。

性的モノ化(Sexual Objectification/セクシャル・オブジェクティフィケーション)

 女性の身体を一方的に性的に描き、性的に消費すること。例えば、肩かけバッグをかけていた女性の胸がエロい、女性のタイツはエロいなどいった、普通に生活している女性に対する性的モノ化はちまたに溢れている。

ダブルスタンダード(Double Standard)

 日本では“ダブスタ”と略されることもあるこの問題は、同じ行動でもある集団がすると問題にならないのに、別の集団がすると問題視されること。

 例えば男性であれば子供が生まれたばかりでも飲み会に出かけられ、かつ文句も言われなかったりする一方で、女性が子供から離れると非難されること。または、女性であれば育児休暇が比較的取りやすいけれど、男性だと取りづらいことなど。男性ばかりが電車などで脚を開くManspreading(マンスプレッディング)も、ダブスタの1種。

マンタラプティング(Manterrupting/男性の割り込み)

 女性の話を遮って、男性が話し始めること。男性が、女性は知識がないという偏見を持って女性に対して上から目線で話し始めるマンスプレイニング(Mansplaining)やマンスプレッディングと一緒にトピックになることも多い。

 2020年のアメリカ副大統領討論会で、候補者で女性のカマラ・ハリス氏が話している時に、マイク・ペンス氏が何度も彼女の話を遮った時にも話題になった。

画像: マンタラプティング(Manterrupting/男性の割り込み)

家父長制(Patriarchy/ペイトリアーキー)

 1つの家族のなかで、1番上とされるのが父親であること。そこから派生し、社会のなかで男性がリーダーであるとする考え。何か大きな買い物に夫と行って、例え妻が支払うとしても夫にだけ名刺を渡されたり、夫のほうばかり見て話を進められたりといったことは、2021年の現在も非常に多く発生している。

ジェンダーロール(Gender Role)

 性別によって社会が求める“役割”のこと。女性に対するおとなしくするべき、子育てをするべきといった要求、男性に対するお金を稼げといった要求のこと。家庭から、学校から、職場からと、さまざまなシーンでこのジェンダーロールをなくそうと求める声が年々強まっている。

リプロダクティブ・ライツ(Reproductive Rights/生殖に関する権利)

 人間は1人1人が、安全で満足できる性生活を送る権利があり、そして子供を産むか産まないか、いつ産むか、何人産むかを自分で決定できる権利がある。そういった、性と生殖に関する権利のことを、リプロダクティブ・ライツと言う。

トーンポリシング(Tone Policing)

 長年差別を受けてきた人々が声をあげた時、「言いたいことは分かるけど、その言葉づかい/態度は良くないよ」と言って論点をずらす人を見たことがある人も多いのでは? その論点ずらしには単語があって、トーンポリシングと呼ぶ。これは、言葉の“トーン”を取り締まる“ポリス(警察)”するという言葉を掛け合わせたもの。

(フロントロウ編集部)

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