キャリー・マリガン主演の『Promising Young Woman(プロミシング・ヤング・ウーマン)』で、性犯罪者を演じた俳優がみんな“好感度高め”な理由に、納得。(フロントロウ編集部)

大注目のブラックコメディスリラー

 映画『プライドと偏見』や『17歳の肖像』などで知られるキャリー・マリガンが主演する最新作『Promising Young Woman(プロミシング・ヤング・ウーマン/原題)』が注目を集めている。そのあらすじからは暗い雰囲気が漂うものだけれど、本作は復讐劇、ラブコメ、スリラーの要素が絡まり合う面白い作品だと、米Varietyは説明している。

 キャリーが演じるのは、昔は医学部に通っていた優秀な女性キャシー。ある過去の出来事から医学部を中退し、今はコーヒーショップで働いている。しかし夜になるとクラブへ通い、酔った彼女を上手いこと家へ連れ込む男たちへリベンジを果たす。そんな日々のなか彼女の前に昔の同級生ライアンが現れ、キャシーの心にも変化が生まれ始める…。

 『プロミシング・ヤング・ウーマン』でメガホンを取ったのは、ドラマ『キリング・イヴ/Killing Eve』の脚本家としてエミー賞にノミネートされた経験を持ち、そしてNetflix『ザ・クラウン』ではカミラ夫人を演じる、俳優/脚本家/監督のエメラルド・フェネル。

エメラルド・フェネル、悪者は誰?

 女性が受ける性被害、そして復讐がテーマの本作だけれど、酔った(フリをしている)キャシーを家に連れ込む男たちの役には、アダム・ブロディやクリストファー・ミンツ=プラッセ、マックス・グリーンフィールドやサム・リチャードソンなど、好感度が高かったり、無害そうだったりする俳優が起用されている。そのキャスティングには意図があり、フェネル監督が米EWのインタビューでこう明かした。

画像: エメラルド・フェネル監督(左)、キャリー・マリガン(後ろ)、ライアン役のボー・バーナム(前)。

エメラルド・フェネル監督(左)、キャリー・マリガン(後ろ)、ライアン役のボー・バーナム(前)。

 「複雑なテーマについての映画を作っている時、尊敬されないような、いつもいやらしいと思われているような人が出てくると、(作品について)話すのが非常に簡単になる。でもこのテーマでトリッキーなのは、その人々はみんなが愛し尊敬するようなタイプだということ。みんなは彼らを愛し、『この人大好き。彼らがそんなひどいことをするなんて本当にひどい。でも大好きなの』とか、『彼らが大好きだから、そんなことは真実なわけがない』とか言うの。ありがちでしょ。それが、私たちが育った文化なんだよ。私の映画のなかでショッキングな瞬間はすべて、この10年でお笑いやテレビ番組のなかで見てきた何か…。映画制作者として、そして視聴者の1人として、この文化のなかでは私たちは全員が加担してきたと認める思いがある。そしてその加担は、みんなが好きな人たち(がひどいことをするの)をより簡単にする。そしてそれは男性だけでなく(女性キャラクターたちも)…。全員、私たちが信じた人だよ。

 私は悪役に興味がない。それを信じてないから。異常な人や危険な人はいるけど、彼らは非常に珍しい。この(役の)ために名前が挙がったすべての俳優たちに、私は毎日の初めにこう伝えてる。『これはあなたの映画、この作品の素晴らしい主役なの。あなたは自分が良い人間だと知っていて、朝起きて、純粋に自分は良い人間だと信じてる。すると誰かがあなたの人生に入り込んで、あなたは(良い人間とは)違うと言う』って。そして、私たちはそれについてどう感じるのかな?」

 人は見かけによらないこと。性被害を受けても、その傷が軽くみられたり、信じてもらえなかったりすること。そしてそれらを引き起こす要因には、テレビなどの影響が非常に大きいこと…。フェネル監督の指摘がイギリスやアメリカに限った話ではないことは、とくに女性であれば深く理解できるはず。

 公開前から大注目となっている『プロミシング・ヤング・ウーマン』は、全米では2020年12月25日に、イギリスでは2021年2月12日に劇場公開予定。(フロントロウ編集部)

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