映画『マトリックス』の中でも有名な、体を後ろに反らせて弾丸を避けるシーン、通称「マトリックス避け」。その撮影で用いられた“バレットタイム”という撮影には、なんと120台ものカメラが使われていた。(フロントロウ編集部)

キアヌ・リーブス主演『マトリックス』

 1999年に公開された『マトリックス』は、キアヌ・リーブス主演の大ヒット映画。同年のアカデミー賞では視覚効果賞、編集賞、音響賞、音響編集賞を受賞した。本作は現在第4作目となる『マトリックス4』の撮影が進められており、2021年12月に劇場公開となる。

 『マトリックス』は公開当時、革新的なVFX映像で映画界に驚きと衝撃を与え、「映像革命」とまで呼ばれた作品。なかでも、キアヌ演じるネオが上半身を限界まで反らせて弾丸を避ける姿をぐるりと囲むように映し出す「マトリックス避け」は特に有名なシーン。

「マトリックス避け」に使われたカメラ、なんと120台

 この撮影法は映画業界では「バレットタイム」と呼ばれており、映像の初期である1870年代に生み出された。これは、被写体のまわりにカメラをたくさん並べて順番に撮影していくことで、「動きはスローモーションなのに、カメラは高速で移動する」という映像を撮影できるもの。

 映画『マトリックス』のなかではいくつかそのようなシーンがあるけれど、全てバレットタイムを利用して撮影されており、撮影を担当したジョン・ゲイターがその様子を明かしている。

 本作のウォシャウスキー監督は、まずデジタルモデルを使って映したい場所をマッピングし、キャストとカメラの位置を戦略的に決めていったという。そして、ネオがエージェント・スミスの銃弾をかわす象徴的なシーンに使われたカメラは、なんと約120台!つまり、それほどたくさんのカメラが、2人を囲むように等間隔で設置されていたということ。

画像1: ©︎ROADSHOW FILM LIMITED

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 当時、1台のカメラで信じられないほどのスピードでアクションを撮影することはまだ可能ではなく、シーンが円形であることから、このシーンはこのように撮影した方がより印象深いものに仕上がった。単純なことのように聞こえるけれど、技術はそれだけではない。各カメラは専用の固定装置に取り付けられ、正しい角度と焦点距離を測るためにモーションコントロールされたレーザーポインティングシステムを使って、セットアップされた。

 滑らかな動きを実現するには120台のカメラでは十分ではないため、各フレームは「補間」と呼ばれる方法で結合され、新しい中間フレームが作成された。そうすることで、動きのギクシャク感がなくなり、キャリー=アン・モス演じるトリニティの脚やネオのマントなど、映像の中で最も動きのある部分がスムーズに流れるようになる。

画像2: ©︎ROADSHOW FILM LIMITED

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 また、カメラは互いの距離を変えて配置されているため、最終的な映像は特定のポイントで加速したり減速したりしているように見える。

 この撮影では、カメラが完全に固定された状態で撮影する必要があったため、グリーンバックのセットで撮影されており、背景は完全にCG。また、俳優は常にワイヤーで固定されていなければならなかった。

 一瞬に見えるあの「マトリックス避け」のシーン。しかし、その一瞬に込められた情熱はとんでもないものだった。(フロントロウ編集部)

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