第二次世界大戦下、ナチス・ドイツ政権により、600万人以上のユダヤ人、20万人のロマ人、25万人の身体及び精神障害者、1万5千の同性愛者が迫害され大量に殺害されたホロコースト。1945年当時、最大の犠牲者を出したアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所がソ連軍によって解放された1月27日は、「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」とされている。人類が忘れてはいけない歴史上の悲劇であるホロコーストをテーマにした映画を7作品ピックアップしてご紹介。(フロントロウ編集部)

『夜と霧』

 『夜と霧』は、ホロコーストの悲惨さを描いた代表的な作品。公開されたのも、1956年と戦後間もない頃のこと。本作は、ナチスがアウシュヴィッツのユダヤ人強制収容所でユダヤ人を虐殺した事実、すなわち「ホロコースト」を告発したドキュメンタリー映画。本編は32分と短いながら、後世に語り継がれるショッキングな内容が収められている。Amazonプライムビデオでレンタル可能。ちなみに「夜と霧」とは、ナチスが政治犯を検挙するためにヒトラーが発した命令の名前。

『シンドラーのリスト』

 スティーヴン・スピルバーグ監督による『シンドラーのリスト』は1994年に公開された。タイトルにもなっているドイツ人実業家のオスカー・シンドラーが、ホロコーストに送られそうになった数多くのユダヤ人を救う実話がベースになっている。戦時、日々エスカレートしていくユダヤ人迫害を目の当たりにしたリーアム・ニーソン演じるシンドラーは、私財を投じて彼らの命を救うと決意する。本作は、アカデミー賞で作品賞など7部門を受賞し、スピルバーグ監督は初の監督賞を獲得した。

『サウルの息子』

 2015年に公開された本作は、第二次世界大戦で最も多くの犠牲者を出したアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所に収容されていたハンガリー人、サウルに起こった1日半の出来事を描いた作品。同胞であるユダヤ人の死体処理係に任命されたサウルは、ガス室から送られてきた人々の中に、自分の息子と思しき少年を発見し、ユダヤ教式の弔いをしようとする。当時ナチスが国を挙げて行なっていた人種差別による絶滅政策(ホロコースト)の凄惨さを目の当たりにする。

『縞模様のパジャマの少年』

 ユダヤ人強制収容所の所長に任命された父を持つ家族の行く末を描いた本作は、ホロコーストの事実を背景にしたフィクション作品。父の仕事の都合で故郷を遠く離れた場所で過ごすことになった少年ブルーノは、ある日有刺鉄線で囲まれた牧場を発見する。彼は柵越しに出会った少年シュムエルと心を通わせ…。本作で収容所所長の家族は、あまりホロコーストの知識がないという設定で描かれているが、実際に当時、アウシュヴィッツ強制収容所の所長家族も、ユダヤ人虐殺の事実を把握していなかったそうで、娘のインゲブリギット・へスも父親が何をしていたのか知らなかったと米The Washington Postに証言している。

『黄色い星の子供たち』

 フランスが舞台の本作は、フランス政府がナチスに協力し、1万3000人のユダヤ人を競技場に収容したという信じがたい事件「ヴェロドローム・ディヴェール大量検挙事件」を、400名の生存者の証言をもとに映画化している作品。フランス政府はこの事件の真相を1995年まで隠し続けてきたというから驚き。ナチス占領下、ユダヤ人であることを示す黄色い星マークのバッヂをつけさせられていた子供目線に描かれている。

『顔のないヒトラーたち』

 2015年に公開された『顔のないヒトラーたち』。実は第二次世界大戦、10年以上にわたってドイツの中ではホロコーストの事実が世間に知られていなかった。ドイツ人の中でナチスドイツに対する認識が大きく変わったのは、1963年から開かれたアウシュヴィッツ裁判以降のこと。主人公の新米検事ヨハンは、かつてアウシュビッツ強制収容所で親衛隊員だった男が、規則に違反して教師になっていることを知ったことをきっかけに、ナチスによって行なわれていた様々な行為を調査し始める。戦場で暴虐の限りを尽くしていた人間が、戦争の後も人生を送っているという事実について考えさせられる。

『否定と肯定』

 『否定と肯定』もまた、ホロコーストを扱った衝撃的な作品。本作は“ホロコースト学者”が、“ホロコースト否定論者”に名誉毀損で訴えられた、1996年の「アーヴィング対ペンギンブックス・リップシュタット事件」をもとにしている。主人公はレイチェル・ワイズ演じるアメリカ人ホロコースト研究家のリップスタット教授。ある日、ホロコーストのガス室を否定するナチス・ドイツ学者のデイヴィッド・アーヴィングより激しい批判を受け、両者は一歩も引かない裁判に挑む。現代の西洋における歴史認識について「なるほど」と思わせてくれる一作。

 ホロコーストを描いた作品は、これ以外にもまだたくさん。繰り返してはいけない「負の遺産」を描いているため、どの作品もショッキングな内容になっているけれど、だからこそ目を背けてはいけない歴史がそこにある。(フロントロウ編集部)

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